短編集 | ナノ



旦那様は巨〇な庭師


代々伝わる商家に生まれた長男の俺は、留学という名の男漁りの旅から、つい最近帰ってきた。理由はこの目の前で激怒している父親に、あることを迫られているからである。

「男と結婚したいだと? ふざけるな、いい加減そのいかがわしい趣味を捨てろレメイン!」
「だから無理だっつってんだろ。俺の将来はこの家を継ぐってもう決まってんだ。自ら孫を産んでやるって言ってんだから、結婚相手ぐらい自由に決めさせてくれよ。なあ?」

ははん、と笑いながらソファの背に頭を埋め、立ち上がり睨み付けてくる親父に宣言する。傍らには幹部らと執事が佇む書斎室で、頑固な親子二人は一歩も引かない、かと思われた。

「……くっ、孫を質に取るとは卑怯ものめ。……仕方がない。万が一男でも許すとするならば、私が選んだ名家からの婿候補にさせてもらうぞ。いいか」
「良い訳ねえだろうが、そんなボンクラ共。俺にはな、これだけは譲れないっつう条件があんだよ親父」
「なんだ」
「すっげえ巨根。あとガチムチのマッチョマンね」

俺は至極真面目に述べたつもりなのだが、どうやら父親の怒髪天をついたらしい。「馬鹿者、もうお前なぞ出ていけ!!」と思ってもないことを吐き捨てられた。

地位も名誉もいらない、ある意味優しい条件だというのに、この古くさい頑固爺には分からないらしい。

ため息を吐いて立ち上がり、俺は一服しようとポケットからタバコを取り出した。おもむろに窓枠へと向かい、外の景色を眺める。
屋敷の三階からは緑が整えられた庭園が望める。しかしそこにいる人々に、俺の目が一瞬で奪われた。

「えっ? ちょ、親父! なんだよあのガチムチ集団は!」

興奮して窓にへばりつくと、呆れ顔の父親がすぐさま俺に蔑みの眼差しを向ける。

「ああ。彼らはうちの専属の庭師だ。真面目で仕事熱心な青年達だからな、汚らわしい目で見るんじゃない」

いやぁそんなの無理でしょう。ガタイの立派な男共が掛け声を発しながら石材や苗木などを運び、汗水たらして働いている。俺はよだれが止まらなくなった。
全部で10人ほどであるが、ダメだこんな遠くからじゃ詳しい生態が把握できない。

「おい、レメイン。最初に言っておくが彼は止めろよ。うちの屋敷を代々任せている、一門の頭領なのだ。まあ実直な男だから、お前のようなふしだらな輩には引っ掛からないと思うが」

無言で庭を凝視する俺を恐れてか、親父に釘を刺される。視線を追うと、とくに厳つい体つきの大男がその場を取り仕切っているようだった。

「はっ。おっさんじゃねえか、俺にも好みがあんだよ。さっ、若い子たち見てこよーっと。そうだ、その前にちょっと準備しねえとな」

ルンルン気分で書斎を飛び出し、俺はある策を携えて、屋敷の庭園へ向かうことにした。
面倒な結婚相手選びが始まると辟易としていたのに、とたんに光が差しこんだのである。




◇◇◇ 
(庭師視点)



全国に広大な敷地をもつドルフレン家の庭園造りに携わり、はや20年以上。ここ数年は引退した父に代わり、本家の造園を任されていた。
今日は旦那様のご子息が帰国されたというから、さらに仕事にも力が入る。

「頭領、だんだん形になってきましたね。この分ならば予定通り完成するでしょう」
「ああ、そうだな。旦那様には数ヵ月後に行われる大事な式典に、必ず間に合わせるように言われている。さらに気合いをいれるぞ」
「はい! ……あっ、頭領、あれは……向こうからご子息がやって来ますよ!」

部下の張った声に気を取られ、振り向いた。するとすらっとしたスーツ姿の、金髪の青年が歩いてくる。整った顔立ちに映える優雅な笑みに、その場の皆が立ち止まり空気がざわついた。

