罪シリーズ | ナノ





-SIDE 闇己-


サクラを久高島に行かせるには抵抗があった。

久高島は神の島と呼ばれるに相応しい神域で成り立っている島だ。

それ故に男子禁制であるフボー御嶽と女人禁制のアグル御嶽の他にも幾多の禁域がある。

サクラが持つ力は膨大で、巫覡の素地は俺を遥かに凌ぐ。

木花咲耶姫の生まれ変わりを抜いたとしてもサクラを守護する水神である須勢理姫の力は凄い。

それ故に力が不安定な彼女は、俺や蒿(こう)の補助がなければ危ういのだ。

維ふ谷村でもそうだが、ああいう閉鎖的な所は余所者を嫌う。

そして余所者であれば何をしても良いと考える者達が多い。

三日掛けて行われる秘祭。

この三日間は互いに連絡を取り合うことも出来ない。

祝寝(うけいね)を沖縄県本土でも試みたが何かに疎外されているようで何も視る事が出来なかった。

ただ、警告するように嫌な予感だけを残して…。




-SIDE サクラ-


今日で神事が終る。

しかし何処かオカシイ。

久高島に来た当初から続く違和感がハッキリと形作って行く感覚に嫌な予感がした。

魂清めの儀式と聞いたが、本当にそうなのだろうか?

一日目の手順は、ルジン・ハカンと云う装束を身に着け久高島に作られた世から七つ橋を渡り、他界空間に駆けこむ。

そこでウプティシジ(神)に扮したナンチューに会い、テイルル(神の歌)の歌を唄って終った。

二日目はハシララリアシビ(洗い髪の意)を行い神扮したナンチューに会い、ティルルを歌って終る。

今日は久高殿でウプティシジ(神)と会い清らかなるニライカナイの世界からまれびと(神々、祖霊)を迎え、そして送る役目があるのだ。

「サクラ様、本日で最後になります。宜しくお願いしますね。」

ニッコリと温度のない笑みを浮かべるタムト(巫女)に

「秘祭として私が呼ばれたと聞くが、これは本当に秘祭なのだろうか?」

余りにも不自然な彼女達の行動に疑問を問うと

「まぁ!サクラ様、どうしてそのようなことを?」

白々しく嗤った。

「場は整っているのにウプティシジ(神)ではなく別の力を感じた。」

そう念に近くそれでいて異なる存在を!

「そんなはずはありませんわ。さぁ、ご準備なさって!」

追い立てるように久高殿へ引っ張ろうとするタムト(巫女)の腕を振り払った。

脳内で警告が鳴るのだ。

行くな!

往くな!

逝くな!

いくな!

イクナ!

『久高殿から呼び出すのは神ではない!常世(とこよ)から妣(ハハ)の国へ異形を持ち込んだかっ!』

私の意志とは違い勝手に口が動いた。

「出雲の巫覡風情がよう言うた。が、サクラ様の中にある力さえ貰えればそれで良い。」

『巫覡の面汚しめっ!』

「我等はユタ、人の手に余る力を持つ神の代理人。」

クツクツと嗤うタムト(巫女)達。

『神になったつもりか!?』

激昂する声の主は私でなく誰か…

誰?

「逃がしはせぬよ、出雲の巫覡。それに…もう動けまい?」

グラリと視界が歪み身体が崩れ落ちる。

『サクラっ!』

真名志…




理を歪めること即ち神の威に叛く事である。

悲鳴を上げたのは須勢理姫か…それとも木花咲耶姫だろうか?




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