俺の呪いをといてくれ | ナノ


▼ 91 俺がしてやる ※ -家族編6-

実家に帰って二日目の午後。昼に訪れていた祖母が去り、家族揃っての団欒も一旦終了となった頃。
俺は、台所でマリアと一緒に夕食の下準備をしている母に話しかけた。

「ねえお母さん、俺風呂入りたいんだけど、三階の浴室って使えんの?」

昨夜は深夜を過ぎてからの帰宅となり、疲れてそのまま泥のように眠ってしまった。その上今日は昼近くまで寝ていたせいで、汗が気になり早く体を洗い流したくて仕方なかった。

「えっ使えると思うわよ、ねえマリア」
「はい。いつでもお入りになれますよ。三階のほうが新しいので浴室も広々としてますし」
「そっか。良かった〜じゃ入ってくるわ」

二人の話を聞いてほっとした。俺の子供部屋が無残にもテラスへと変わってしまった為、昨日から三階の空き部屋に寝泊まりしているのだ。一階にも風呂はあるが、そこまで行くのは面倒くさい。

部屋へ戻り着替えを準備して、長い廊下を歩き風呂へと向かう。浴室に入り湯を溜めながら思い出した。別荘のシャワー室でしてしまった弟との情事のことを。

(俺はまた、欲求不満みたいになっている……)

あいつは今、親父と兄シグリットと共に道場で剣の稽古をしている。騎士同士久々の立ち合いでもしてるんだろうが、休みの日までご苦労なことだ。昨日だって遠出してたのに、相当体力が有り余ってるらしい。

でもクレッドとはずっと一緒にいるのに、やはり二人きりになれるチャンスは少ない。実家だと尚更か……ぼんやりと考えつつ体を洗い湯に浸かった後、さっぱりして風呂場を出た。

脱衣所で濡れた体をタオルで拭いていく。ああ、やっぱり最近の俺はどこかおかしい。頭の中からあいつの存在が離れない。いっそのこと普段のように距離が離れていれば、これほど考えなくても済むんじゃないか。

「……兄貴、風呂入ってるのか? 俺も入るぞ」

そうだ。こんな風に扉の外から自分に都合の良い幻聴を聞くことだって、ないーー

今確かに弟の声がした。
俺が返事をする前に扉がガラっと開かれる。目の前には稽古着を着た弟が立っていた。稽古が激しかったのか首筋に薄っすらと汗が滲み、髪の襟足も少し濡れている。どこか色っぽいその姿に目を奪われるが、はっと我に返った。

おい俺まだ素っ裸なんですけど。廊下に誰かいたらどうすんだよ。文句を言いたいのだが口を開けたまま固まってしまう。

「なんでまたいきなり入ってくんだよ、お前っ」
「鍵かけないのが悪いんだろ。俺じゃなかったらどうするんだ」
「お前しかこんな事しないだろ!」

速攻扉を施錠して迫ってくる弟に、抵抗しようと胸に両手を当て押しのけるが、あっという間に体をきつく抱き締められる。

「兄貴、いい匂い……」
「バカっ離せって、もうッ」
「……俺、汗くさい? 風呂入るから」

体を離したかと思ったら、首筋に口を這わせてきた。舌の動きに全身にぞわりとした感覚が広がる。

「うぁっ、そ、そうじゃなくて……っ」
「本当に?」
「……本当だよっ、んあぁっ」

突然動きを止めて顔をじっと見つめられる。すでに欲情に満ちた瞳に、何か言わなければと急かされる。

「お、俺……お前の匂い結構、好きだから……汗とかも、全然……」

というかむしろ興奮する。って何を考えているんだ俺は変態か。しまったとばかりに俯くと、顎を手で優しく上向かせられた。

「そうなのか? 嬉しいな。俺も兄貴の匂い、大好きだ……」

うっとりとした顔で告げられ、思わず赤面してしまう。再び首筋に吸い付かれ、体を震わせながら、クレッドの首の後ろに触れた。金色の柔らかい髪に指を入り込ませ、優しく梳くように撫でる。
すると弟は「……ッ」と小さな声を漏らし、顔を上げた。瞳を潤ませて浅い息を吐いている。動きを妨げるつもりはなかったが、それよりもずっと頭の中を占めていることがあった。

「……クレッド……キス、したい」

小さい声で伝え、頬を撫でて弟の形の良い口元に視線を合わせる。さっきまで抵抗していたのに、二人きりになった途端欲望に忠実になってしまう。そんな自分に呆れるが、そうしたいのだからしょうがない。
開き直って近づこうとすると、クレッドの顔が迫ってきた。ぴたりと止まり、僅かに口を開く。

