店長に抱かれたい | ナノ


▼ 31 密かな計画

「ん、んっ、ぐ」

俺は今、朝方に店長の寝室にいる。そして彼との甘い約束をひとり実行中だ。

「……っ」

部屋着がはだけ、寝そべる彼から吐息が聞こえた。
セクシーな浅黒い肌に映える腹筋がびくびくと動く。 

「んむ、んっ、……あれ? 店長もしかして起きてます?」

一旦口を離して尋ねると、レオシュさんはゆっくり顔を起こした。

「あ、はい……すみません、ロキ。さすがにこの状況で寝てはいられませんでした。気持ちがよすぎて……」
「本当すか! いいんですよ、我慢しないでください。起こすためにやってるんですから」

ちゅぱちゅぱしゃぶりながら話しかけると、彼が「うっ」と呻く。

「あぁ……やはり起き抜けはまずいですね……もう出てしまいそうです、すごく早くて申し訳ありません……っ」

赤らむ店長の息がせわしなくなり、分厚い胸が上下する。

「あ、くっ、だめです、……君の口に、出します……!」

丁寧に告げてくれた店長の愛しいものを俺は口内で受け止めた。
それはまるで媚薬のように俺を恍惚とさせ、体中に浸透していく。

「んんんっ……すげえ……店長の、うめえぇ……」

すべてを飲み干したあと、俺はシーツの上に倒れこんだ。
しばらく彼同様動けなかったが、上半身を起こしたレオシュさんに髪を優しくとかれてぼんやりする。

「とっても気持ちがよかったです。ありがとう、ロキ」
「は、はい……こちらこそ、ごちそうさまでした、店長」

小さく彼の笑い声が落ちる中、口元をとられて唇をちゅっと重ねられた。
ちゅくちゅくはまれ、「あ、お掃除フェラしなきゃ…」と願望を思い浮かべたが、彼は俺に休むように言い、布団の中で抱きしめてくれた。

その後お礼と称して俺も彼の包み込む手でちんぽをシゴいてもらい、至福の中達する。

「ふふ、うっとりして……可愛いですね。……もう君のことを、離したくなくなります」

薄れる瞳を彼の甘やかな黒い瞳がのぞきこむ。
はぁぁ。俺もです。
朝からそんなことを言ってもらえるとは。

感動しながら俺は意識を失ってしまったようだった。



「ーーロキ。眠いですか? もうそろそろ起きてください、寂しいですから」

……えっ、ええ?
あの大人なレオシュさんがそんな可愛らしいことを……っ。

「は、はぁ、ん、……? あれ? 夢か今のっ?」

俺はベッドから飛び起きた。辺りを見回すと、記憶と同じ部屋着のレオシュさんがいる。

「え? 今何時すか」
「もうすぐ10時です。朝御飯食べませんか?」
「……もちろん食べます! ていうかすみません俺だらしなくて!」

早起きの店長のスケジュールを乱してしまったと青ざめると、柔らかく笑まれた。

「大丈夫ですよ、今日は休日ですし。私も君とごろごろしたかったんです。……けれど、君の寝顔を見ているうちに、段々構ってほしくなってきてですね…」

照れくさそうに話すレオシュさんに俺も赤面してにやける。
いったいどれだけこの人は俺のことをときめかせるんだ。

どうやら朝のは夢ではなく安心したが、俺は慣れない早起きをしたためかイッたあと眠りこけてしまったらしい。

俺達はそれから、二人で仲良く食事を取った。
そしてせっかくの休日、何をしようかと話していたところ、ひとまず食料や日用品の買い出しに行くことにした。





店長のアパートメントから、車で十分ほどのところにある地元のスーパーに到着する。商店街にある小売店よりも大きく、店長は週一で訪れているという。

俺達は家族連れや老若男女でにぎわう店内を、カートを引いて歩いていた。

「レオシュさん。洗濯洗剤がもう少なくなってましたね」
「はい。あと柔軟剤もですね」
「え? 柔軟剤って何ですか?」
「服を柔らかく、なめらかな質感に保つためのものです。香りがよいものもありますし、使ってみると着心地がいいですよ」

解説してくれるレオシュさんを「ほお〜」と尊敬の眼差しで見つめる。だから彼の服はいつも触りごこちがよくいい匂いがするのか!

俺も共用部の洗濯機を使わせてもらっているが、いつも適当にぶちこんで気にしたことがなかった。
料理もそうだが、シャツもいつもパリっとしてるし、彼の高い家事力を称えると「独り暮らしが長かったもので」と微笑まれた。

自分も高校を出てから独り暮らししていたものの、料理は最近彼のためにちゃんとやろうかなと思い始めたぐらいだ。
レオシュさんとのさらなる同棲生活を高めるために、もっと頑張ろうとやる気に満ちた。

それからも楽しく会話をしながら、食料品コーナーを見ていた。
すると向こうから知り合いがやって来た。いつもと違いこの店の制服のポロシャツを着た、金髪の中年男性だ。

「おや、エドガーじゃないですか。こんなところで何をしてるんです?」
「おお! 店長さんじゃねえか。あんたこそ、……んっ? ロキくんと買い物か? へえー仲良すぎだろ」

かかかっ、と笑うこの人は普段は商店街の小売り店で働いているおっさんのはずだが。
たまに喫茶店を訪れてはテンポのいい会話と珈琲を楽しんでいく、気さくな人でもある。

「あはは、そうなんすよ。店長とは休日も一緒に過ごすほど親密なお付き合いをさせて頂いてます。ーーっていうかエドガーさんは、お店クビになっちゃったんですか?」
「違うわ! あそこ俺の店だぞ。このスーパーな、俺の従兄弟がやってるんだよ。今日は人手が足りないっつうんで手伝いだ」

