召喚獣と僕 | ナノ


▼ 26 好き ※

「ラーム! ……ラームっ! よかった、戻ってきてくれたんだね……!」

ベッドそばに現れた人型の召喚獣に抱きつくと、彼は恐る恐る僕の体をすっぽり腕で覆ってくれた。
見上げると瞳が揺れ動いていたが、僕はただ嬉しかった。また会えたことが。

「レニ、すまなかった。早くお前に会って謝りたかった。でも、どういうわけか出られなかったんだ。最初は眠っていて、さっき目覚めたみたいで……お前の危険を察知して、それで……」

混乱気味に言葉を紡ぐ彼を、僕は涙ぐんで見つめる。
ラームはそれに気付き、優しく目元をぬぐってくれながら続けた。

「しばらくして、お前と違う男の匂いがした。だから俺はーー」

片腕で僕の肩を抱きよせ、彼の眼差しが背後に向かう。
僕は振り向き、両手を上げて誤解だというポーズを取る騎士さんを見た。

「ああ、いや。君がラームか。初めまして。俺達は友情のハグをしていただけさ。な、レニ」
「はい! そうなんだよ、ラーム。僕が頼んだんだ。どうしてもラームに会いたくて、こうすれば出てきてくれるんじゃないかって、ごめんね卑怯な手を使っちゃって」

でもそれほど切羽詰まっていた事を訴えた。
召喚獣はまだどこか狼狽えたような面持ちだったが、一応受け入れてくれた。

「とにかく良かったよ。君の主とは今日一緒に戦ったんだ。大活躍だったから褒めてあげてほしい。……じゃあ俺はもう行こう、再会の邪魔をしちゃ悪いしな。またな、レニ」
「は、はい! セルゲイさん、本当に今日はどうもありがとうございました、何から何まで…! またお話させてください!」

深くお辞儀をすると、制服姿の彼は長剣を携え、「もちろん」と笑って手を上げ颯爽と部屋を後にした。

部屋には二人が残され、ドキドキしながら振り返る。
僕は彼の表情が気になった。また苦しげだったら嫌だと思った。
もうそんな顔をさせたくないから。

しかしラームは、僕の前にひざまずく。
視線が少し下ぐらいの大人の男は、僕の手をそっと持った。
獣の仕草で頬に撫でつけてきて、胸がきゅっとなる。

「レニ。許してくれ。お前に合わせる顔がない」
「……バカ」
「ああ。俺は大馬鹿者だ。主を守るのが召喚獣の役目なのに、ずっと隠れていた。お前に幻滅されるのが怖かったんだ……」

か細い声の告白がまた胸を強く打つ。
今度は僕が彼を上から抱きしめた。心のままに語りかける。

「ラームは僕の言うこと信じられる?」

尋ねると揺れる瞳を見たが、頷かれてほっとする。

「じゃあ、ラームは僕の大切なたった一匹の狼だ。生まれたときがどんな姿でも関係ない。ラームは格好よくて強くて優しくて、僕の大好きな狼なんだよ。主が言うんだからそうなの。いいね?」

頬を両手で撫でて、言いたいことを言い終わった。

強引かもしれないけど、彼の定義が揺らぐなら僕がいくらでも肯定する。だって事実なのだ。彼と過ごした十二年は、まぎれもなく召喚獣と僕のかけがえのない日々だ。

そう伝えるとラームが泣きそうな顔になった。

「わかった。レニの言うことは絶対だ。信じる。……でも、俺はお前より年下だった。それでもいいか?」
「別にいいでしょうそんなの。年上の僕は嫌なの?」
「嫌じゃない……けど、お前の年上がよかった…」