「俺も、ずっとしたかった。兄貴と……たくさん」

色っぽく囁いて、唇にちゅっとキスされた。それだけで終わるはずもなく、潜り込ませた舌を丹念に絡ませ、濃厚な口づけへと変化させる。砕けそうになる腰を腕にがっちりと掴まれると、その力強さが心地良くさえ感じた。

「んぅ……っ」

駄目だ。唇を合わせただけでこんなふうに、だらしなく体の力が抜けていく。はあはあと息継ぎをしても、またすぐに吸いつかれ口の中を弟の舌が動き回る。

クレッドの顔が徐々に下に降りてきた、上半身に口付けられ、唇がやらしく這っていく。そのまま奴は床に膝をつけた。続く動作を恐れた俺は必死に止めようと頭を抑えるのだが、弟は一瞬だけこっちを見やった後、躊躇なく俺の硬くなったモノを口に含んだ。

「あ、ああっなに、やめ、駄目だッ」

視覚的に卑猥過ぎる光景に目が眩む。弟が跪いて俺のを咥えながら口を動かしている。少し眉を寄せ悩ましげに目を伏せて、時折ちゅぷちゅぷと唾液が擦れる音を漏らす。腰が震え、立っているのもやっとなくらいに気持ちがいい。

こんなに近くでその様子を見たことはなく、羞恥を通り越して、どうやって声を抑えるかだけを必死になって考える。

「ん、んっっ……やだ、クレッド、止め……っ」

喘ぎなのか反論なのか分からない。全身で快感を受け止め、弟の卑猥な動きと音に犯されていく。
おもむろにクレッドが口を離した。濡れた蒼い瞳に見つめられると、自分自身の欲情が煽られるのを感じる。

「兄貴の、好きだ、美味しい……」

頭を真っ白にさせる台詞とともに妖艶な笑みを向け、再びそれを咥え込んだ。さっきよりもきつく吸い上げ、温かすぎる口内に翻弄される。

「はぁ……っだめ、んぁっ……もう、い、いく……あ、あぁッ」

本当に気持ちが良いと声なんて我慢できない。ここは実家の三階の風呂場で、誰が来るか分からないのに。
腰を痙攣させ口に吐き出してしまったものが、弟の男らしい喉仏をごくりと動かす。
こいつはいつも俺のを飲んでる。最初はあれほど嫌だったのに……今では妙な感情が湧き上がるのを無視できない。

ざわめく思考を振り払いながら、俺はクレッドの髪を撫でた。

「……はぁ、はぁ……っ、きもち、良かった……」

以前の自分なら恥ずかしいと思う言葉が自然と出る。弟はにこりと柔らかい笑みを浮かべた。邪気のない顔なのに、まだ隠しきれない色気が漂っている。
俺は息を整えつつ、立ち上がる弟に視線を合わせた。俺も、こいつの事を気持ち良くしたい。それは衝動的な思いだった。

弟の腰を掴み、体を迫らせた。服に手をかけて、ボタンを外そうとする。案の定、弟は少し体を強張らせた。瞬きを繰り返した後俺の動きを注視している。積極性を見せる俺に戸惑っているのかもしれない。

「……俺も、お前のこと……したい……」

言葉を濁したせいで不自然な台詞になってしまうが、クレッドはすぐに俺の意図を汲んだように見えた。けれど少し焦った顔を向けられる。

「あ、兄貴……嬉しい、けど先に……風呂、入ってもいい?」

顔をサッと赤らめ、珍しく目を泳がせている。俺は正直そんなこと気にならない、けど問題はそこじゃなく、あれ、こいつの様子とこの流れから口で……って思われていることに気が付いた。今更手でするつもりだったなんて言えない。
でもそうだよな、手でしても立ったままじゃ汚れて……頭でごちゃごちゃ考えるのを止めて、真剣にクレッドを見つめた。

「俺はこのままでも、全然いいぞ?」
「えっ……本当に、兄貴……でもちょっと俺、恥ずかしい……」

何故か堪えきれない風に目を逸らされた。こいつが恥ずかしいだと? 信じられない。途端に興奮が抑えられなくなってくる。

「分かった。一緒に入っていいか? 二回目だけど」

俺はもう自分の欲求に従うほかなかった。場所を考えればこんな事、正気の沙汰じゃない。でも止められないのだ。
尋ねると、答えを聞くより先に弟は真っ先に服を脱ぎ始めた。
手を引っ張られ、浴室に入る。温かなシャワーを出して全身を流した後、ぴたりと体をくっつけ抱き締められた。