「あー、どうも皆さん。お疲れさまです。精が出ますね」
「……お坊っちゃん! お久しぶりです。お帰りなさいませ」

片手に紙袋を下げている彼にお辞儀をすると、ぽかんという顔をされた。しまった、少し馴れ馴れしかっただろうか。きっと私のことなど覚えてないはずだ。

彼がまだ小さかった頃、私はこの屋敷で働く父のもとで修行をしていた。ちょうど設営を行っていた裏庭の造園が完成間近になった頃、しばらく前に亡くなった母君のために、お坊っちゃんが突然「母の好きなひまわり畑が欲しい」と言い張ったのだった。

先代と繋がりが強く頑固な私の父は、まとまりが無くなると言い異を唱えたのだが、私はその願いに賛同し一人でひまわり畑を作った。彼は大いに喜んでくれ、「ありがとうおじさん」と可愛らしい笑顔を見せてくれた。

「ああ、こんなにお美しく成長されて……」
「えっ?」
「……い、いえ、なんでもありません」

やはり昔のことだ。忘れていてもなんら不思議ではない。

「ところで頭領、差し入れといってはなんだが、皆さんにちょっとした贈りものがあるんだ。少し時間をくれないか?」
「もちろんです。ありがとうございます、レメイン様」

暖かい心遣いに感謝をし、紙袋をごそごそする彼に礼を言う。しかしその品物にはしばし目を疑った。何枚もの男物の下着を手にしている。

「これは……一体」
「わが社が、というか俺が個人的に開発した高品質のボクサーパンツだ。ぴたっとしているのにまるで窮屈さがない。普段から下半身もよく動かす庭師の君達に、ぴったりだと思ってね」
「そうですか……確かに素晴らしいものに見えます。では後程皆に配っておきますのでーー」
「いや、今着替えてくれ。ああ、あそこの茂みがちょうどいいな」

彼の提案には驚いたものの、その熱心さからこれはきっと商品の試着も兼ねているのだと考えた。仕事に勤しむ者同士、感銘を受けた私は納得し部下達を集めた。

「皆、レメイン様からの贈り物だ! さっそく着替えてくれ!」
「「はい、ありがとうございます!」」

そして十数人の男達が樹木や植物の茂みに隠れ、作業服から屈強な裸体を晒し、ボクサーパンツに履き替える。夏の終わりで太陽に照らされる中、私も全裸になり着替えることにした。

腕組みをして待っているレメイン様の前に、一同が横並びになりその姿を見せる。
若くは10代から20代が中心の青年達を、彼は食い入るように見つめていた。

「素晴らしい……履き心地はどうかな?」と尋ねながら、たまに脇腹に手を伸ばし男達をどきまぎさせていた。一番端に立った私も例外ではない。目映い金髪に白い肌、伏せられた長い睫毛に金色の瞳が上目使いで見つめてきて、背筋がピンと張る。

「……えっ……うそ。あんた、どうなってんだこれ……」

私の目の前に来たレメイン様の動きが止まった。日に焼けた腹筋から股間に視線を落とし、凝視されている。
同じ男といえど、このような美貌の持ち主から熱視線を浴び、喉がごくりと鳴った。

「あの、失礼しました、あまり……見られると恥ずかしいのですが」

40過ぎの男が言う台詞ではないと思うが、私は率直に下着の上から分かるほどの逸物の大きさを恥じていた。
自らに落ち度はないのだが、浴場などで裸になる機会があると、こうして好奇な視線を浴びることが多々ある。

「あんた、名前はなんというんだ」
「ヴァルトです。レメイン様」
「その、様っていうのくすぐったいから止めてくれ。なあヴァルト、あんたに頼みがある。どうか聞いてくれないだろうか……?」

どこかせつなげな眼差しに鼓動が脈打つ。美しく成長はされたが、あの幼かった頃と同じ瞳だ。密かに心にあった主人から命じられれば、私に拒否する思いはない。

「はい。私でよければなんなりと、お申し付けください。ーーレメイン」

再び顔を上げたときには、私はすでに彼の笑顔のとりこになっていた。



◇◇◇



俺は庭師の頭領ヴァルトを夕食後、自室に呼び出した。仕事を終えた彼らは、期間中は敷地内にある宿舎に泊まることも出来る。
同じく滞在しているこの男に俺は、当初の予定とは異なり、真っ先に目をつけたのである。

