罪シリーズ | ナノ




同時刻、布椎本邸にて寧子の悲鳴が上がった。

美しい美貌の顔は焼け爛れて見る影も無く、狂ったように呪詛を吐く当主代理に動揺を隠せない。

そんな彼等を一喝したのは、本家の敷居を踏む事が許されない筈の世裡(せり)だった。

「何やってるんだい!シャキッとしなっ!アンタ達なにボサっとしてるんだい!」

後ろにいた蒿(こう)が

「やっこ姉、一体どうして!?」

駆け寄ろうとした所、世裡(せり)によって阻まれた。

「禁忌を犯したからさ。私の血、なのかね…」

寧子の身体から念に近い存在が染み出てくる。

悍ましいの一言に尽きた。

感で沫那美(アワナミ)を持って来たのが幸いだろう。

「蒿、アンタは私の補助をしな。アレを叩くよ!」

場を一瞬で整え気を練り上げる。

沫那美(アワナミ)を抜き集まった気を憑依させた。

「坎艮震巽離坤兌乾!!」

念に近いソレは浄化され寧子の身体はグッタリと横たわる。




そして数日後、サクラと闇己が布椎家本宅へ訪れた。

集められた一族の重鎮達は鎮痛な面持ちで闇己を見る。

上座には闇己、その隣にはサクラが座った。

「あの女を呼べ。」

冷淡に淡々と寧子を連れて来いと命じる闇己に

「寧子は臥せっております。」

やんわりと拒否を示すが

「アレが久高島で何をしたのか俺が知らないとでも?」

怒気の孕んだ言葉に沈黙が齎される。

「布椎当主の命に逆らうのですか?」

有無を言わさぬ雰囲気を醸し出すサクラは

「それとも私が寧子さんにされた仕打ちをお話した方が早いでしょうか?」

嫣然と嘲笑を浮かべ語りだした。



対峙するは水の神(ウプティシジ)ではなく、念に近い存在だった。

身体を這いずるような不快感にサクラは眉を寄せ不快感を露にする。

神剣も無ければ闇己も傍にいない。

記憶が途切れる寸前に誰かを呼んだ気がしたが誰だったか…闇己だろうか?

《憎い!憎い!どうして私ではないの!?アノ子さえ居なければ!》

憎悪と嫉妬と羨望が渦巻いたソレは私を捕らえて放さなかった。

もうダメだと思った時

「サクラっ!!」

闇己の声が聞こえる。

此処は男子禁制の禁域だった筈なのにどうして彼が此処にいるのだろう?

「サクラ、無事か!?」

私の身体を縛っている縄を解いていく。

「どうして此処に?此処は男子禁制なはず…」

暗に神の怒りに触れるのでは?と言えば

「サクラの命より大事なモノはない。」

嬉しいと心が泣く。

ポロポロと零れる涙を闇己が労わるように唇で吸い取ってくれた。

互いに触れ合う口付けは徐々に深さを増す。

闇己の腕に抱かれながら私は生きなければと思い返した。

「サクラ、源刻契約を交わそう。」

以前、闇己から教えて貰った契約に私は勿論のこと闇己の命のリスクも伴う。

「俺が守る。」

迷いを見せた私に闇己の言葉で決意を決めた。

源刻契約を無事に結べた私達はアレを退ける事が出来た。

私達は依頼主から誰が黒幕なのか吐かせ闇己の姉である寧子に辿り付く。

これが今回の事件の全容である。




「これが私の体験した全容です。」

話終えると彼等は寧子のした所業に顔を真っ青に染めた。

神を冒涜するような行為をしたのだから、巫覡として有るまじき行為だと理解しているのだろう。

「分かったならアノ女を此処に呼べ!」

闇己の言葉に控えていた者達が動き出した。

アノ女って闇己にしたら寧子は、もう姉ではないのだろう。

布椎家を冒涜したからか…それとも巫覡にあるまじき神を穢すような真似をしたからか、闇己の怒りはずざましいものがあった。

寧子が闇己の前に連れて来られる。

焼け爛れた顔は以前のような美貌の面影はない。

「闇ちゃん、どうして彼女がそこにいるの!?闇ちゃんの隣は私のモノなのに!!」

狂ったように私に掴み掛かろうとする寧子に私を庇うように闇己が間に入った。

「寧子、俺はお前が何をしようと大抵は容認してきたが今度ばかりは許さない。サクラを傷付け、布椎家を神を冒涜した罪は重い。」

冷淡に切り捨てる闇己に

「どうして?私は闇ちゃんの為に!!アノ女が闇ちゃんを誑かしたのね?そうなのね?ねぇ、闇ちゃん、私は闇ちゃんを愛してるの!私ほど闇ちゃんに相応しい女はいないわ。」

切々と言い募る寧子に闇己は

「…気持ち悪い。俺に触るな!俺はアンタの事を尊敬出来る姉だと思ってた。サクラを傷付ける奴は身内だろうと赦さない!」

強い拒絶を示した。

何故?

と喚く彼女に

「寧子さん、私と闇己は源刻契約を交わしたの。」

静かに告げれば

「嘘!うそ!ウソよ!私から闇ちゃんを取らないでっーーー」

狂ったように叫びだした。

布椎の重鎮達は私の発言に寧子を取り押さえる。

源刻契約すなわち神々と契約を交わした事。

巫覡にすれば神々と契約した巫覡は喉から手が出る程、欲しい存在だ。

まだ納得いかない彼女に私は闇己に目配せし

「証拠、を見せた方が納得するわよね?」

但し、寧子の身の安全は保障されないが。

闇己はその事も承知した上で源刻契約を行った。

私の体内(からだ)から産み出された神剣を闇己が手に取る。

断罪の剣は寧子の首と動を斬り放した。


こうして久高島事件は幕を閉じた。





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