面倒くさそうに腕組みをしながら、本来の店は奥さんに任せてるのだと教えてくれた。

「それはご苦労さまです、エドガー。店を経営する同士、大変さは分かりますよ」
「そうだろう? ……あっ、そうだ。ロキくん、よかったらこの店のバイトどうよ? 時給結構弾むらしいぜ?」
「「えっ?」」

俺と店長がハモって声を出す。
いきなりこの人何を言い出すのかと思ったが、マジで人手を求めてるようだ。

「んー、そうですね。例えば時給どのぐらいなんですか?」
「ちょ、ちょっとロキ、興味があるんですか」

レオシュさんの焦り顔が直撃し、俺はとっさに首を振る。

「い、いやそんなことは。ちょっと気になっただけで」
「……そうですか? うちの時給、もう少し上げたほうがいいでしょうか」

彼がなにやら本気で考え始めてしまったので、俺は「マジで何の問題もありませんよ!」と慌てて制止した。

「ははは! あんたんとこのお店はお洒落な賃金してるじゃねえか。まああれだ、興味あったらいつでも言ってきてくれよ、青年」
「ーーあの、エドガー。私の目の前で彼を引き抜こうとするのはやめてくださいよ。悲しいのですが」

眼鏡を直し困惑の瞳を向ける店長に、エドガーさんはまたバカ笑いをして「すまんすまん、ついこのガタイに惹かれてな」と俺の肩を叩いてきた。

実は俺は、バイトの件については真剣に考えているところがあった。もちろん店長のお店の待遇には何の不満もないし、変えるつもりも更々ない。
むしろ永遠に就職したいぐらいなのだ。

しかし、最近別のバイトを増やしてもいいかな、とは密かに計画していた。まだはっきりとレオシュさんには伝えていないが。

それにしてもこの店長の慌てっぷり、こんな俺を彼も必要としてくれているのかと、少し不謹慎にも喜びが湧く。
一方で、どうやってこの話をするか…というのも考える必要があると感じた。

大人同士わいわい話している彼らだったが、忙しいといいつつこの臨時従業員は最後にすごい事を言ってきた。

「あっ、そういや店長さんよ。あんたのアレはどうなった?」
「はい? アレとは…」
「だからあっちの話だよ。数ヵ月前、俺の店でゴムとローションセット買ってっただろう。話の続き聞かせてくれよ。うまくいったのか?」

彼のにやけ顔に俺の目が飛び出る。
店長も尋常でない動揺ぶりで「なっ、今その話はいいですから!」と声を張っていた。

「……えっ? 店長、そんなもの、何に使ったんすか。俺ぜんぜん、知らなかったっす……」
「おうそうか? まあいくら可愛がってるバイトといえど、こういうもんは年の近い俺らのほうが話が合うもんなあ」

機嫌良さそうに大口を開ける中年に意識が途切れそうになる。
しかしよろける俺の背をレオシュさんがガシッと支えた。

「あの、それについては上手くいきましたから、ご心配なく。……ん? エドガー、あちらのレジがものすごく混雑してますよ。あなたが必要なんじゃないですか」
「え、ああほんとだ。じゃあ俺行くわ。またなお二人さん、うちの店にも来てくれよ、品揃えは知っての通り良いからな!」

嵐のように去っていった男の背を呆然と見送り、俺は震える。
恨めしい思いで店長を見た。

「店長、どういうことですか。ううっ……まさか、う、ウワーー」
「違いますよ! 何を言ってるんですか、ロキ。本気じゃないでしょう? やめてください、こんなところで君を抱きしめたくなります」

店の隅で切羽詰まった表情に迫られ、不覚にもドキドキする。
すると店長は真相を話してくれた。

「誤解をさせてしまい申し訳ありません、ロキ。あれは君との夜に使ったんですよ。初めての…時です。お恥ずかしながら、そういった事を久しくしていなかったものですから。……でも準備を急いでいて、近場で買ったのは間違っていたかもしれませんね。今度はその、しかるべき所で購入しますから……。ああ、私はスーパーで何を話しているんだ…」

レオシュさんが額に汗を浮かべて珍しくしどろもどろな様子だ。
俺は一斉に安堵があふれ、勢い余って彼の腕を掴んだ。

「なっ、なんだ……よかったあ……俺のためだったんすか」

抱きつきたいのをこらえ、潤む瞳で彼を見つめた。すると彼も「もちろんですよ」と安心した様子だった。

誠実な彼を疑うなどもっての他なのだが、俺はまだまだ恋は盲目状態なので至極簡単に震えが起こってしまうのだ。

「ロキ。君のほうこそ、バイト辞めたりしませんよね…?」

立ち止まる彼が突然、緊張した面持ちで問いかけてきた。
その不安げな様子に俺は胸がきゅんとしめつけられる。

「辞めません辞めません、お願いされてもしがみつきますから! さっきのはマジで気にしないでください」

つい全否定をするが、やや自分の首をしめていると背汗を感じる。

「そうですか……よかったです。いえ、そもそも私が引き留める権利はないのですが……君は自由に働き先を選ぶことが出来るのですから。……しかし、やはり君と一緒に働くことが私はとても好きで、つい尋ねてしまいました」

彼の遠慮がちな微笑みを見てくらくらする。
いや引き留めてくださいよ。「お前はずっと俺の店にいろ!!」ぐらい言って縛り付けてくださいよ店長……ッ!

そうこっそり思ったことは秘密だが、同時に俺のちょっとした新しい悩みの種は生まれていた。



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