短編集 | ナノ



隊長のお尻を叩きます


王都から離れた郊外にある田舎騎士団。
周辺の魔物討伐とたまにある要人警護が主な任務で、まだ若い騎士の俺には、はっきり言って刺激が足りない毎日だ。
ここでは他に酒と女と賭博ぐらいしか楽しみがない。

「なあワイルズ、お前明日非番だろ? 俺もなんだけどさ、今夜久しぶりにストリップ寄らねえ?」
「おっいいな。ちょうど俺の最推しちゃんの出勤日だし、ふわっふわのおっぱいを堪能すっか。ぜってえ顔埋めるわ顔!」
「オヤジくせえなぁ、いつか出禁になるぞお前」

訓練場での稽古終わり。更衣室で同僚とくだらない話をしていると、遠くからガタン、と物音がした。
俺たちは会話を止めて棚から顔を出す。そこには部屋を出ようとしている、憮然とした顔つきの男がいた。

「あ、コンラッド隊長。お疲れさまです!」
「ああ」
「あの、良かったら隊長もどうです? ストリップ。いい子いますよ。なあ、ワイルズ」

同僚が何の気なしに振ってきた。普段この強面堅物の隊長となんの絡みもない俺は、こっちに振るな馬鹿じゃねえのかと内心焦る。

「いや、俺はいい。お前らだけで楽しんでこいよ。明後日の修練には遅れんなよ」

そう言ってクールに背を向け、扉を抜けていった。
二人で敬礼をして送るものの、てっきり怒られると思っていた俺は拍子抜けした。

なんだ、結構いい人みたいじゃねえか…
そう思いつつ鼓動を抑えて隣の騎士に向き直る。

「お前ふざけんなよ、隊長に向かって何誘ってんの? あの人どう見ても硬派だしそういう人じゃなくね?」
「いやいや、んなことねえんだって。隊員の俺らと娼館にも付き合ってくれるよ?」

嘘。別の隊の男連中の付き合いに詳しくなかった俺は、目を丸くした。

「まじかよ。そういう女遊びもするのか。……まあムッツリとかもいるもんな」
「そうそう。でもさ、やべえ話聞いちゃって」

噂好きの男が耳打ちしてくる。度肝を抜かれる内容だ。

「何回かお世話になってるちょっとお喋りな子に聞いたんだけど、相手したらしいんだわ。それがすげえんだってさ、隊長」
「え、どんな風に?」

ミーハーな俺は、たぶんすごい巨根とかはたまた小さいとか、三秒持たずにイッちまうとか不名誉な事実を待ち構えた。

「挿入してる時にな、お尻ペシペシされるのが好きらしい。正常位で覆い被さってきて、結構強めに叩くと喜ぶらしいぜ。本当なのかね。あの格好よさからは想像出来ねえけど」

こいつの口の軽さにも驚愕だが、俺は想像してしまった。

黒髪長身でガチムチ体躯。Sっぽい容姿から、する方ならまだしもスパンキングされて悶える変態男だと?にわかには信じがたい。

でももし本当だったら…?
この胸のもやもやは何なのだろう。嗜好はまったく違うが、同じエロを嗜む男として強く関心を引かれた。




後日、どうしても気になった俺は隊長をつけた。
トイレに入るのを見計らって、偶然を装い小便器の隣に立つ。
じっと様子を伺うと、案の定じろりと見返された。

「おい。俺のちんこに何か用か?」
「あ、いえ。すみません。間違えました」

二人の用を足す音が響く。隊長より先に終わってしまい、手持ちぶさたになっていた俺に、魔が差した。

今ケツを触ったらどうなるだろうか。いや、思いきってーー
俺は手のひらを振りかざし、バシィン!と隣の男のケツを制服のズボンの上から叩いた。

「ン、アアァッ」

するとどうでしょう。
とんでもない喘ぎが響いたのだ。事件はそれで終わりではない。
なんとびっくりした隊長の手元が狂い、小便が俺の下履きに飛び散りかかった。

「うわっ、きったねえ! 何すんすか隊長!」
「……て、てめえが何すんだコラッッ」

逆切れした男は腰を何度か振りサッとちんぽをしまった。顔は真っ赤なまま激しい息をついて俺を睨む。
二人でひとまず手を洗い、鏡の前で再び勢いよく見据えられた。だが俺も黙ってはいない。

