俺の呪いをといてくれ | ナノ


▼ 77 兄弟の実験 ※

今日の俺は、珍しく寝室の大きなベッドの上で弟を押し倒していた。
まだお互いに服を着たまま、クレッドの下半身に跨り、ちょっとした征服気分を味わっている。
自分の性格的に、普段から積極性が皆無で羞恥心が強めなのは否めないが、一大決心した時だけは異常なやる気を見せることがあるのだ。

「なあ、クレッド。今日は俺がお前の体……好きにしていいか?」
「えっ……どうしたんだ、いきなり。全然構わないけど」
「本当か? 何してもいい?」
「勿論だ。でも何をするつもりなんだ? ……まさか兄貴、やっと俺の、舐めてーーんんッ」

何を言い出すんだこいつは。頭がおかしいんじゃないのか。
その先の言葉を聞くのは恥ずかしくなり、俺はものすごい勢いで弟の唇を塞いだ。
まあいいや。とにかく今は俺が言うことを聞かせる番だ。

「口開けろ、クレッド」

真剣な表情で命じると、弟は顔を赤らめて言うとおりにした。すでに興奮を滲ませ、潤んだ眼差しをこちらに向けている。

「いいか、今から入れるもの……ちゃんと飲めよ。一回でな」

低い声で呟き、弟の後頭部に手を添えた。そして手に握ったものを間髪入れず弟の口内にぶち込んだ。
クレッドは俺の命令通りそれを口に含むと、一瞬苦々しい顔をした。眉をひそめ、苦悶の表情を浮かべている。

「……っ。なんだ、これ。酷いぞ、兄貴……こんな事」

弟の口に入った、禍々しい代物ーーそれは弟の精液から精製した紫色の錠剤、つまり俺自作の媚薬である。

そう、今日の俺には重要な任務があった。呪いの構成要素を解き明かす為、この媚薬を弟に使い実験台になってもらうのだ。
もしそれが弟自体には効果がなく俺にだけ作用するならば、この凄まじい快楽を生み出す媚薬成分は、俺への呪いだということが判明する。

よく考えればえげつない実験だが他に手がない。もうやるしかない。

「だって前にお願いしただろ。お前に試してもらうって。ちゃんと飲んだか?……ほらもう一回口開けて」
「飲んだよ。気持ち悪いけど」

ぶつぶつと文句を漏らすクレッドの口を無理やりこじ開け、俺は中を確認した。よし、うまくいった。
だが問題はここからだ。弟の肉体における様々な感度を確かめなければーー

「じゃあ何か体に変化が起きたら教えてくれ。それまで色々触ってるから」
「色々ってどこだ? 俺がお願いしてもいいのか?」
「駄目に決まってるだろ。今日は俺がやりたい放題するんだから」

強い口調でたしなめると、弟は悔しそうに口をつぐんだ。
早くも俺は弟が着ているシャツに手を伸ばした。ボタンを一つずつ開け、筋肉が張っている胸板を露わにする。服を全部めくり、硬く引き締まった腹筋をじろじろと眺める。

「ああ、やっぱすげえな……マジで良い体してるよなあ、お前」
「……ッ、あ、兄貴……」
「何をしたらこんな体になるんだ? 教えてくれよ、クレッド」

興味津々に尋ねながら、腹に手を這わせた。指でさわさわと撫でていると、ビクッと弟の腰がわずかに浮き上がる。
ふふ、もう何十回も肌を合わせているというのに、こんなにじっくりと視姦したことはない。なんだか変な気分になってくるな。
それで、今からどうしよう。やっぱり舐めたほうがいいかな、流れ的に。

「クレッド……舐めてほしいか?」
「当たり前だろ」
「どこを?」
「……じゃあ、最初は上半身を頼む」

最初はってなんだよ。後で何やらせるつもりだ。
脳内で突っ込みを入れつつ、俺は弟のリクエストをのんでやることにした。

耳元に口を近づけ、わざとらしく息を吹きかける。再び反応を見せたクレッドの耳たぶを、唇にぱくっと挟んだ。
奴が時々やるように舌先でちろりと舐めると、耳がどんどん赤く染まってきた。