ああ、やっぱり肌と肌が合わさると気持ちが良い。もう駄目だ。俺は頭のネジが飛んでしまったんだ。いや、これからする事のほうがもっとぶっ飛んでるかもしれない。

「クレッド、俺がお前の体、洗ってあげるから」

こんな台詞を言う日がくるとは。弟と一緒に風呂に入った時の、奴の口癖だぞ。
弟は完全に驚きと興奮の形相で俺を見下ろしていた。引かれてたらどうしよう。いや洗うだけでそんなことないよな。

「洗って、兄貴、全部……」

ぽつりと呟いた弟の許可を得て、石鹸で泡立てた手をクレッドの首筋に重ねた。耳の後ろを撫でただけで奴の肩がびくっと震える。やっぱり耳が弱いらしい。
太く長い男らしい首から肩に手を滑らせる。筋肉が張った腕と胸板も、泡を塗りつけて入念に洗う。

「……ッ」
「洗われるの好きなのか? どんな感じだ?」

俺は自分がする場合はわりと色々尋ねてしまう方なのかもしれない。普段の立場とは逆に、恥ずかしそうにしている弟が可愛く思える。

「……好きだ。すごく気持ちが良い……我慢、できなくなる……。兄貴に……されてるから」

色めいた声が浴室に響く。そんな事を照れた様子で言われたら、俺の方こそ抑えが効かなくなりそうだ。
動揺から止まってしまった手を取られ、がばっと抱きしめられる。肌の間の泡が滑り、密着した体に熱をまとわせる。
自然と腰がぴたりと重なり、ぬるついた刺激に耐えるつもりが、また弟にキスをされてしまった。

「ん、んう……っふ……」

くちゅくちゅと口の中を舌が出し入れされる。唇の表面を舌先で舐め取られ、また強引に中に割り込んでくる。下腹部に快感が集まるのを感じ、体を離そうとした。

「んぁあっ……まって、まだ……お前の体、途中だ……」
「……そうだな、じゃあもっと……して」

同じく興奮状態の弟からやっと口を解放され、冷めやらぬ刺激で頭がチカチカする中、また泡を滑らせた。
上半身を洗い終わり、太ももから足に移動する。見れば見るほど整った体つきだ。硬く美しく割れた腹筋の線に、泡と水が流れ落ち、さらに扇情的に映る。

俺は弟の胸についた泡を指で拭うと、断りもせずそこへ舌を這わせた。ちゅくちゅくと吸い付いて舐め始める。何度も繰り返すと、段々と弟の濡れた喘ぎが漏れてきた。

「……ぅあッ、兄貴……っ」

引き締まったウエスト部分を掴み、舌先で上半身を責め続けていると、長い腕が俺の背中に伸びてきた。大きな手で優しく撫でられ、気持ち良さと弟の優しさを感じ取る。

二人の浅い息遣いが響く中、顔を上げると一瞬クレッドと目が合った。そろそろと泡のついた手を勃ち上がった性器に伸ばす。優しく握り、上下に指を滑らせる。お風呂でこんな事、したことない。弟のを握るのもあまりないことだ。

「……お前の、もう硬いな……」

いつも自分が受け入れているモノを、こんなふうに手で触れるのは新鮮な感じがする。でも俺もこいつの事を気持ちよくしたい。もっと自分から触れたい。そんな思いで丁寧に愛撫を続けた。

「……はぁ、ッあぁ、あに、き……っ」
「気持ちいい? クレッド……」

視線を合わせると、弟が小さな声を出して頷いた。一方的に快感を与え、普段は見られない弟の姿に興奮が増していく。緩急をつけて擦り上げると、クレッドの表情が色めき出し更に淫らな声を上げさせる。
こいつ、やばい、可愛いーー俺の中から新たな感情が生まれ出ていく感覚がした。

「兄貴、駄目だ、あんまり……速く……しないで」
「どうして?」
「……っ……ま、だ……イキたくない……」

驚いて顔を上げると、はぁはぁ荒く息づく弟に頬を撫でられた。そっと口付けされて見つめられ、急速に鼓動が速まる。

「だって、気持ちいいから……もっと……ゆっくり、して」

そんな事をお願いされるとは。一瞬立ち眩みがしそうになったのを堪え、言われた通りゆっくりと動かした。弟のは俺のより太くて長い。体格や手の大きさも差があるし、正直扱くのも一苦労だ。でも自分の手の中にあるとなんだか愛しく思えてくる。
俺は変態になってしまったのだろうか。いや、好きな相手ならおかしい事ではないよな……そう無理やり納得させる。

「……っは、んぁ……っ」

弟の甘やかな声が溢れ出る。ああ、可愛いな……。そう思いながら愛撫を続けていると、クレッドの腰がぴくぴくと反応しだした。もうすぐ達しそうなのかもしれない。気になって顔を近づける。

「もうイキそう? ……口で、する?」

有り得ない言葉が自然と出てしまった。自分から攻めていると感覚が麻痺してくる。これが反対の立場だったら「口でして」なんてたぶん絶対言えない。
弟は悩まし気な表情を浮かべながら、こくりと頷いた。

俺はこの間の媚薬を使った兄弟の実験の際、弟に言いくるめられて初めて奴のを口に咥えた。あの時は羞恥に悶える中一心不乱に口の中を動かした。
でも今は自分からそれをもう一度やろうとしている。俺は欲求不満が募り、淫乱になってしまったのだろうか? こいつは本当はどう思ってるんだろう?