なぜか絶望的な眼差しで悔やむ彼が、少し可笑しく思えてしまい、愛しさもわく。
完全にガタイのいい成人男性なのに。時々やけに可愛く見えるのが僕は好きなんだ。

「ねえ。自分を見てみなよ、身長も力も、全部僕より大きいよ。ラームは抱っこだってできちゃうんだから」
「抱っこしていいか?」
「えっ? うわぁ!」

油断していたら、抱き上げられた。
単純な彼は少しだけはにかみ、僕より強くて逞しい事実に喜んでいそうだった。

なぜだろう。顔が近くてどきどきする。
きっと久しぶりに会ったからだ。

ベッドに下ろされて、じりじりとラームが迫る。
勘弁してほしかったけれど、頬をぺろりと舐めとられて、これが獣じゃなかったら何なのだろうと思った。

「レニ。好きだ」
「え!?」

すっとんきょうな声をあげると、首をかしげられる。
彼の目は真剣で、暗がりだからか瞳は深く暗く、鼓動を高鳴らせる。

「僕も好きだよ……」

いつもと同じ返事なのに、やたらと心臓がうるさくなる。

ラームの様子が少し変わって映った。
興奮してるのか、焦燥も見られる。

さっきのセルゲイさんとのことかな?
いや、色々かもしれない。一ヶ月も離れていたのだ。

考えるともっと抱きしめてもらいたくなった。
まだまだ足りないのだ。寂しさや不安だった心を埋めるには。

手を伸ばすと、手首にキスをされる。
甘咬みされるかと思ったが、吸いつかれた。

「ん、んぁ」

びりりと何かが通ったみたいになる。
ラームの舌先ってこんなにやらしく感じたっけ?

「なんでそこ舐めるのぉっ」

刻印に絶え間なく唇が触れてくるため、思わず問いかけた。
すると彼は赤らんだ顔を上向ける。

「誓いだ。もうレニの言うことだけ聞く。約束する」

そう言いながら好きなことしてるように見えるんだけど。
恥ずかしくなり黙っていると、急に体ごと胸に仕舞われた。

「レニが無事でよかった。怖かっただろう? 一人で戦わせてしまった。ごめんな……」

強く抱き締められ、僕はただ背中に手を回して掴まった。
心が落ち着いてくる。ラームの匂いが僕を包み込んでいく。

本当に帰ってきてくれたんだ。よかった……。

「平気だよ。でももう一人にしないでね。ラームがいなかったら僕は完全じゃないんだ。知ってたけど、もう一回気づいたよ。僕は君がいなかったら、全然だめだって……」

涙声で微笑むと、体を少し離され、茶狼の視線にじっと捕らわれた。
瞳は柔らかく細まり、顔が近づいてくる。
ちゅっと口づけをされて、その不意打ちにどきんと胸が鳴った。

「そうだな。番だもんな、俺とレニは」

嬉しそうに笑い、また何度もちゅ、ちゅっと唇を奪う。
キスも触れ合いも僕らの中では、魔力供給を表すものだった。

でも今、二人ともそう思っているのだろうか。

僕はラームに自然と押し倒され、彼の温もりをしばらく受けとめ続けた。




ここは聖堂で、奥まった部屋にあるとはいえこんな事をしていい場所じゃない。
ラームは獣の嗅覚があるため、人の気配があればすぐやめるはずだが、さっき僕の上に乗るのを一時中断し、律儀に部屋の鍵を閉めに行っていた。

