俺の呪いをといてくれ | ナノ


▼ 8 快楽の呪い ※

「う、ぁ……や、だ……指っ、やめろぉ……」
「大丈夫だ、もう少し入る……」
「あぁッ……増やすな馬鹿……っ」
「……でも、すごくいやらしいぞ」

ねぇ兄弟で何の会話しちゃってるのかな俺達は。こんな風に足を開かされ恥ずかしいところを見られ、その上弟の指でケツの中をいじくり回されているなんて、ははっ、俺はこれからどうやって生きていけばいいんだろう。

「あ、あっ、もう、嫌だっ」

最初は一本の指が前後に出し入れされていただけなのに、今や何本か入り込んだそれがぐるぐると中を拡げるように自由に動き回っている。半泣きで苦痛に喘いでいると、突然指がズプッと全て引き抜かれた。えっ……ちょ、なんか嫌な予感がするんだけど。

「うぁ、んっ、な、なにっ…………や、やめろ」
「無理だ、兄貴……もう……我慢出来ない」

無理だってなんだふざけんな俺のほうが無理だわ。必死に睨みつける俺の目から何か感じ取ってくれないかなと思い期待するが、見つめ返す奴の表情にはまるで余裕がなかった。

本当に挿れるつもりなのか……? 指まで散々咥え込んだ俺が言えることじゃないが、どう考えても兄貴にする所業じゃないよね、そんなデカいもんを俺のか弱い尻にブチこもうなんてーー

だが俺の願いも虚しくクレッドは腰を掴み持ち上げ、さらに上向かせてきた。なんでお前そんなに手慣れてんだよ本当に男は初めてなのか、それともトチ狂った神により授かった天性の才能か? もう俺がお前を呪ってやりたいんたが。

「あ、ああんぁあッ」
「……力、抜いて……くれっ」

唐突に与えられた異物感、ヌチヌチと異常な音を発しながら奴のモノが俺の中にゆっくりと侵入してくる。心臓がドッドッと外に聞こえそうなぐらい音を鳴らす。痛い、痛くてたまらない、あり得ないとこに何かが挟まってやがる。
しかしそれがやがて奥深くまで達すると、俺の体に新たな異変が起こり始めた。

「はぁ、はぁ、ああ、……アぁっ、……?」

下腹部が熱い、変な感じがする。下半身が温かい何かに包まれ、内側から身に覚えのない快感がゆっくり湧き上がってくるような不思議な感覚だ。
よく分からんが、今動かれたらまずいーー訴えるつもりでクレッドの腕をぎゅっと握り締めると、奴は何を勘違いしたのか自らの腰を徐々に動かし始めた。

「あああッ! や、め……ッ……んぁあっ」

なに、何だこれ、さっきまで指だけであれほど苦しかったのに、比較にならない大きさのもんが挿れられて俺は……感じ始めてしまっているのか?

「ふ、ぁ……て、めえ……何……して……」
「……ああっ、兄貴……最高だっ」

膝をついてゆっくりと腰を前後に動かしていたクレッドが両手を俺の脇に置き、上に覆いかぶさってきた。お互いの肌の距離が狭まるにつれ奴のモノが中でやらしくうごめくのを感じる。

「ぅあ、アァッ、い、んぁっ」
「……すごい……っ、……あぁ、締められ、て……」
「あ、ああっ、そんな……動く、なっ」

快感が体の隅々まで広がり芯まで届いていくような感覚に陥っていく。正直かなり気持ちがいい……けど、何故なんだ。初めてで正常位で犯されこんなに感じるものなのか? 俺、もしかしてそういう体質なのか……それとも、こいつのアレのせいでーー。

「兄貴っ……どう、した……?」
「な、なにっ……が…………っんぁ、ァアッ!」

突然の問いかけに意識を戻される。明らかに前とは違う反応を怪しまれたのだろう。早かった動きを突如緩め出し、じっと目を合わせてくる。ああああやめろマジで見るんじゃねえと叫びたかったが、羞恥心からただ目をそらすことでしか意思表示できない。

この間まで俺の上に跨ったこいつの自慰を他人事のように眺めていたというのに。これじゃあ完全に立場が逆転している。屈辱と怒りが沸々と湧いてくるが中に入ったままのそれが気になって仕方がない。少し身をよじっただけで快感が溢れ出しそうなほど抑えがきかなくなっている。