「何ですかその目は? あんた俺の制服汚したんですよ、どうにかしてください」
「ああ″? まず上官の尻を突然叩いたことに対し謝罪をしろテメエ」

いつものクールさはなく、まるでヤカラのように凄んでくる。
冷静さを取り戻した俺は一旦頭を下げた。と見せかけて隊長を少し下の目線から捕らえた。

「……気持ちよかったんですか?」
「何の話だ」
「分かるでしょ、絶妙に掠れたすっげえ色っぽい声出しといてーー」

胸ぐらを掴まれる。剣技もだが武力では負けることを知っているため腰が怯んだ。

「ついて来い」

ボコられるのかと思いきや、腕を掴まれた俺は用務室の受付に連れられた。
装備品や武具類などがある倉庫だ。
隊長は義理堅くも新しい俺の制服を用意してくれた。

その時「あの、隊長のズボンも汚れてます」と事実を告げると「早く言えこの野郎!」と切れられた。まだ先ほどの恨みが募っているらしい。

奥にある誰もいない控え室で二人、着替えることにする。

そこでまた俺の好奇心がうずき出す。
さっきのでは足りない。真実を見極めるにはやはり、もう何発か試さなければ。

隊長が後ろを向いて下履きを下ろした瞬間、俺は背後に近づいた。
ぴちっと大きな尻にはりついた下着を眺め、筋肉質だが柔そうな肉体に見惚れる。

「隊長、そこに手ついてください」
「あ?」

背中に被さるようにして、近くの台に押し付けた。両手をとっさについた隊長の尻を、またパアアン!とたたく。
するとまた嬌声が響いた。

「あああぁッ」

はあはあ忙しなく息をして手をついている。

「耳が真っ赤です。やっぱり気持ちいいんですね?」
「黙れッ!!」

罵倒されながら叩いた方のケツを撫でた。
なぜ俺はこんなにも興奮しているのか。女好きのこの俺が。女体に目がない俺が、ただの男のでかい尻から目がそらせない。

ああでもやはり、肉付きのよい尻はいい。
生唾を飲みこみ、また手を振りかざす。

「ん、ああぁあッ! や、やめ、ああああんッ」
「ほらほら隊長、どう見ても感じちゃってますよね、一体どうしたんですか、そんなにお尻をぷりぷり振ったりして」

リズミカルに叩くと面白いほど反応がすぐ返る。たまに不発で変な音になると申し訳なさすら感じ、すぐに仕切り直したくなるほどだ。

「はあ、はあ、あぁ、あ……あ……やべえ……ッ」

最後にもう一回、と思いよりいっそう強めに放った時だった。「んあああッ」という音とともに隊長が台の上に突っ伏し、腕をぴくぴくさせたままうずくまった。

そして静かになる。どうしたのだと焦った俺は、その横顔が赤く染まり汗がにじみ、目尻に涙があるのを発見した。

やばい、泣かせてしまった。
しかし泣いているのはパンツの中もだった。

「お前のせいで、出ちまっただろうが、どうしてくれんだ……ッ」
「も、申し訳ございません。コンラッド隊長。立てますか?」
「今さら敬意払ってんじゃねえ! いいから拭くもん寄こせ!」

近くの布を渡すとふらふらと立ち上がり、下着の中に手を突っ込んで拭いている。

しかし尻を叩いただけで人をイカせたのは初めてだ。ただ単に隊長が変態なだけだとは思うが、自信を分け与えられた気がして、己の手に感動すら覚えていた。

だがあんな姿を見せた後でも隊長は男らしく、言い訳ひとつ漏らさなかった。
制服を整えその場から立ち去ろうとする。
俺は慌てて引き止めた。今の時間で何かしらを共有できたのではと思っていたからだ。

「この事は誰にも言いませんから、隊長」
「当たり前だ。ああ、ワイルズ。お前、第二小隊の補給班だったよな。外に物資が届いている。倉庫に積んでおけ」
「はっ。了解しました」

何事もなかったように命じられ、ひとり取り残される。
まだピリピリする手のひらを開き、俺はさきほどまでの体験を反芻していた。




その後俺は、自分でもどうしてしまったのかと思ったが、隊長の背中を常に追った。
そもそも農村出身の下級騎士である自分は、女にモテるからという安易な理由でこの道に入ったため、日々の職務も適当にこなしていた。

