俺の呪いをといてくれ | ナノ


▼ 7 暴走する男たち

だからって、これはいささか性急すぎやしないか?
クレッドに半ば強引に押し込められた空き部屋で、俺は過去最高の異常事態に陥っていた。

「あ、兄貴っ……頼む、もういいだろ……ッ」
「うあっやめろ、押し倒してくんなぁっ」

簡素な部屋の真ん中にあるベッドも、決してこのクソ弟に組み敷かれる為にあるのではない。このままじゃまずい。何としてでもケツだけは死守しなければと考えに考えた結果、俺がこの盛った弟の上に跨ってやったらどうなるんだろうという思考に至った。ちょっとした発想の転換ともいえよう。

「待て、待て! 分かった、お前が下になれ」
「はっ……? 何言ってるんだ……」
「いいからお兄さんの言うことを聞けッ」

ヤケクソで寒い言葉を吐き相手の隙をついたところで、上手いこと俺が馬乗りになる。ふふ、びっくりした顔で俺を見上げているクレッドの困惑が見て取れるようだ。俺はなぁすでに学んでいるんだよ、こいつに対してはむしろこっちから迫ったほうがより効果的なのだと。俺の下でほら羞恥に震えるがいいさ!

「兄貴、何も履いてないだろう……いいのか……?」
「へ?」

小声でためらいがちに言われクレッドの目を見る。頬から目元までほんのり火照った表情で見つめられ、はぁはぁと浅い息づかいが生々しい。あ、やべえこの選択間違いだった。俺この下裸同然だし確かにこいつの言うとおり直に肌(というかケツ)に奴の股間付近が触れてしまっている……ッ!

「う、ぁ……っ、あ、兄貴」

興奮状態の弟に腰をガシッと掴まれ、下から股間をぐっと押し付けられる。ひいいいい当たってる、当たってるぞ! 馬鹿か俺は何故こんな自ら罠に嵌まるようなことをしてしまったんだと激しく後悔するがもう遅い。

「ちょ、や、めろ……ま、待って……!」
「無理だ、待てない……ッ」

両手で下半身の動きを封じられたままグリグリと擦りつけてくる。てめえ完全に勃ってんじゃねえかとパニックに陥りながらも必死に身をよじり抵抗しようとすると、逃さないと言わんばかりにクレッドが即座に上体を起こしてきた。

目の前まで奴の顔が近づき片腕が俺の背中に回される。は? 何しちゃってんだこいつ……目を見開いたまま固まると、よりいっそう体を密着させてきた。嘘嘘嘘、これ対面座位だからね? フザケてやるもんじゃないからねこんな体勢。

「な、兄貴……練習しようか……?」

今度は何言い出すんだよーー思考が停止する俺の前で口元を少し吊り上げたかと思うと、容赦なく下から自分の腰を突き上げてきた。

「ううああぁあヤメロ馬鹿この変態ッ!!」

思わず正直な心の声を全面に吐き出す。だが奴の卑猥な動きは止まらない、見せつけオナニーの次は疑似セックスか? ふざけんじゃねえぞこの野郎俺はお前と違って下半分裸なんだぞーーそう思っているとクレッドは俺の腰を少し引き剥がし、自分のモノを慣れた手つきで取り出そうとする。……うっ、まじ無理もうヤメてくれ他のことなら何でもするから神様お願い。

「兄貴のも勃ってるぞ……」

必死に祈りを捧げていた俺にこいつはとんでもない事を言いやがった。俺のが、勃っているだと……?
嘘だッ! んなはずねえ! 確かに揺さぶられる振動と摩擦に耐えている自覚はあったがまさかそんな、勃起なんてするはずが……。恐る恐る下腹部を見て愕然とした。
ねえなんでそんな反応するの? いつも言うことまぁまぁ聞いてくれてたじゃん酷いよ俺のチ○コ……この裏切り者!

「……はぁ、一緒に、してやる」
「……はっ?…………ちょ、待て、さわんなッ!」

ガウンの隙間から入り込む手が太ももに滑らされる。おいこんなことされて全身鳥肌たってんだけど俺。なんか近い、奴との距離が近すぎて、しかもほぼ抱き締められた形で密着したまま身動きが取れない。

長い指が俺のモノに触れもどかし気になぞられる。思わずビクリと仰け反ると俺の目線から少し下がったところにあるクレッドの顔が肩にそっと触れた。
背中からガウンをついと引っ張られ、はだけた肩に柔らかい唇が添えられる。わずかに開いた口から見えた舌先でいやらしくひと舐めされ、そのまま吸い付かーーちょっと何してんのおおおお! 