「……ッあぁ」

可愛らしい弟の声が漏れるのを確認し、今度は首筋を指ですうっと撫でてみた。
ここは俺自身も思い入れのある箇所のため、入念にやろうと決めている。
白い首に口を押し付け、ちゅうちゅうと吸い付く。舌を出してぺろぺろと舐めながら、上へ下へ過剰に動かしてみる。

「は、あ……ぁ……兄貴、まって……」

上半身をぴくぴく震わせながら、屈強な男が身悶えしている。俺の舌技でこんなに感じているとは……やべえ、なんか興奮してきた。
勿論俺も羞恥心がないわけではない。だが、するよりされるほうが恥ずかしい。見るより見られる方が、もっときつい。ただそれだけの性癖なのだ。

俺は奴の乳首をちらっと視界に入れた。どうしよう……やっぱり避けては通れない道か。
や、やるしかないっ!

「クレッド、お前のここ……舐めてもいい? そういうの、嫌じゃない?」

色素の薄い胸の先を指先でなぞりながら、わざとらしく問いかけた。答えは知っているが、あくまで奴の実際の反応を確かめるためだ。

「兄貴にされて嫌なことなんて無い。や、やってくれ」
「分かった。じゃあ俺、頑張るから」

意味深に宣言し、弟の乳首を口に含んだ。またちゅうちゅうと吸い付き、舌先で転がしーーやってる事はほとんど今までと変わらないので省略する。

「……ん、……ッあ……っ」

段々クレッドの喘ぎが艶がかってきた。普段は耳障りの良い柔らかな美声をもつ弟が、少し掠れた声を出しながら俺の愛撫に反応している。ああ、なんかムラムラしてきた。

「俺の舌、良い? どんな感じ?」
「あ、兄貴……ッ……そ、そこは駄目だ……っ」
「ここ、やだ? お前って凄く感じやすいんだな」

意地悪く言いながら脇腹を優しく掴み、胸だけでなく色々と舐め回した。
チュッチュッとやらしい音を立たせて、奴の上半身をくまなく可愛がってやった。

いつもは俺が好き勝手に喘がされているが、今日は違う。この妙な優越感……やはり俺も一端の男だったようだ。
けれどそんな余裕のそぶりでいた俺に、頭上から信じられない声が届いた。

「なあ……そろそろ、俺の、舐めて……兄貴」

その衝撃的な発言に、全ての動きがぴたっと止まった。
ーーとうとう言いやがった、この変態。
俺はすぐに奴の興奮状態の赤ら顔をキッと睨みつけた。

「馬鹿か、そんなこと、出来るわけねえだろっ」
「……なんでだ? 散々俺の体舐めておいて、なんでそこだけ出来ないんだ?」

弟が久しぶりに見せた鬼畜の面で凄んでくる。また妙な屁理屈こねやがって。そことその他じゃ全然違えだろうが。
クレッドはのっそりと上体を起こし、黙りこくっている俺に顔を近づけた。

「大丈夫、出来るよ、兄貴。少しずつでいいから……な?」

俺の頬にそっと手を当て、一転して優しく甘い音色で問いかける弟。けれど要求していることは過酷極まりない。
でも俺、こいつのこと本気で幸せにするって思ってーーいや、こんなことで幸せにしてどうすんだよッ。

「お……俺、たぶん下手だし。お前みたいにうまく出来ない……」
「全然問題ない。練習すればいいだけだ」

はあ? なんですでに俺が下手って決めつけてんだ、この野郎。

「じゃあちょっと舐めてみて、兄貴……ちょっとだけ」

俺は奴の動きに誘導され、いつの間にかその場所へと顔を迫らせていた。
ベッドに座る弟に対し、膝をたたんで前屈みになり、目の前にそそり立つ弟のモノを間近に見ている。

「無理だ、こんな大きいの……俺の小さな口に入んねえよ」
「大丈夫だ。ゆっくりやってみて」

すでに涙目の俺は何度か押し問答を繰り返すものの、いつかは乗り越えなければならない壁だと思い、覚悟を決める。
震える手で硬くなったソレを握り、恐る恐る先端を舌でぺろっと舐めた。クレッドの短い声が漏れたが、表情を確かめる勇気はなく、もう一度同じことをした。