「あ、あの、どうされたのですか、いきなり」

部屋に呼びつけるなり、彼を書斎机の端に押し付けていた。短い黒髪と同色の濃い瞳が、戸惑いの色を映す。
俺より15センチ以上も背が高く、造園業で鍛えられた屈強な体つきは、目の前で見るとよりいっそう凄みがあった。
一回り以上年上だという年齢をまるで感じさせないほど、雄々しいガタイである。

「あんたに頼みがあるって言っただろ? もう単刀直入に言うわ、すまん脱いでくれ。全部な」

話すことはまだたくさんあるため、時間が惜しい。血走った目から事態の重さを感じ取ったのだろうか、彼は親父が言っていたように真面目で義理固い男のようだ。
動揺しながらも、俺の前で一糸まとわぬ姿になってくれた。

「すみません、レメイン。これも仕事に関することなのですか?」
「いいや、違う。これは個人的な案件だ……」

冷静に話そうと努めるが声が震える。このおっさんの下半身に鎮座するそれは、国宝級のデカさだった。ほんとに、こんな大きいの見たことない。ずる剥けで、まっすぐ美しく、太くてすげえ長くて、亀頭も大きく絶対気持ち良さそう。

「あっ、あぁああぁ」

想像しただけで腰が砕けそうになってしまい、変な声が出た。
ヴァルトがとっさに俺の背に腕を回し、心配そうに見下ろしてくる。

「大丈夫ですか。どうしたのです。……やっぱり、引かれましたか。すみません、こんなものを見せてしまい……」
「頼む俺と結婚してくれ」
「え?」

今しかないと俺は彼の両腕を掴み、稀に見る真剣さでプロポーズを行った。
ヴァルトは予想通り目を見開き動かなくなった。しかし冗談だと思われたくない俺は迫る。

「あんたじゃないと駄目なんだ。これこそ俺の理想のちんぽーーいや鋼の肉体だ。頼む何でも言うことを聞くからーー」
「お、落ち着いてくださいレメイン」

自慢ではないが俺は外見もよく金もあるため、物凄くモテる。だから男に言い寄ったことなどない。向こうから掃き捨てるほどやってくるからだ。
しかしその中にこんな上物はいないし、一生出会えないと思う。そう、もうこれは運命であり、俺の初めての一目惚れでもあった。

未来の旦那になるかもしれない男だ、事情を包み隠さず話す。本気で婿を探していること、結婚をしても自由に仕事を続けられるし、ありとあらゆる援助もすること。

「そんな事情だったのですか……いや、私は特別な援助など必要ありませんよ。今まで通りこの屋敷で仕事が出来れば」

彼は明らかに戸惑っていた。同性に対する嫌悪は見られなかったが、やはり物欲で動く男ではなさそうだ。
こうなりゃ色仕掛けでなんとかするしかない、そう考えた。

「……あっ、なにを!」
「なにって、あんたの考えをちょっとでも変えたいんだよ。なあ、俺に触らせてくれる?」

相手は裸の男だ。まず俺の滑らかな手でおっきなぺニスを押しつけるように撫でる。そのあと包み込むように握り、手首をしならせ上下に擦り上げた。

「あ、ああ、レメイン様」
「呼び捨てにしろってば、俺のほうがすげー年下なんだから」
「……っ、そうですよ、私はあなたより一回り以上も上です、だからこんなこと、させてはだめなんです」

息が上がる男の瞳が揺れ動く。でもちんぽはどこよりも正直で、手からはみでながらビンビンだ。
俺はひざまずいて彼の開いた足の間から見上げた。もう完全に勃起している。

「マジですげえ……勃起したらさらにでかくなったぞ、俺の口に入んねえかも」

そう言いつつ頑張って頬張る。この肉厚な質量、口の中を埋めつくす雄の匂い。
唾液を絡ませ吸いついてしゃぶると、どんどん成長していく。

「くっ、ああっ、そんな風にくわえたら、い、イってしまいます、あぁっ!」

彼がそう叫ぶと同時に、口内にどろりとした精液が発射された。溜まっていたのだろうか、長く大量の射精だ。
しゃがんでいた後ろの尻がうずく。もう勝手に濡れてきそうだった。

「申し訳ありません。あなたの口が、汚れてしまった……なんてことを」

お掃除フェラをしてる間も、荒い息を漏らしながら俺の心配をしている。変なおっさんだ。

「おい。あんたを襲ったのは俺だぞ? 怒んないのか? ほら、服着ていいぞ。風邪引くから」

おずおずと恥ずかしそうに着替える男を舐めるように眺めながら、俺は大変なことを思いだした。

「あっ! やべえ、聞くの忘れてたッ」
「な、なんですか」
「ヴァルト、あんた独身だよな。子供は? 恋人はいないか?」

今さらだが半分謝りながら問う。指輪がないから独り身だとは思ったのだが。
彼は控えめに微笑み、頭を振った。

「いいえ、結婚はしてませんし、子供もいません。仕事一筋でしたから。それに、問題もあったので…」

言葉に詰まる彼に問いただすと、思わぬことが判明した。問題というのは、何を隠そうこの大きなちんぽのことだったのだ。
彼の話によれば、付き合った相手にはこの巨大さにいつも泣かれてしまい、問題なく双方満足にセックス出来たことがないのだという。

「情けない話ですが、そういうわけでいつも長続きせず……もう、諦めていたんですよ」
「……そうだったのか。もったいないな、こんな素晴らしいちんぽ持ってんのに…」

巨根すぎても大きな悩みになると知り、せつなくなる。
しかし一方で、俺の中ではメラメラと決意が燃え始めていた。

「よし、俺ならあんたを受け入れてみせる。だからもしあんたが満足出来たら、結婚のこと、考えてくれないか?」

ヴァルトの精悍な顔つきが、赤く染まっていく。さりげなく彼の太ももに自身の高ぶりを押しつけてみるが、後で抜くから大丈夫だ。

「レメイン、私の話を聞いていましたか。あなたを傷つけたくありません。だから……」
「平気だよ。……俺のこと、そういう目で見れない…ってわけじゃないんだろ?」

体を寄せて尋ねると、彼の瞳が揺れ動いた。
これは、長年の経験で感じる。脈ありのサインだ。

「見てしまうので、困ってるんですよ」

彼はまたやや恥ずかしそうに、そう呟いたのだった。



◇◇◇



さっそく俺は翌日から準備を始めた。ヴァルトの逸物を受け入れるため、拡張をするのだ。
といっても大袈裟なものではなく、指やサイズ違いのディルドを使い、次第に大きいものを選んでいくという基礎訓練が主である。

普段はそんな手間をかけない俺だったが、自分で決めたことだからやる気がでる。
庭で作業をするヴァルトと距離を縮めるため毎日話しかけ、ついでにその努力の話もした。

「えっ? やめてください、レメイン。そんなこと、一人でしてはいけませんよ」

この男、年上だからだろうか。何かと俺に禁止をしてくる。
お前のデカチンのためにやってるのになぜ駄目なんだと聞き返すと、意外な言葉が返された。

「なぜって、私のを入れるのならば、それは二人の共同作業でしょう。一緒に頑張らなければ、ね?」

手拭いで汗をぬぐう男に微笑まれ、柄にもなく俺も汗が出てきた。
前戯をそんな風に捉える男など周りにはいなかったし、やはりこのおっさんは少しおかしい。



その夜、ヴァルトは初めて俺の寝室にやってきた。もうこの時点で、彼にはもしや俺と結婚する心積もりがあるのかと期待した。
薄暗い天蓋つきのカーテンで俺は、ムキムキの男の真下で両足を広げて恥ずかしいところを直視されている。