しかし今度は好き勝手をしていて、ベッドの上で横たわった僕を後ろから抱き、色々触ってくる。

「は、はぁ、もうラーム、だめだってば」
「どうしてだ? レニに触るの久しぶりだ。いいだろう?」
「自分のせいでしょっ」

責めると一瞬しゅんとなった彼だが、獣だから首に鼻をこすりつけるのを止めないし、大きな手は僕の服に入ってきて、胸を撫でていたかと思えば下の方も触ってくる。

「だ、めえ……出しちゃだめなんだもん…っ」

構わずに下着をずらされ、長い武骨な指でそこを弄ってくる。
彼にされるのも久しぶりだし、僕はすぐに達しそうになった。

「じゃあ舐めるぞ? レニの吸うぞ、いいか?」

当然いいなんて羞恥で言えず、それを分かってる彼も自由に身を屈め、僕のぺニスをやらしくくわえる。

「あ、あ、ぅう」

慣れない快感に襲われ下半身が跳ねる。
こんな所を舐められちゃってるけど、不思議と嫌じゃなくて。

「んあぁっ、いくぅっ」

彼の茶髪をきゅっと指で掴み、びくびくといってしまった。
美味しそうに喉を動かすラームは、やがて僕のものを解放し舌で綺麗にしてくる。

お礼じゃないけど、それが終わったあと僕は彼の膨らんだ下半身に目をやった。

「あ、あのさ。僕もしてあげるよ。だから出して、はい」
「……う、うっ!!」

彼は飛び退き、なぜか僕から逃げた。
少しショックを受けつつも尋ねる。

「どうしたの? 僕がするの嫌?」
「そうじゃない。でも、強い雄は番にそんなことさせないんだ」

どういう意味なのか、しばし考えたが僕は怖くないであろう眉を吊り上げた。

「なにそれ、僕だって普通の雄だもん! まさかメスだとでも思ってるの?」
「ち、違う。レニも雄だ。とびきり可愛い雄だ。でも獣は上と下が一応あって……なんでもない」

言いづらそうにしょんぼりしてしまったラームに慌てて近寄る。
つい僕は反応してしまったが、彼には彼の観念があるのだ。

「あ……ごめんね。本気で怒ってないから。そっかぁ…」

ムードを壊してしまい反省したものの、やっぱり頑ななラームが気になった。
というか、僕が躍起になる必要なんて本来ないのだが。これは魔力供給なんだし。

「レニの気持ちはすごく嬉しい。でも少し恥ずかしい。俺がお前に擦りつけていいか?」

すごい事を聞いてくるラームが上から覆い被さってきて、僕の服をすべて脱がした。そして自分も簡単に服を脱ぎ去り、すっぽんぽんになってしまう。

彼の裸体は惚れ惚れするほど均整のとれた筋肉質だ。広い肩幅から腕にかけて肉厚な肌に、腹筋の割れたウエストは細く引き締まっている。

「あ、あぁ、んぁ」

肌と肌を密着させ、昂った大きなぺニスを遠慮なく僕の腹の上で上下させる。

「う、っ、く、レニっ」

短く息をもらす彼に抱きしめられ、ゆさゆさと揺らされる様は頭の芯から思考が奪われていく。
これではまるでセックスしてるみたいだ。

ぺニスから出た先走りでぴちゃぴちゃと滑り、下半身が淫らな気分になっていく。

「ら、ラームっ、交尾はだめだよ、まだ…っ」

だめだと言っているのに、彼は僕の太ももを持ち上げ、そこにあてがった。濡れた亀頭がくちゅっとくっつき、ゆっくり動かされるだけで疼いてくる。

お尻のそんなところが彼の液に濡らされると、今までの意識が変わってしまいそうだ。

「レニ、我慢できない。お前が欲しい。全て手に入れたい。好きなんだ、レニ……っ」

熱い体に囲われ、思いの丈をぶつけられて僕は再び目眩が襲う。
彼の愛情に身体中が燃え上がりそうになった。

「ラーム、あ、んぁ、わかった……指だけ、いれてみて」

小さい声で提案する。
目を見張った彼だったが、素直にそろりと入ってくる。
液が手伝いそれほど難しくなかった。

「ん、んや、ぁ」

太い指に圧迫感を感じる。
でもこの液体、なにかおかしい。じわじわと中が熱を持つのがわかる。

「変だよ、ラーム、……あ、あっ、動かすの待って…!」
「ああ、待つぞ、ゆっくりだ……」

さっきまでの勢いが嘘のように、手先が優しく探ってくる。
息は浅く興奮状態だったが、彼は真剣だった。

やがて指が増やされ、僕の中は少しずつ拡げられる。
しかし強い痛みはない。それどころか、頭がぼうっとしてきて夢をみてるような感覚がする。

「レニ。平気か? 魔力があふれそうだ」
「……えっ?」
「お前の体からずっと、美味しい魔力が溢れてる。でも、俺はそれよりも、レニ自身が欲しい。お前と愛の交わりがしたいんだーー」

告白するやいなや、僕の唇をそっと塞ぐ。
いとおしそうに舌をからめてきて、強い想いが伝わってくる。

「ラーム、本気で僕のことが好きなの…?」
「ああ。ずっとそう言っているだろう? 俺はレニしかいらない。生まれてからずっとそう願ってきたんだから」

頭を優しく撫でられ、切なそうに見つめられる。

元気のなかったラーム。笑顔のラーム。僕に触れて嬉しそうな彼。
全部僕が幸せにしたいと強く思った。
それは主としての思いだったはずなのに。

どうして僕も、彼に伸ばした手をしっかり離さないでいてほしいって、願ってしまうんだろう。

「レニ……ひとつになりたい。ダメか…?」
「ん……いいよ。入ればだけど……」

そこだけは冷静にたぶん無理だろうと思いつつも、彼を受け入れていることを教えたかった。
僕の覚悟や、同じくらい強い気持ちを。

「あ、ああぁあっ」

しかしラームの大きなぺニスは、僕の中にみちみちと進んできた。異物感はすごい。でも苦しいだけで耐えられる感じだ。

「や、やぁっ、なにこれぇっ、もっと小さくして、ラームっ」
「これ以上は無理だっ……レニ、中が、ああ、温かくて……気持ちが、いい……っ」

一瞬深く息を吐いた彼だが、僕の表情を確かめながら、徐々に腰を動かしていく。
ぺニスが前後に移動するたびに、変な声があふれてしまい、中がちゅくちゅくと敏感に反応する。