「ッ、あ……」

最初の一回は勇気を必要としたが、俺はその後先っぽだけをレロレロと舐め続けた。
ぬるっとした透明な液が舌に触って、途端に羞恥が強まり、顔がぼわっと熱く感じる。

「ああ、すごくかわいい……兄貴」

……え!?
何故今そんなこと言うんだ、この変態。だが思わず口を離しそうになった俺の頭を、突然クレッドが押さえつけてきた。
力は弱いがしっかりと固定され、怯んだ俺は仕方なく舌の動きを再開した。

「口開けて……中に含んでみて」

クレッドの淫らな命令にも、なぜか逆らうことが出来ない。や、やるしかない……のか?

「でも……み、見るなよ……っ」
「……分かった、見ないから」

嘘つけ、絶対じろじろ見るくせに。
内心不平を漏らしながら、口をぱっくりと開け、そろそろと弟のモノを咥え始めた。
やっぱでけえし太い。こんなの絶対奥まで入らない。怯えつつも徐々にそれを飲み込んでいく。

「はむっ、んぅっ、っむ」

信じられない、俺は弟のを完全に口に咥えてしまっている。
性器に指を這わせたまま、舌と口を使い、必死に顔を上下に動かしていく。

「あ、ああ、嘘だろ……す、ごい……」

弟の率直な感想が耳に届き、さらに頭までぼうっとしてくる。
硬く太いそれに自分の唾液が絡み、吸い付く度にじゅぷじゅぷと卑猥な音が部屋に響きわたる。

(なんなんだこれは、俺はぜってーこんな事、お前じゃなきゃやんねえぞッ)

心の中で叫びながら、一心不乱にしゃぶり続けた。

「う、っむ、んぐ、んむっ」
「あぁ……兄貴の口……気持ち、いい……」

はあはあ淫らに息を吐きながら、弟が時々腰をビクつかせ乱れている。
そんな声をずっと聞いてると、なぜか俺も内側から、何かがじわじわと迫りくるのを感じた。

「……あ、もう、駄目だ、あ……ああ、イ……きそ……っ」

クレッドの呼吸の感覚が短くなり、荒々しい感じになっている。
ど、どうしよう。まさか俺の口にーーそう思った瞬間、そのまさかは突然襲いかかってきた。

「あ、兄貴、もうで、る……ッ、…………ああぁッ!」
「んむ、んん、んうぅっ……!?」

本当に突然口の中に大量に注ぎ込まれた液体に、俺はもう瞬時に頭が真っ白になった。
弟の喘ぎと共に吐き出された精液が、一瞬で口の中を一杯に満たし、数秒そのままで俺は固まってしまった。

(なにこれマジ無理、多すぎるーーいやでもやっぱ俺、こいつのこと……好きだから。飲むしかねえッ)

様々な思いが巡りくる中、俺は本気の涙目で、その精液をごくりと飲み干した。

「………ぷはっ、……っはあ、はあ、はあ」

やばい。飲んじゃったよマジで、弟のやつ。……変な味。

我に返って顔を上げると、目元まで紅潮させて俺を見下ろすクレッドと目が合った。

「兄貴、俺の、全部飲んだのか……?」
「……ああ。飲んだよ。……お前みたいに、美味いとかは言えないけど、不味くはないな」

つうか俺、前にこいつの精液舐めたことあるから、味は知ってるんだよな。こんなに大量に飲むとは思わなかったけどな。
若干リップサービスを含めた感想を述べると、クレッドはすぐに俺のもとに近寄り、その逞しい腕の中に力強く抱きしめてきた。

「ああ……兄貴……ッ!」
「え、なに、どうしたのお前」
「俺……兄貴が、大好きだ……!」
「…………。お、俺も大好きだよ、お前のこと。クレッド」

おい。その言葉は初めて聞いたんだが? なんでこのタイミングなんだよ。もっとマシな場面あんじゃねえのか。
けれど空気を読んで何も言わなかった俺に対し、まだ弟の暴走は止まらなかった。
体を離し、一転して不敵な笑みを浮かべている。