そんな奴等が少なくない田舎の騎士団で、コンラッド隊長はもともと異色だった。
口数は多くないものの部下や仲間の面倒見がよく、訓練場でも人一倍長く剣を振り、実直に職務に邁進していた。

そんな素晴らしい騎士がなぜこんな僻地にいるのかは不思議だったが、隊長は元々王都で警衛団に所属していたと聞いたことがある。

ひょっとして、性癖がバレて首にでもなったのだろうか?
邪推をしながらも、俺は彼の尻に自然と吸い寄せられていった。


「あっ、ああ! ……くっ……な、なんで……お前は……そうやって突然、俺のケツをはたいてくるんだ……ッ」
「そこに隊長のお尻があるからです。あの日からなぜかあんたの臀部が忘れられない……ほら、もう一回!」
「んああああっ」

その日書類を手に廊下を歩いていた隊長を見つけた俺は、資料室に彼を押し込めていた。
これでもう四度目だ。

しかし気のせいだろうか。段々隊長の声が艶がかっている。
最初は立たせて行っていたが、たまにはリラックスした雰囲気もいいだろうと、今ではソファの上で四つん這いになった隊長の尻を自分の胸の前におき、叩いていた。

「……クソッ……ああッ、い、イク……ッ」

そして隊長は俺の目の前で射精する。
下着をずらしているため丸いデカ尻は露だが、布に精液がたっぷりと染み込まれる。
腰を震わせたあと荒く息をする隊長が、体を起こし背もたれにどさっと背を預ける。

この憂いに満ちた表情と色気。尻叩きのくだりさえなければ、きっと落ちない女はいないだろう。

「隊長、今綺麗にします。替えの下着も持ってきましたからご安心ください」
「黙ってやれよ。……つうかまたそれお前のパンツじゃねえかよ!」
「そうですよ。他に持ってないんで」

出した後は若干偉そうになる上官だが、俺はなんとも思わない。
濡れた性器を目にしても、ああすげえ立派な逸物だと尊敬の念しか生まれない。

「お前、俺の上に立ったと思ってんだろ。楽しいか?」

いそいそ拭いていた手が止まった。鋭い目付きで見下ろされていることに気づく。

「いえ、俺は常に隊長の後ろに立ってますけど」
「茶化してんじゃねえ、いちいちムカつく野郎だなッ」

怒らせてしまい焦った俺は、困ったときの尻撫でを施した。すると隊長は黙る。胸を少し上下させて、途端におとなしくなる大型犬のようだ。

「楽しんでるのはあなただって同じでしょう。俺の手が好きなんでしょ?」

淡々と尋ねると手首を掴まれた。そして彼の顔の前に持っていかれる。
初めての行動に何をされるのかとドギマギしていると、思いもせぬことを呟かれた。

「でけえ手だな。……やっぱ似てんのかもな」

どことなく遠い目をする男の眼差し。

ーーえ。似ている?
誰にだ?

青天の霹靂を味わった俺は、その後頭が真っ白になり、何の会話をして別れたかも忘れてしまうほどだった。

どういうことだろうか。
やはり変態的な性癖をもった隊長だ。他にパートナーがいる、もしくはいたとしても不思議ではない。

その台詞から女の手ではないだろうと思う。
いやしかし、隊長は同性が好きなわけではない、俺と同じ男だ。

その日以来、俺の中で妄想が膨らんでいった。
王都の警衛団にいた頃、イケメン騎士の同僚か渋いおっさん上司か何かに、同じようなことをされていたのでは。
それであんな風にいやらしくなってしまったのではないか。




週末。コンラッド隊長が非番の時をねらい、俺は彼の家へと特攻した。
もうしばらくは女遊びもやめていて、ストリップにも通わなくなった。俺は自分の性を発散させているわけではないのに、すでに特異な隊長の存在に、心を鷲掴まれていた。