しかし奴は見た目だけでなく肝が据わっている。俺のローションで濡れた尻に躊躇なく指を入れ、探ってくれていた。

「なあ、ほんとにあんた男初めてなのか?」
「はい。初めてですよ。何か不手際がありましたか」
「……いや、ないけど。つうか、大丈夫? 萎えてねえか、俺の体とか」

彼の視線がシーツに寝そべる俺の上半身をさまよい、赤くなった目元で瞳を伏せる。
妙な沈黙が流れて余計に気になった。

「萎えてませんよ、ほら。……レメイン、あなたはすごく綺麗です。……ここも気持ち良さそうで、私はずっとドキドキしてるんですよ」

言いながら骨張ったぶっとい指で中を広げ、探る。数本に増えたそれに、俺は淫らな悲鳴を上げて思わずのけぞった。

「んぁあぁっ」
「すみません、大丈夫ですか」
「…ひうぅ……も、もう、いいから入れてよ、ちんぽっ」

こんなに丁寧にほぐされたのは初めてで、俺も欲しくてたまらなくなっていた。腰を揺らして懇願すると彼はまた顔を赤らめる。そしてようやく先っぽをあてがったのだった。

「あああぁっ」
「…ぐっ……きついです、レメイン、」

ぐりぐり入ってくる未知のぺニスの恐ろしさ。初めての異物のサイズに怯えているのか、俺の尻もきゅうっと締めたままだ。
しかしそれはまだほんの序の口だった。

「はあ、はあ、やべ、あんたの太すぎ、待って、ちょっと休憩させろ」
「は、はい。……あの、その間キスしてもいいですか?」
「……あ?」

俺の上半身に胸板を押し付け、丁寧に唇に触れたあと、舌をねじこまれる。
てっきりヘタレなおっさんなのかと思っていたら、突如見せた積極性に面食らった。

「んっんむぅっ、ふぁっ、ちょっ」

けして細すぎず小さくもない自分の体をすっぽり覆うほどの、大柄なガチムチに抱き締められ、唇を貪られた。息が出来ず、ちゅくちゅくと舌をなぶられ、密着したケツとちんぽが滑り合い卑猥な水音が響きはじめる。

「あっあっどうしたいきなり! んああ! 入ってくるぅ!」
「申し訳ありません、レメイン、久しぶりすぎて、それにあなたが可愛らしすぎて、耐えられなくなりました…ッ」

先ほどまでの気遣いはどこへやら、ちんぽはメリメリ俺の中に行進する。きついし埋まってるしまだ全部も入ってない。しかし俺の頭の中はめくるめく快感がズバアァっと広がってきていた。

「やっ…あっ…だ、だめだっ……ヴァルト、なんか変、…変だぁっっ」
「レメイン、目が、ハートになってきてます、ああ、気持ちよく、なってきましたか? 可愛い、可愛いです!」

おっさんが何やら口走りながら腰をぐわんぐわん揺らす。背中を逞しい腕に抱き締められ、ベッドが大きく弾み出す。

「やっ、やぁっ…ちんぽっ…んあぁっ…きもち、いっ」

信じられないことにせまい肉壁を擦り上げてくるこのデカブツに俺は翻弄され始めていた。


そして二十分後。
俺は完全に男に良いようにされ、快楽の海に陥落していた。硬い腹に押されて何度も射精した自身以上に、とろとろに蕩けた中が感じまくっていた。

「なあなあいいだろ? 俺と結婚して、俺もう無理っ、あんたのちんぽじゃないと絶対無理ぃっ」
「くっ、あ、こんな、入ってるときに、お願いしてくるなんて、ずるいですよ、レメイン!」
「だって好き、あんたが好きなんだ、全部好きっ」

半開きの口をまた無我夢中で吸われ、もうぺニスは完全に俺のものになっている。ずちゅずちゅと奥を行ったり来たりして、中を暴れん坊にかき回す。

「イク、イク、イクっ」

何度もびくびくしてデカチンポにイカされる度に大きな体にしがみついた。その都度ヴァルトは俺をぐっと抱き抱え、「ああっ私のでイってくださるとは…ッ」と喜び混じりに叫ばれ、得たいの知れぬ充足感に包まれてまた達する。

そして終わりのない絶頂はこの男の下半身にも着実に影響を与えていた。

「あああ、出てしまいます、どうすれば、まだ結婚前なのに!」
「いいよ、いいから出して、早くあんたの精子いっぱい出してえっ」

俺はこんな風に自ら男にねだったことなどない。しかしこの男の雄パワーの前では全てひれ伏してもいいという気がしてくる。理性は完全にふっ飛び、もうこのおっさんのことで頭が満たされまくっていた。

「あ、あ、出しますよ、レメイン、あなたの中に、で、出るっ、……ぐっ、うぅうッ!」

盛大に精が解き放たれる。ガチガチの巨根が大きくうねり全てを出し終えるまでビクビクと脈打つ様に、俺の中はだらしなく何度もひくつきまた達したのだった。

「…んぁ…はぁ……あぁぁ……」
「……レメイン……」

力が抜けて上に覆い被さってきた男が、息を荒げたままじっと離れない。
ああ、今の一発だけで、この満たされよう。全身の器官を使いきって、快楽も搾り取られた感覚がする。