「……じゃあ今度は俺の番だな。兄貴のも、してやる」
「は? い、いや。俺はいいから」

速攻断った俺の返事も気にせずに、クレッドは迫ってきた。背に腕を回されて抱きかかえられ、ズボンに手をかけられる。
それはやばい。急いで奴の手を掴み止めようとする。

「ちょ、やめろバカっ! ていうか、お前媚薬はどうなったんだよっ、なんか変わったのか?」
「……ああ。いや、別に変わってないな。……いつもと同じぐらい、興奮している」

にやりと笑ってそう告げると、強引に俺のズボンを下着ごと剥いてきた。弟の前で下半身が露わになり、性器も完全に露出させられてしまう。

「なんで、やだ、見るなぁッ」
「兄貴……すごい濡れてる……こんなにベトベトにして、どうしたんだ?」

卑猥な言葉を投げかけ、大きな手で上からぎゅっと押さえつけてきた。突然の刺激に腰が大きく仰け反ってしまう。

「んあぁっ触るなっ」
「俺の舐めてる間……こんな風に濡らしてたのか? やらしいな、兄貴は……」

手で優しく握られ、指の腹でゆっくりと扱かれる。ぴくぴくと腰を反応させてしまう俺に、弟が目線を合わせてきた。
はあはあ息を切らしながら見返すと、また目元が楽しそうに細められた。

「俺も口でしてあげる……ちゃんと全部出して、兄貴の」

淫らに囁いた後、クレッドが自分の顔を俺の下半身に埋めた。勃ち上がった性器がすぐに温かい口内に包まれ、じゅるじゅると滴る液にまみれていく。
時折見える赤い舌が筋に這わされ、艶かしく動き回っている。

「んっ、んっ、んぁっ、やだ、クレッドっ」

ベッドの上で俺は後ろに片手をついて座り、もう一方の手で弟の頭を押さえていた。止めようとしても全然止まらない。口の中に吸い付かれ、柔らかい舌に無限に攻められる。

「……はぁ、はぁ、だめ、だ、そんな……の、やだぁ」

途端に腰が抜けるように、自然とガクガク揺らしてしまう。

「うぁ、もうっ、……はあ、はあ、クレッド、……き、気持ち、い……」

頭を押さえていた手にも力が入らず、与えられた快感のせいですぐに陥落しそうになる。
だって単純に抗うことが出来ない、こいつの口の中どうなってるんだ。

「あっ、あっ、もう出る、い、イク…………んっ、んっ、んああぁッ!」

背中を大きく仰け反らせ、はしたなく大きな声を上げながら簡単に達してしまった。
出したくなんかないのに、結局また自分の精を中に吐き出してーー

「はあ、はあ、っはあ、はあ」

俺は激しく息を吐いて、弟がゆっくりと顔を上げるのを見ていた。
クレッドはごくりと喉を鳴らし、当たり前のように表情を変えず、俺の精液を飲み込んだ。

なんだかさっき自分が同じ事をしたばっかりだからか、今までと違う感情が沸き上がってくる。
もちろん恥ずかしいのは変わらないが……

ぼうっとして眺めていると、クレッドの方から俺の近くに寄ってきた。顔をまじまじと見られ、頬にちゅっとキスをされる。

「気持ち良かった? 兄貴」

すごく優しい声色で尋ねられ、途端に意識が引き戻される。また顔が急に熱くなるのを感じながら、俺はとっさに奴のはだけたシャツに掴まった。

「……うん。……すげー気持ちよかった」

ぼそりと素直に呟くと、再び弟の腕の中に収められた。な、なんか今無性に顔を覆いたい。
今日の目的は実験だったのに……こいつ、いつもと同じように見える。やたら嬉しそうな顔してるし。

やっぱり媚薬、効かなかったのか? ていうか、俺のほうがとんでもない事しちゃったじゃないか。

「じゃあ続きしよう。実験、これだけで終わりじゃないよな?」

そんな俺の思いを知ってか知らずか、弟がまた不埒な事を言い出した。
にこにこしているクレッドの前で毒気を抜かれた俺は、小さく頭を頷けた。

予定とはかなり違うことになってしまったが、俺達の実験はもう少しだけ続きそうだ。



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