徐々に明るくなってきた街に足音を忍ばせながら走る。
少し呼吸を乱したシーがギネヴィアの邸宅の裏に辿り着くと、そこで腕を組んでいた神田がその鋭い瞳を細める。どうやら怒っていることに気付き、彼女は慌てて頭を下げた。
それを神田は静かな邸宅を見上げながら受け流す。
もう失敗は許されない。ギネヴィアのもとに乗り込むのだ。
「この時間なら寝室にいるだろう。場所は分かるのか?」
『はい。二階の東側です』
裏門から忍び込み、建物の形を把握する。ふと木陰になった一階西側の窓を見ればガラスが割られていた。
先を越されたらしい。
神田は舌打ちを一つ零し、気配を探りながらシーと共に内部に侵入した。
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墮天の黒翼