「ひっ、あ、あぁっ、んぁっ、やぁっ!」

気づけば大きく揺らされ、腰を持ってぺニスで中を気持ちよくされていく。

すぐに理解出来なかった。なぜ初めてなのに、あんなに大きいものが挿入されているのに、僕は快感を得ているんだ。

「あっ! あぁ、そこやめて、だめえ!」
「ああ、レニ、可愛いぞ、ここがいいか」
「ちがっ、んぁあ、やだっ、おちんちん動かさないでぇっ」

ずぽずぽと中を責められ、ぺニスの先端から竿まで僕を好きにする。
獣とかもう分からない。長大な男の逸物の存在感に、思考が飛んでいった。

「はぁ、はあ、レニの中がひくついている、もうイクか?」
「ん、んぅっ、わかんなっ、やぁ、い、いく、かも…っ」
「よし、じゃあ先にイカせるぞ。好きなとこをいっぱい突いて、もっともっと気持ちよくするからな」
「ひっ、うぅん! だめ! そこ、しないでっ」

互いの汗が滲む中、活発な召喚獣がここぞとばかりに腰を打ち付ける。すでに彼の思惑通り雄として負けている僕は、正面からぎゅっと抱き締められたままイカされてしまった。

「んあっ、ああぁっ!」

腰が跳ねすぎて押さえられる。その手のひらさえ感じてしまい、ラームのせいで僕は自分が誰なのか分からなくなっていった。

「レニ……イッたのがすごく可愛かった。まだ抜きたくない。お前の中は気持ちがいい。……俺もイッてもいいか?」
「……え?」

真面目に聞いてくる召喚獣に、まだ離してもらえず足をさらに開かせられる。怒張したぺニスがぐんぐんと奥に進み、そこを突き始める。

「っ!! 〜〜っ! ラーム! あ、あぁっ!」

本気を出した彼はすごかった。勢いのあるピストンは的確に快感を見つけ出し、僕を何度でもいかせてくる。

「んっ! んぅ、あ、あ、あぁあ」

初めてのセックスなのに。
それを忘れさってしまうほど、彼の肉体は僕の全身を虜にし、凝縮した愛と快楽をもたらし続けた。

「レニ、レニ、もう出そうだ、お前の中に出してしまう」
「あ、あぁ、ラーム、出して、出してラーム」

重なる体に理性は奪われ、奥深くに狙いを定めた獣のぺニスが痙攣する。
彼のうめきとともにビクビクとしなり、自分の中に多く流れ込んでいくのを感じた。

「あ、あ、ああ……ッ」

息づかいが部屋に響き、僕は大きい体の隙間から手足をだらんと投げ出したまま。
彼が出しきるのを待っていた。

しかし。
いつまで経っても彼は動かず、四方からぎゅうっと抱き込んだままだ。

「……う、ん……ラームも……気持ちよかった? たくさん出しちゃった…?」
「ああ……まだ出してる……」

ーーえっ。

一瞬時が止まるのと同時に、部屋に沈黙が流れる。
射精って、そんなに長かったっけ。
何か起きたのかと心配になり、僕は真上の彼と視線を合わせた。

すると彼は頬を紅潮させ、こう伝えてきた。

「狼の射精は長いんだ。しばらく抜けない。悪い、レニ」
「……ええぇっ!?」

彼の話は本当で、体感的に十数分もそのままだった。
でもぺニスは硬いままで、僕の変な気分も持続する。

「もういいよラーム、抜いて…! なんか疼いちゃうよっ」
「そうか? じゃあまた動くか。このままでも出来るぞ。何回でも」
「もうなに胸張ってるんだよっ」

やっぱり獣だ。
というか、狼のそんな性質まで受け継がなくてもいいんじゃないか。

彼が頑なに外で射精したがらない理由は分かったが。
僕の中にそんなに出されても困るんだけど。

「大丈夫だ、レニ。時間が経てば魔力になって吸収される。体に悪くはない」
「そうなの? それはよかったけど……」

ということはつまり、二人の魔力が循環しているということなのか。
謎が多すぎて困惑するけれど、至近距離で繋がったままの召喚獣の存在に汗ばんでいく。

やたらと恥ずかしい。ラームと交尾をしてしまった。
自分があんなに風になるなんて。

「ねえ。僕変じゃなかった? まだラームの主だよね」
「ん? そうだぞ。レニは俺の主だ。でも、番にもなった。そうだろう?」

甘い声を出して撫でた髪を、優しく耳にかけてくる。
違うって言えなかった。それでもいいやって彼が僕に思わせたのだ。

「うん……じゃあ、もう一回好きって言って」

そっと腕を掴むと、彼は瞳を輝かせ、「レニが好きだぞ。一番だ。何回でも求愛する」と僕になつく。

思った通り、僕はそのとき一番の幸せを感じた。



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