君といたい | ナノ


▼ 3

フェリーが島に到着し、下船した俺たちは奴の自宅へと向かった。
月明かりの下、波の音を聞きながら、二人で砂利道の小阪を歩いていく。

石造りの平屋が多い中、シーガの家は木造のこじゃれた古民家のようだった。

高床式の玄関に上がり、居間へと通された俺は、そこで温かなココアを口にしていた。
さっきの出来事の羞恥があったのか、奴は口数が少なかったが、飲み物を冷ます俺を見て、ふと笑みを浮かべた。

「なんだよ」
「いや、君が来てくれたことが嬉しくて」

ますます変な奴だと視線をそらす。
台所のそばのカウンター前に座った俺は、周りの家具をまじまじと眺めた。

木目が美しい濃茶の飾り棚や、木彫りの低いテーブル。深緑の布地を張ったソファなど、素人目に見てもどれも洒落たものに映る。

「この部屋の……お前が作ったのか?」
「うん。全部じゃないけどね。勉強の為にも、気に入った職人の家具を集めたりしてるんだ」

明るく話すシーガの横顔を見つめた。
いくら日銭を稼いだところで、部屋の内装に気を使う精神なんて、俺にはない。豊かな暮らしってこういうことを言うんだろう。

「いい家だな。初めて来たけど居心地がいいっつうか……俺の粗末な部屋とはまるで違うぜ」
「そうなのか? ……気に入ってもらえたなら嬉しいよ。そうだザック、工房に案内しようか」

微笑んで立ち上がり、俺も促されるまま奴の後を追うことにした。

居間の奥に隠れた廊下を歩くと、下に続く階段が現れた。どうやら工房は地下にあるらしい。
だが、その前にもうひとつ部屋があった。少しだけ開いた扉の隙間から、中の様子をちらと見る。

なぜか部屋のもの全体が、黒い布に覆われている。ドア近くの棚には、写真立てが飾ってあるようだった。

「そこは違う部屋だ。こっち」

背後から腕を伸ばされ、目の前で扉ががちゃりと閉められた。
驚いて奴を見るが、何事もなかったように地下へと誘われる。

なにか怪しい。こいつ、やっぱり何かを隠してるんじゃねえか。
そう訝しみながらも、工房へと入っていった。


天井付近の窓から地面が見え、外からの光がさすが、室内は薄暗い。
シーガが照明を灯すと、一気に木材やら工具やらが、壁や棚などところ狭しと置いてあることが分かった。

「なるほどな。お前本当に職人なんだな」

作業台の木板に触れ、物騒にも思える鋸の刃の部分をなぞった。
映画とかならこれが凶器にもなるな。こいつが万一、俺を狙う殺人鬼とかだったならば、窮地に陥る場面だ。

そうだ、奴の仕事場にのこのこ入ってきたのだ。もっとこの男を知るために。
ならば先に仕掛けたほうに、分があると考えた。

「……ザック? どうしーー」

俺はシーガに向き合い、奴の首に手を伸ばした。
指先で撫でてやると、明らかに奴が硬直した。

体を密着するぐらいに寄せ、首筋に吸い付き、奴に火をつけようとする。
同時にジーンズの上から股間を揉むと、もう硬くなっていた。
こいつのはかなり立派なものらしい。入れたら気持ち良さそうだと考え、一瞬奥がきゅうっと疼き出す。

「待ってくれ、ザック」
「なんだよ。俺とやりたいんだろ?」
「……そんなことは……っ」

さっと赤らめて視線をそらす男の顎を掴む。

「家に誘うってそういうことだろう。……なあ、お前俺に入れたい、みたいなこと叫んでたよな。忘れてねえぞ」

低い声で囁くと、ごくりと喉を鳴らされた。

「こ、ここはダメだ。……君のことを思い出して、作業に、集中できなくなる」

へえ。随分と初々しいことを言うんだな。

不思議な感覚に見舞われた俺は、奴の唇にキスをした。首に腕を回したまま目をじっと見る。

「なら、お前のベッドに連れてってよ。そこで……めちゃくちゃに抱いてーー」

全てを言い終わる前に、口を塞がれる。奴の分厚い唇に。
夢中で舌を絡めとられ、呼吸が苦しくなるぐらいだ。

急にこんなに押されると、俺のほうが先に、発火してしまうかもしれない。

いずれにせよ期待通りに、俺はうまくこの男を誘い出すことが出来た。




ベッドの上で、男が覆い被さっている。
服に頭をくぐらせ、均整のとれた筋肉質な肉体が現れる。
普段の客は金持ちの年上ばかりなため、若い男とはあまりする機会がなかった俺は、その姿に自然に見惚れた。

