シレネ | ナノ




-SIDE ハルキ-



切原赤也を通し、野々宮ゆいを男子テニス部に近付けた。

元々、彼女は女子と男子に人気があり人望も厚い。

ファンクラブの妬み等もない。

何故ならファンクラブ会長は私の友人なのだ。

「ハルキ様、あの子がそんなに良いのですの?」

神野に嫉妬をする一宮明子に私は苦笑を漏らす。

「ア−キ、あの子は、まだ私の玩具なんだよ。ふふ、私の一番はアキだから笑っておくれよ。」

ニッコリと笑いアキの頭を撫でた。

アキは借りてきた子猫のように気持ち良さそうにウットリと目を細める。

アキはある事件を切欠に私に依存している。

花の様に笑顔を私だけに見せるアキに私はクツリと笑った。

アキは私の周囲にいる人間が自分だけであれば良いと思っているからね。

「そろそろアキにも動いて貰いたいんだけど良いかな?」

私の意図を察したアキが

「やっとあの子を潰すのですね!」

キラキラとした眼で私を見た。

う〜ん…潰すのはまだ早いんだけどなぁ…。

「ア−キ、生かさず殺さず…だよ。」

私が釘を刺すとアキは渋々と言った感じで返事をした。

これでファンクラブから制裁が下るだろうね。

ふっは!

きっと神野はファンクラブの意味を履き違えているから滑稽な醜態を見せてくれると願っているよ。




-SIDE 神野-



最近、精市と赤也の様子がおかしい。

ヒロインである私の傍にいないんだよ!

レギュラー専用コートには来ないし、こんなに可愛い私が誘ってもつれない。

一体どうしたの?

お姫様は私なのに!

「マリア、具合でも悪いのか?」

ブンちゃんが心配そうに私の顔を覗き込んだ。

「ん、だ、大丈夫だよ!」

ニッコリと安心させるように笑えばブンちゃんは真っ赤な顔をする。

そう、それが普通の反応なのよ。

「ねぇ、精市と赤也が最近見かけないけど…どうしたのかな?」

さも心配ですって顔をすればブンちゃんは

「赤也も次期部長だから引継ぎとかで準レギュ達のコートで指導してるんだよ。それよりも一緒に今度二人で遊びに行かねぇ?」

ブンちゃんのデートの誘いに私は顔がにやけるのを必死で隠しつつ
「で、でも私…あんまり遊び場とか知らないよ?」

上目遣いで戸惑った表情(かお)をした。

ブンちゃんは真っ赤になりながら

「お、俺が案内してやるって!」

とエスコートしてくれるみたい。

あぁ、やっぱり私はお姫様なんだわ!

それにしても精市は赤也の次期部長としての育成かぁ…そんな事よりも私を優先しないと駄目なのに、ね。

優しい私が精市達の所へ行ってあげれば良い事だよね!

私とブンちゃんがデートの話で盛り上がっていれば雅治達が私を取り合いし始めた。

あはははは!

もっと!

もっと!

もっと!

私を取り合ってね!

誰か一人なんて決められないもん。

あっは、み〜んな私の王子様なんだから♪

だから平等に愛してあげる。




<平等って何なのでしょうね?揺れ動く振り子を揺らすのは、神野マリアさん…貴女ではなく元・語り部少女のようですわ。突き刺すような視線と殺気に気付かない貴女は幸せ者なのかもしれませんわね。嘲笑える悲劇(きげき)を期待してましてよ。 著者:語り部少女>





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