急いで破られた窓から庭を覗けば、其処に鏡でもあるようにシンメトリーな仕草でクスクスと笑う双子が此方を見上げていた。
そして一通り笑うとコートを翻して走り去って行く。
きっと双子はレイガンの元へ向かったはずだ。
神田とラビが窓枠に足をかけたとき、ドンッという鈍い音と怒気が背中を襲った。振り返らずとも何が起きたかなど分かりきっている。神田は舌打ちを一つ溢し、ラビに目で先に行くと告げると、窓から飛び降りた。
彼を見送ったラビが振り返れば肩を怒らすアレンが壁に背を打ちつけたらしいリンクの胸ぐらを掴んでいる。


「なんで止めないんだ…!あの二人とは“家族”じゃないのかッ!」


リンクは静かに彼の言葉を聞く。その瞳の感情は読み取れない。
ラビが宥めようとしたがアレンは彼を視線で遮った。


「…なんで…、始めから分かっていたんだろう…?君なら…止められたのに…ッ一人目の犠牲者以外、誰も傷付かずに済んだかもしれないのに…!」


リンクは瞳を細めてアレンのそれをじっと見つめると、瞼を下ろした。


「君は話をきちんと聞いていなかったのですか」


その言葉に眉根を寄せる。


「双子の望みは教団に認められること。そのためには彼らの存在を報告しなければなりません」


言い聞かせるような静かな声が突き刺さる。


『“お前達はもう要らない”って』

「まさか…」


姿を現した彼の瞳に渦巻く感情が流れ込む。
勢い良く胸ぐらを掴む腕が弾かれた。


「私だって、止めたいんだ…!」


反響する心が滲んでいく。リンクは二人の切望を知っていたのだろう。そしてそれが同時に双子を滅ぼすことを。彼に感じられたこの任務に就いてからの言動の不可解さは、家族と教団の狭間に揺れる心の具象だったのだろう。
小さく「ごめん」と呟くと、待っていたラビと共に飛び出す。何処からか爆発音が響き、空に一つの砂煙が立ち上った。恐らく神田が攻撃を仕掛けたのだろう。それを目指して三人は走り出す。


「俺達で二人を助けてやろう?な!」


一言も言わないアレンの肩を叩き、彼とリンクに向けてラビは努めて明るく叱咤した。
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墮天の黒翼

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