「てめえ、何の用だ。どこで俺の家を知った」
「第一小隊にいる同僚からです。お願いです雨が降っててすげえ寒いです。中に入れてください」

弱々しい感じを装い、真面目な顔で頼み込むと、仲間思いの隊長は仏頂面で室内に通してくれた。

自分が住む寮よりも広い、いくつかの部屋がある小綺麗な住居だ。
タオルを投げてきたので遠慮なく頭を拭き、隊長が座った側の長椅子に腰かける。

俺が詰め寄っても眉ひとつ動かさない。

「誰に似てるんですか」
「あ?」
「俺の手です。気になって夜も眠れないんですよ。教えてくれるまで帰りませんから」

そう迫ると頭をぐいっと押し退けられ、ため息を吐かれた。

「ワイルズ。お前は俺が思ってたよりも好奇心が強い男だったんだな。普段はやる気ねえくせによ。少しはその興味を剣術に使ったらどうだ?」
「ねえ誰ですか、今もそいつと続いてるんですか? その可愛いお尻は今まで二股してたんですか」

我慢できずに畳み掛けると「ぶん殴るぞ」と凄まれた。

確かにこれほど執着しているのは変だ。別に付き合ってるわけでもないのに。
その事実にこれ以上強く出れないかもしれない、と元気が萎れてきた頃。
とうとう諦めたのか、隊長が話してくれた。

「親父だよ」

ぼそりと恥ずかしそうに明かされ、俺は目が点になる。

「隊長の、お父上ですか」
「ああ。俺が警衛団にいたのは知ってるだろ。親父もそこで働いていた。厳しくて頑固な人だったけど、父親の背中を見て騎士を目指したんだ」

思い出を振り返る隊長に、俺はすぐに引き込まれていった。

「何か悪いことをしたら、小さい頃から尻を叩かれてな。食卓に手をついて思いっきりやられる。他の兄弟が見てる前でもお構いなしだ」
「……そうだったんですか。ちなみにどんな悪いことしたんですか」
「別に、勝手に書斎の刀を触ろうとしたとか、真面目に稽古しなかったとか。ガキが考えそうなことだよ」

話によると成長してからもそれは続き、隠れて酒を飲んだり葉巻を吸ったりと、悪事が見つかる度に仕置きを受けたらしい。
良い家柄の子息なのに、隊長はわりとヤンチャだったようだ。

「その親父もずいぶん前に亡くなった。それでなんとなく、気力が落ちてな。王都からこっちの騎士団に席があるって話を受けて、移ってきたんだ」

視線を落とした男の哀愁を感じ取り、しんみりとした感情に包まれる。

「隊長、ものすごいファザコンだったんすね……教えてくれてありがとうございました。ようやくすっきり納得しました」
「……お前さ、ふざけてんの? 俺結構恥ずかしい事実を初めて他人に教えたんだけどな」

睨む目付きがもう怖くない。
胸がきゅんとなるような過去を知ってしまったからだ。

「他人なんて言わないでくださいよ。尻を預け、可愛がる秘密の仲でしょう」
「……ああそうかよ。お前も相当変わってるな。なんで引かねえんだよ」
「引きませんよ。俺もぶっちゃけ興奮してますから。あの、もうひとつだけ教えてくれません?」
「なんだよ」
「何歳ぐらいまでお父上にお尻を叩かれていたんですか?」
「お前もう帰れマジで」

それだけは知りたいと食い下がった俺が、奥の部屋に引っ込もうとする隊長を追いかけ逆に追い詰める。

あれよあれよと押し合い揉み合い、やがてベッドの上で隊長の上に覆い被さり、主導権を握った俺は、揺れる瞳を見下ろすことに成功した。

「……17だよ。叙任する前までだ。満足か?」

まだ尻を叩いてないのに涙目で恥ずかしそうにする隊長。
あ、ヤバイ。来た。何かが来た。

一瞬隊長を反転させ押し倒そうかとも思ったのだが、その大きな体で上に乗ってもらうことにした。
ここまで来たならば、気になる上司の家にまで上がり込んだのならば、尻を叩かずに帰るわけにいかない。

「なあワイルズ。なんで俺、お前に股がってケツを晒してんだろうな……?」
「恥ずかしがらないでください、コンラッド隊長。俺は全てを受け止めますよ。知ってますから、さっきお父さんのことを話してるときも、あなたがずっと俺に叩かれたいと思っていたことを」
「……うるせえ……っ」
    
罵りとは反対に、隊長のちんぽが頭をもたげてきている。
視線が釘付けになったが、シーツに横たわった俺はむぎゅっと両方の尻をつかんだ。

「くっ、ああッ……や、めろ、俺はホモじゃねえ……ッ」
「知ってます、俺もです、でも隊長は挿入しながらのスパンキングが好きなんでしょう? だったらこの体位でしましょうよ。すみませんが俺も挿れたいほうなので、ケツは貸せませんけど。さあ、存分に腰を振ってください!」
「出来るかッ」