「んんッああぁやめろぉッ」

変な声を出しながら両手で押し返そうとするが、がっちり固められた腕の中から抜け出すことが出来ない。
クレッドはかまわず手の中に収まった俺のアレをゆっくりとシゴき始めた。そして絶望と羞恥心の最中「ああぁんッ」などと喘いでしまう俺に向かって、またもやとんでもないことを言い出したのである。

「なあ、俺のも触ってくれ……」
「……ぅあっ、ふ、ざけんなぁ……」
「じゃあ…………入れていいか?」

その言葉に愕然としながら見た奴の目は、これ以上ないまでに真剣味を帯びていた。ーーそれだけはまずい。
一瞬真顔になった俺は全ての恥を捨て去り、ふるふると奴の股間に手を伸ばした。
息を飲んでそれを掴む。うあ、硬くなってる。直視するのを避け横目でちらと見ながら指で上下にシゴき始める。

「んっ、ああっ、あ、兄貴っ」

頼むそんな風に呼ぶのやめてくれ、もの凄いやりづらい。だが忘れていた、こいつも俺のモノを握っているのだということに。お互いに擦り合って、俺達は何をしているのだろう。頭の中では冷静に捉えようとするのだが、出てくる声は卑猥な喘ぎだ。

こいつ、人のをシゴくの上手いーー適度な強さで巧みに擦られてじわじわと快感が登りつめてくる。
屈辱的だが悲しい男の性なのか段々腰の力が抜けていくのを感じる。だが目の前には俺以上に乱れている奴がいた。

「あ、もう……ああっ、……イッ、……んあっ」

も、もうイクのか? 俺まだだぞ……こいつ結構早くねえか、いや俺が遅いのか? 押し寄せる快感の中、頭の隅でそんなことを考えていると、突然背中に回されていた手に力が入り、そのままゆっくりベッドへと押し倒された。

急な体勢の変更に俺は手を止めて唖然としたまま、じわりと汗が滲んだ赤ら顔のクレッドと目が合う。潤んだ蒼い瞳の視線が突き刺さり、思わずゴクリと喉を鳴らす。
俺などよりよほど扇情的なその姿に魅入っていると、奴はいきなり服を脱ぎ始めた。いやいやいや、なになになにちょっとーーベッドの下にシャツが投げ捨てられ、真剣な表情で俺を見下ろしてくる。

奴の顔が近づけられ、鼻先が俺の頬に触れたかと思うと首筋を舐められた。ガウンを更にはだけさせられ、そのまま吸い付いてくる舌が徐々に下へと移動し、あろうことか乳首の先を舐め取られる。「んううっ」と女々しい声を漏らし体を震わすと、さらにしつこくそこばかり攻めてきやがった。
はあはあと時折浅い息を吐きながら、クレッドは再び俺のモノをゆっくりとしごき始める。

「ん、んんッ……もう、やめろ……!」
「は……ぁ…………無理だ……兄貴、………先に……イってくれ」

途切れ途切れに発せられた無情な言葉に俺はただビクビクと体を仰け反らせることしか出来ない。まずいこのままじゃこいつにイかされてしまう。手でシゴきながらしつこく俺の体を舐めてくるこの男に、湧き出す嫌悪感よりも快感のほうが勝ってきてしまいどうしようもなくなる。

「あ、はぁっ、……っあ、うぁっ」

正直に言おう、気持ちが良い。久しぶりに人からされ、それが誰であろうと実際に感じてしまってるのだから仕方がない、ともう開き直るしかない。じゃないと俺これから生きていけない。
そう心の中で泣きながら「あ、もう、駄目、出そう……っ」などと俗な言葉を吐く俺の顔を見たクレッドが突然、見たこともないような柔らかい笑みを見せた。

「イクのか? ……いいぞ」

魅惑的な表情に一瞬ぞっとして萎えるかと思ったが、奴の巧みな技巧によって俺はいとも簡単に絶頂を迎えることとなった。

「ん、や、ああっ、………あ、あ、んあああぁッ!」

腰を浮かせて二度三度痙攣し、ブルルと下半身を震わせる。全部出し切ったことを悟り、苦しげに息を吐いて下腹部に視線を落とすと白濁色の液が飛び散っていた。俺の上に跨ったままのクレッドがそれをじっと見つめた後で、おもむろに指ですくい上げた。
えっ……デジャブやめろよ、何するつもりだよお前。その行動を注視していると、もう片方の手で突然俺の片足を上に引っ張り上げた。自ずと奴の目の前で開脚状態になった俺の心中たるや凄まじく、もう誰も想像できないと思う。

「……な、なっ、なにっ、してんだよッ!!」

正確には何をするつもりなんだと言いたいのだが、それを知るのは恐ろしかった。だって目の前にいるこいつの顔が、すでに新たな臨戦態勢に入っているのだから。

俺は非常に憤っているはずなのに、さっきまでの笑顔を完全に失くした弟の鬼畜な面に気が削がれていくのを感じる。だってもうすでに、こいつ俺が出した精液を俺の尻の間になぞるように塗り始めていたから。



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