ふと奴の動きが止まったので首を傾げる。

「なに? 俺のは脱がさないのか。着たままするのが好き?」

腰に足を絡めて誘うと、シーガは赤くなった。

「いや、脱がせたい。……俺、初めてで、あの……」
「ああ。ノンケだもんな、いいよ。俺に任せておけ」

頭を引き寄せて額に口づけをした。

奴を押し倒し、腰のあたりに馬乗りになる。
上着を脱ぎ上半身裸になると、直線的な視線が突き刺さった。

「乳首舐めたい? ……舐めて」

言うとすぐに上体を起こし、むしゃぶりつく男の後頭部を撫でる。女でもないのにと普段なら笑えるのだが、こいつの場合は微笑ましい気分になった。

大きな手を俺の下腹部へと誘う。
握らせて耳に口を這わせる。

「あ、ザック……っ」
「なあ、気持ちよくして……ここ」

しごかれると、力の入れ方に優しさが感じられて、くすぐったい感覚がした。

「ああ……良いぜ……、出そうだ、シーガ」

掴まって腰を揺らすと、奴も動きを合わせて下から揺らしてきた。

「そう、後でお前の、おっきいやつ入れたら……そんな風に動くんだぞ」

目を見て囁くと、奴の瞳が見開いた。
息を上げ、もはや劣情が抑えきれていない様だ。

乳首を吸われて手の動きが激しくなる。主導権を握られそうになり、じりじりと焦りが迫る。

奴の指が尻に這わされた。

「もうすぐ、ここ、入れていい? いいよな、ザック」

撫でられてのけ反るとすぐに、唇を奪われる。
舌を激しく吸ってきたため、我慢できず、出してしまった。

「ああぁっ……ん、ん……」

二人の腹の間が濡れる。
シーガが液を指にとり、赤ら顔で物珍しげに見つめたあと、俺の後ろにまた手を伸ばした。

「はぁ、あ、あぁ、ぅ」

こいつ、初めてのくせに躊躇なく濡れた指を入れてきた。
長くて少し太い綺麗な指が、中をゆっくり擦るように動く。

初めての男なのに、不快感を感じない。俺は、どうしたんだろう。

「ザック、君の感じるとこ、教えて、気持ちよくしたいんだ」
「んっ、いいから、もう入れろ……」

肩に掴まった体勢で、奴の顔を抱き寄せた。

「……早く、しろって、そのままでいいから」

客とゴムなしでしたことなどなかった。俺は本当におかしな事を考えている。

ぎゅっと背中にシーガの腕が回され、自分の中に挿入されていく。
大きくて、太さもあって、気持ちいい。

「俺の好きなとこ、奥……」
「……分かった、……こう?」
「ん、んあ、ああ、ぁ」

奴の上に座ったまま抱き合って、下から奥を突かれる。
俺の挙動を気にして、優先してくるのが、変に感じる。

「気持ちいい?」
「……あっ、……ああ、いいって、……っ、お前は、どうなんだよ」

快感を受け入れながら尋ねると、まっすぐ見つめられていることに気づいた。

「俺は……気持ちよすぎて、よく分からない。ザック」

頬を撫でられて、咄嗟に目を伏せた。
なんで俺が今恥ずかしいなんて、感じてるんだ。

「でももうちょっと、出来れば、激しくしたい」

そう告げたシーガに反対側に押し倒され、深く腰を入れて突き上げられる。

「あっ! あぁ! ま、て、んあぁっ、はあっ、んあっ」

太ももをがっしり抱えられ、太い根が奥まで貫いては刺激を与え続ける。

「待てないよ、もう、ずっと待ってたんだから」

キスをされて思うがまま揺さぶられ、自分の意思とは関係なく、快楽に身を投げてしまう。

待ってたって……俺を?

今、何が起こってるんだ。
仕事とは明らかに違う時間が流れている。

「あ、ああ、ザック、……もう君を離したくないよ」

シーガは俺を腕の中に抱いて、何度も唇を重ね合わせた。

久しぶりに感じた、感情がともなう交わりだ。もう長い間、俺に背を向けていた、人の温もり。

シーガに抱かれた時、俺は体を売っている自分ではなく、素の俺をいつの間にかさらけ出してしまっているような、そんな感覚に陥っていた。

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