彼は顔を上げた。俺はもう一度キスをされると思い身を乗り出そうとする。
気づいたヴァルトは俺の後頭部に手を添え、また熱い口づけを与えてくる。

「あの、本当に私で、いいんですか」
「……ああ。あんただって、もう俺以外、無理じゃないか」
「はい……もう無理です、私を受け入れてくださるのは、あなた以外にいない…!」

言ったそばから唇をふさぎ、息をつく間も与えぬほど舌をからませる。しばらく俺はだらんとされるがままだった。

なんなんだこのおっさん、普段と全然態度が違う。セックスの時はものすごいねっとり離さない系なのだろうか。この年代だからか、それとも単なる性格か。

「はあ。もうあんたのちんぽ凄すぎ。今の一発で孕みそう、俺」

入ったまんまで微笑むと、彼は赤面して固まり、ついでに大きなちんぽも質量を取り戻した。

「お願いです、これから一緒になってくださるなら、もう少し婉曲的な言い方をしてくれませんか。その、すぐ反応してしまうので」
「……ええっ? ちょ、ま、待て、何あんた、また腰入れようとしてきてんだっ」
「すみません、もう一度お願いします、あなたと繋がっていると、抑えがきかないんです…ッ」




そうして俺達はその一夜を境に、晴れて婚約者同士となった。
明くる日、どうしても挨拶をしたいというヴァルトは責任を取るという面持ちで、俺の親父に頭を下げた。

親父は予想通り開いた口が塞がらないようだったが、二人の説得と真摯な思いが伝わったのか、結局結婚は許されることとなる。彼の身元がこれ以上ないほどしっかりしてることと、その実直さを知っていることから、諦めてくれたらしい。

ちなみに庭師の頭領であるヴァルトが現在一任されている庭園作りが、実は俺の結婚式のためだったと知り、大いに驚かされた。いつもなら余計なことを、と親父に文句も言いたくなるが、最適なパートナーを見つけた今、俺もまんざらではない。

俺と彼はというと、その日からほぼ毎晩寝室で睦みあった。働き盛りの壮年の男は、若い俺を疲弊させるほどの絶倫ぶりだった。

何発もしてるからマジで孕んだかもしれない。予感させるほど、彼の肉体も愛情表現も激しくぶつかり合ってきた。そう訴えるとヴァルトは照れた顔で俺にキスをして抱きしめた。

ベッドの上で二人、ピロートークをしている時のことだ。

「なあ、俺たち体の相性は抜群だけどさ。ちょっと心配があって。あんた、ほんとに俺でいいの? 俺のこと、好きになれる?」
「大丈夫ですよ。あの、もうかなり好きです。抱いているときに、伝わってませんでしたか?」

苦笑されて隣で髪を撫でられた。自分も男なのに、大柄な体に寄り添われ優しい目つきを向けられると、どきっとする。

「私は昔、あなたに会っているんです。ひまわり畑のこと、覚えていませんか」

突然飛び出した言葉に頭を巡らせる。
確かに俺が四才ぐらいの頃、母がいない心細さから、わがままを言って裏庭に作ってもらったことがあった。

「え! まさかあんたがあの時のおっさんだったのか!」
「はい。まあ一応まだ10代だったんですが。あなたから見たら遥かに大人でしたね」

微笑ましく見つめる表情がこそばゆい。あの時のやたら一生懸命な庭師の男と、結婚しようとしていたとは。
彼の中でもその思い出は大事に刻まれているようだった。

「ふうん。じゃあちょっとがっかりしたんじゃねえか、可愛かった少年が今やちんぽちんぽ言ってて」

冗談まじりに笑うとヴァルトも苦笑した。

「驚きはしましたが、がっかりはしてません。あなたはずっと可愛いままですよ、レメイン」
「……ヴァルト。あんたさ、硬派な肉体に似合わず結構べたべたなこと言ってくるんだな」
「そう、ですかね。嫌でしたか?」
「いいや。嫌じゃないけど。まああんたなら許せるな。……俺の旦那になる男だし」

あれだけしつこく求婚しておきながら、たった今自分で言った台詞が恥ずかしくなった。
しかし体も器もちんぽも破格級のこの男は、早くも幸せそうな笑みを広げ、俺の耳元で「ありがとうございます」と囁いたのだった。


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