隊長は顔を真っ赤にして固まってしまった。
仕方がないので俺は彼を自分の胸の上に引き倒し、背中をぎゅっと抱き締めた。
そうして下から擦り付けるように揺らし始める。

「……アッ……ああッ……なに、しやがっ……!」
「あー、やばいなこれ、俺も気持ちよくなってきちゃいます」

上に乗っているのは少し背が高いぐらいの、体重もさほど変わりない大きな男だ。
それなのに俺は下半身の高ぶりが隠せない。

「お前なにおっ勃ててんだよ変態野郎!」
「今からケツ叩かれて喜びに喘ぎだす変態に言われたくないです」

そう宣告した俺は下から突き上げながら、片手をパァン!と隊長の片尻に叩きつけた。

「ああぁあぁっ」

そして終わらせることなく、もう一発、もう何発と、パンパンお尻を叩き続ける。

「ひ、あああぁぁっ」

どこから出てるのか分からない隊長のハスキーな喘ぎ音。
肌が直接触れあっているからだろうか、反応が良すぎるため俺も期待に応えようと、最良の角度、打ち込み方を模索して精一杯振りおろす。

「んっ、んあっ、ああぁあっ」
「ああ隊長、そんな風にもう自分で腰揺らしちゃって、やらしいですねえ」
「あっ、あっ、やめろぉっ、ケツ、いてえよぉッ」
「痛いの好きでしょう? ほら激しくしてほしいんでしょう本当は、言ってくださいよねえ、強くしてって」

心の声を聞きながら煽っていくと、俺にしがみつく腕の力がこめられた。

「……あ、あぁあっ、強く、強くしてくれっ、頼む、ワイルズ……っ」

きゅうううんと苦しくなり目眩がしてくる。
そうだ。やばい、可愛い。とか思ってしまっている。

混乱を振り払うように、思いきり手のひらでバシイイイン!とした時だった。隊長が後ろにのけ反り、そり立ったちんぽが再び俺の前に現れる。

そしてなんと、びくっ、びくっと震えた後にぼたぼたと白濁液がこぼれ出した。
長い排出が行われる。思わず腰を止めて、見入ってしまった。

「すげえ……この角度で隊長の射精見たの初めてです俺」
「……お、前……ほんと、口閉じろいっぺん……ッ」

糸が切れたように倒れこむ隊長を受け止めた。

今日は一番激しくしたから、尻もきっと隊長の頬のように真っ赤になってるに違いない。

「可愛いっすね、隊長。初めて俺の腹の上で出しちゃいましたね」
「……ああ、そうだな。……嬉しそうだなワイルズ……」

全てをさらけ出し、認めざるを得なくなったのだろうか。素直である。
俺は隊長が顔を上げたのを見計らって、口を近づけた。しかしさすが機敏な上官だ、サッと逸らされてしまう。

「えっ? なんで避けるんすか? 信じられねえ、ムード考えろよ!」
「お前こそ考えろよ! なに流れでキスしようとしてんだ馬鹿じゃねえの!」
「……あのね、俺まだイッてないんですけど? 自分がイッたら終わりって、騎士のくせに卑怯じゃないですか? これほら、俺のちんぽどうしてくれるんですか、あんたのえっっろいイクとこ見てビンビンですよ。責任とってください」

隊長の手に無理矢理ちんぽを握らせた。
すると尻を叩いたときよりも阿鼻叫喚である。

結局あとから下手にでて一生懸命お願いしたら、「世話のかかる野郎だな!」と切れながら手で抜いてくれた。

「隊長。いつかお父上を越えられるように、俺頑張ります。だからこれからもお尻ともども、俺に任せてくださいね」
「んだよそれは……お前が興味あるのは俺のケツだけか?」
「いえ、違いますって。隊長のお尻だから興味あるんです!」
「……あっそ。勝手にすれば……」

体をシーツにくるみ背を向けて、先に眠ってしまった。
ぷりんと見えているお尻だけは、俺におやすみを言ってくれている気がした。

二人の関係を取り持ってくれたこの愛らしい存在には、きっと感謝の言葉をいくら捧げても足りないだろう。


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