「……な、兄貴……これ……気持ち良いのか?」

そう問う声は少しかすれているように聞こえた。クソッ、どう答えろっていうんだ、自分の弟に向かって素直に「あぁすげえ気持ちいい」などと言えるわけがない。俺が黙っているとクレッドは再びゆっくりと淫らな腰の動きを再開した。

「ぅ、あぁッ……は、あっ……」
「……中、ああ、良いっ」

ぬちゃぬちゃと音をたて出し入れされ、ゆっくりした動作がもどかしいほどだ。短い吐息を漏らしながら急速に上り詰めていく俺の上で、クレッドも同じなのか、だんだん激しい動きになっていく。

「ん、もう、イキそうだ……っ……いいか……?」
「は、ぁ……っ、え、……い、く……?」
「ああ、……イクッ……」

体がぴたと密着したまま腰を揺り動かされ、俺もどうにかなってしまいそうだった。こいつも限界が近いのだろう。でもちょっと待ってくれ、このままじゃ問題がある。

「だ……出すな……よっ」
「……何故、だ? ……出さなきゃ意味が……ないだろ……っ?」

い、意味がないだと? 何を言ってるんだこいつは。寸前で押し問答してる場合じゃないことは分かっている。だからといってあんな大量の精液が中に出されたら、俺が確実におかしくなるだろうが。

「い、やだ……ぁ……っ」
「ん、んぁッ、あ、兄貴、我慢、してくれっ……もう、出るッ……」
「ぅあぁっ……だめだっ……出すな……ぁっ」

俺の訴えも無駄に散り、クレッドはそのまま何度も激しく腰を打ち付けた。艶かしく喘いだ後で体をわずかに痙攣させ俺の中でドクドクと盛大に吐き出したかと思えば、糸が切れたように倒れ込んできた。
抱きつかれながら重い体を受け止めると、奴の鼓動は激しく脈打ったまま、吸い付くような肌は熱く汗ばんでいた。

行為を終えて脱力しているクレッドとは対象的に、俺は奥底に吐き出されたそれがジワリとした淡い熱を放つのを感じていた。内側から全体に隈なく浸透していくせいで、出された後もひとり快感にうち震えてしまう。ーーいや、正確に言えば、その後のほうが酷かった。

「ん、……ぁあ、……は、あっ……」

自然と漏れてしまう俺の喘ぎに気づいたのか、束の間の休息に身を沈めていたクレッドが体を起こし、ずるりと入ってたものが抜き出される。少しの刺激だけで体がビクリと反応してしまい、ハァハァと激しい息づかいでクレッドの顔を見やると、奴は戸惑いの表情を浮かべていた。

「……大丈夫か、兄貴?」

まだ熱っぽい声で心配そうに尋ねられる。大丈夫に見えるかこの野郎と罵倒したい気持ちをどうにか静め、俺はとっさにクレッドの腕を掴んだ。

「は、早く……出して……」

そう呟くのが精一杯だった。こぼれ出そうになるそれを残さず掻き出したくてたまらなくなっていたのだ。じゃないと疼きが止まらない、そんな下劣な思考が頭ん中を支配してもうそれしか考えられないほど、この異常な体液をこれ以上俺の中にとどめていられなかった。

一瞬言葉に詰まるクレッドだったが、至近距離で見つめられ息を飲む音がはっきりと聞こえた。

「あ、兄貴っ……もう、欲しいのか?」
「…………はっ? 欲しいって何が…………ち、違うっ、そっちじゃねえ……ッ」

ば、馬鹿かこいつーー誰がいつ「またすぐ出してくれ」なんて頼んだんだ。俺はそこまで淫乱でも狂ってもいないぞ。最も、今要求している行為だって相当異常だということは分かってはいるのだが。

「あ、ああ…………中に出したやつか?」
「……っ、そうだよッ!」

もはやなんでキレてるのか自分でも分からない。だが早く掻き出して欲しい、この無限に続く快楽の波から抜け出したい。じゃなければ、更なる醜態を弟相手に晒してしまいそうだった。
再び足を持ち上げられ俺は吐息を抑えながら、されるがままになる。指が中に入れられゆっくりと奥を探ってくる。