「兄貴、早く、して」

はぁはぁ言いながら痺れを切らした様子の弟に促され、慌てて跪く。さっきはイキたくないとか言ってたくせに気が変わったのか。でも俺の行動に引いてるわけじゃないようだ。
少しほっとしつつ、クレッドの性器をまじまじと見つめた。一応泡を流してから、恐る恐る舌を触れされる。

二回目だからか前よりも余裕を持って臨めそうだ。指を軽く上下させて先の部分を口の中に含んだ。やっぱでかい。ゆっくりとしゃぶりながら中で舌をレロレロと動かす。
一気に咥えないで繰り返してると、弟の淫らな喘ぎが浴室中に響いた。

「ん……ッあ、……それ、気持ち、いい」

時折口を外し、顎を休めながら指の動きも忘れずにゆっくりと擦り続ける。
弟の様子を確認すると、艶めかしい表情で俺を見ていた。恥ずかしさを抑え、もう一度口に咥えて今度は奥まで飲み込もうとした。濡れて滑りやすい床に膝をついたまま、顔を前後に動かすのは中々難しい。

「っむ、……んぐっ、んぅ」

頭に手を添えられ、まだ濡れた髪を優しく撫でられる。その感触がびりりと全身の肌に伝わり、意図せず更に口の動きを激しくしてしまう。

「まって、兄貴、もっと、ゆっくりがいい……!」

クレッドが腰をビクビク震わせながら、俺の頭を強めに抑えてきた。

「ああ、まだ、イキたく……ない、いやだ……ッ」

嫌だ? そう言われた瞬間胸の奥底からざわりとした感情が沸き起こった。普段こいつが俺の抵抗に対し興奮している理由がわかった気がする。

「っあ、兄貴の舌……、口も、全部気持ちいい、ああッ」

弟が卑猥な言葉を吐きながら、俺の攻勢によって乱れに乱れている。これはベットの上でも良かったかもしれない。一瞬そう思ったが一生懸命口での奉仕を続けた。

「はむっ、ん、んくっ、んぐ」

唾液をたっぷり絡ませベタベタになった性器に休むことなく吸いつく。ぎりぎりまで引き抜き再び咥え込んだ時にちゅぷっちゅぷっとやらしい音が響き渡り、余計に羞恥を募らせていくが口の動きを止められない。

「あ、あ、もう無理だ兄貴……俺もう、出す、ぞ……!」

頭を両手でがっしり抑えられ、俺も最後とばかりに勢いを強める。するとクレッドの腰が大きく揺れて痙攣した。掠れた喘ぎを漏らし、同時に俺の口内に精液が吐き出される。その量にまた驚き、苦しさから自然と目尻が濡れる。
口から性器を離し、我慢して全部飲み込むと、荒い息づかいが頭上から降ってきた。

「……あぁ……はぁ、はぁ、はぁ……」

力なく息を整える弟が、信じられないことに一瞬腰をビクつかせ、後ろにふらっと一歩下がった。俺は立ち上がり支えるように奴の背中に手を回した。けれど非力な自分が抱えられるはずもなく、いつの間にかしっかりと立っているクレッドの両手に逆に抱きかかえられた。

「……大丈夫か? お前……」

ぴたりと抱き合いながら尋ねると、まだ頬を赤く染め上げた弟が首を横に振った。

「全然大丈夫じゃない、兄貴の……気持ち良すぎて」

色っぽく囁かれ、どう反応していいか分からず、黙ったままぎゅっと抱きついた。自分から始めたくせに、行為を終えた途端計り知れないほどの羞恥が襲ってくる。すると回されたクレッドの腕が、背中を優しく撫でてきた。

「ああ、もう……駄目だ。俺、もっと兄貴が欲しい。……夜、いっぱいしよう?」

熱に浮かれたような声色で、顔をじっと見つめられる。だってここは俺達の家で、すでに後先考えず風呂場でこんなことをしてしまい、それだけでもあれなのにーー
心臓がトクトクと脈を刻む中、俺は再び理性を飛ばして、小さく頷いてしまった。



prev / list / next

back to top



×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -