金銀砂子(オリエンス)
2014/07/08 01:15

『天の川は星がきらきらと煌めいていて、まるで蒔絵や襖絵に蒔かれた金粉、銀粉のようですよ、という意味らしいですよ』


そう…優しく微笑みながらいつだって欲しい答えをくれたのは、今思えば俺にとって肉親以上に大切な存在だったのかもしれない──────。





さらさらと風が通り過ぎる度に葉擦れの音が耳に届く中庭。
そこに佇む背高の笹竹は、城の裏庭に自生する竹林から毎年この時期になると届けられる見事なもの。

「わあ…すごく立派な笹だね」

そう言って楽しそうな声が背後から届き、くるりと振り返ったアランの視界に映るのは最近オリエンス王室に迎え入れられたプリンセスの姿。

「姫」
「ね、これ七夕祭り用の笹なんでしょ?笹飾りなんて子供の頃以来だから懐かしいなあ…」
「姫も七夕飾りやったことあるのか?」

7月7日と言えば七夕だが、流石にオリエンス王国以外の国ではそんな風習があるはずも無くどちらかというとひっそりと行われる夏のイベントであったため、それを『懐かしい』とさらりと言ってのける義姉にアランは驚いたような瞳を向ける。

「うん。私の故郷でもこうやって笹竹に輪飾りとか吹き流しとか飾って、あと願い事を書いた短冊とか結び付けて七夕さまのお祝いしてたよ」
「へえ…やっぱり姫の故郷とオリエンスは似てるんだな。着物も着てたしな。でも…茶道は苦手だったよな」
「う…痛いところ突いてくるなあ。でもアラン先生のおかげで茶道も何とかクリア出来ましたから」

そう言ってぱちんと目配せを送るプリンセスに『うんうん』と頷くアラン。

「まあ、オリエンス王室は何かと作法にうるさいからな。姫もこれからはゲストを持成す側になるんだから頑張れよ」
「はい!アラン先生!!」

ぴしっと襟を正して敬礼をする義姉を見遣りながら、天へと向けてその凛とした姿で佇む笹竹に視線を向ける。

「なあ…姫。『金銀砂子』って知ってるか?」
「え?」

天を仰ぎ、風にそよそよとその身を任せる笹の葉たちを見つめて独り言のようにアランが問い掛ける。

「え…あの歌の中に出てくる『きーんぎんすなーご』ってやつの事?」
「うん。その『きんぎんすなご』」


ささの葉さーらさら
のきばに揺れる
お星さまきーらきら
きんぎん砂子

五色のたんざく
私が書いた
お星さまきーらきら
空から見てる


「あ…えっと、何だろ?子供の頃からよく歌ってたけど意味まで考えたこと無かったかも…」
「天の川がきらきら光ってるから、それが襖絵とかに書かれてる金や銀の粉みたいだよ……って事なんだって」
「へえ…そうなんだ。さすがアラン君、星の事になると詳しいね」
「これ…ユウが教えてくれたんだ」
「え…。ユウお兄ちゃんが?」



『おい、ユウ。お前も星が好きなのか?』

いつもこの季節になると夜空を見上げていた背中に声を掛けた。

『アラン様。……そうですね、星と言いますか夏の夜空が好きなんですよ』

そう言って教えてくれた『天の川』に纏わる物語。



『たとえ…一年に一度だとしても逢いたい人に会えるだけいいですよね』



あの頃の彼の言葉の意味は解らなかったけれども。
いつか、その意味が解るようになる日が来ると信じて……待っていたい。





「ユウ……元気かな」








お前が……戻って来る場所はいつだって開けてあるから。








だから、また一緒に星空を眺めよう……な。


















2014.7.9




二日遅れになってしまったけども七夕ネタで。
GREEイベントのあまりにもひどい仕打ちにFちゃんと嘆きました。涙。

本家執事ユウルートのグドエンは本当に胸キュンなんですよ。

当初、ユウお姉ちゃんで書いていたけどもユウお兄ちゃんを書きたくなったので^^
※設定はグレンRWの頃かな



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