「んぁ……は、あ……んんっ……うう……なん、で………っ」

あああああ、さっきはあんなにグチャグチャと遠慮なく掻き回してたくせに、なんで今そんなもどかしい動きするんだよッ。さっさとしてくれと鋭い目つきで訴えるが、どうやらこの変態には逆効果だったらしい。

「そんな目で、見るな…………はぁ……っ……この行為は、たまらないな……どんどん中から……出てくるぞ」

終わらない疼きに絶望する俺の前に、明らかに興奮しながらその作業に没頭している弟がいた。お前が出したんだろッと責めてやりたくて仕方ないが、理性が半分飛んでいる今の状態では無理だ。

「あ、あぁ……まだかよっ」
「ん、もう少しだ……」

これは拷問に近い。手の動きと音に刺激され、さっきの苦痛に悶えていたときの方が余程マシだったと思えるぐらいに辛い。だがそんな俺の羞恥心を打ち砕く言葉をクレッドが言い放った。

「……はぁ……はぁ、………兄貴、もう一度、してもいいか……?」

…………は?
興奮が再び呼び戻ってきたかのように色めき立つその声に、俺は目を見開いた。

「ばっ、馬鹿かお前ッ……外に出したのに、無駄になるじゃねーかっ」
「心配するな、また掻き出してやるから……」

深い欲情をはらんだ低音で囁かれる。俺は唖然として言葉を失う。しかし奴の暴挙はそれで終わりではなかった。

「は、ぁ……こんな痴態を見せられて……我慢出来るはずがない…………それに、兄貴のまた勃ってるぞ……弄られて……感じたのか?」
「ッ………うるせえ、黙れっ」

よくそんな安い官能小説みたいな台詞が吐けるな、お前。だがニヤリと笑うクレッドは俺の反応など気にしてない様子だった。この鬼畜じみた面はいい加減もう覚えてきたぞ。下品な表現ではあるが、ヤると決めた時の顔だ。

「まだ、ここでイってないだろ………今度は、イかせてやる……」

そう言って腰をガッチリと捕え、さっきよりも乱暴に自分のものを挿入してきた。俺は急な刺激に耐えきれず思わず腰を引かせる。

「んああッ! やめ……ッ」
「……もっと、こっちだ……っ」

強引に引きずられ力強く打ち当てられる。全く遠慮がないその動きから、最初はかなり気を遣ってやっていたのだと悟った。

「あぁッ! んんッ、うぁ、あ、はぁっ、もう、あっ」

ガクガクと何度も揺さぶられ奴のモノを受け入れる。初めて知るその味を全身で味わっているかのように、与えられる快楽を貪り食う。こいつは獣か? 清ました顔して、なんて淫らなんだ。俺をこんなふうに扱って、こんなにしやがって。

「あ、兄貴、はぁッ、いい、すごく、ああっ、は、ぁっ」

俺の硬くなったモノが奴の腹に擦り付けられ、襲い来る二重の快感に必死に耐える。上でゆさゆさと腰を振る弟の首にしがみつきながら、ただ快楽が通り過ぎていくのを待つしかなかった。こんなものは屈辱だ、馬鹿みたいに腰揺らして、感じ合ったりするなんて。

「んぁっ、あ、もうっ……あぁッ、い、イクっ……」
「ああ、兄貴っ、俺も、んぁっ、また……ッ」

絶頂を迎え、再び奥深くに注ぎ込まれたそれが零れそうになるのを堪える。自分じゃどうしようも出来ない快感と羞恥の間で、耳元で浅い息を吐く弟の熱を感じていた。……こいつ、二回も中出ししやがった。
重い体を押しのけて文句の一つでも言ってやりたいのに、絶え間なく疼く体がそれを許さない。

「あ、兄貴……はぁ、あぁ……は、ぁ……」

クレッドが興奮冷めやらぬ様子で俺を呼ぶ。艶がかったその声にすら反応しそうになる自分に絶望しながら、俺は決心した。どんな手を使ってでも、必ずこの呪いをといてやると。それはこいつのじゃない。俺にかけられた、終わりなき快楽の呪いだ。



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