通信を入れて戻ってきたシーと二人でラビは夜明けを迎えた。
「マスターぁ!結構上等なお酒持っているのねぇ、気に入ったわぁ」
「おう、ありがとう。僕は君のような美人さんに会えて幸せ者だ」
「うふふ、また来てあげるわねぇ」
レイガンと言葉を交わしたアビーと、無言のまま店を出たカイルの帰宅するふらついた背中を店の横の路地から見送った。
レイガンも大あくびをしながら店内の掃除を始めている。
シーがアレン達に通信を入れて状況を訊いたが、どうやら犯人は動かなかったようだ。
宿に戻り三カ所の報告と朝食を済ませると、順にシャワーと仮眠を取ることになった。
犯人が夜にしか動かないとは決まっていない。不安はあるがもしものために体力を回復させなければならないのも事実。
エクソシスト三人に続き、リンクがシャワーを終える頃にはアレンと神田が仮眠をとっており、ラビに勧められて申し訳なさそうにシーも浴室へと入っていった。
シーの淹れた紅茶を片手にソファーに座るラビは、まだ湿り気の残る髪をいじりながら今夜の計画を練っていた。
「もう三人を一カ所に集めることは出来ないからなぁ…。せめて住居が近ければ良かったのに」
一人唸るがどうしても人数差が邪魔をする。先刻シーに五人の習慣を訊いてみたが、アビーとカイルの徹夜酒以外に共通点は見当たらなかった。
「ん〜…ホクロ二つぅ〜何かいい案は無いさ?」
「その呼び方を止めれば助力しますが」
「ん?じゃあ枝眉毛」
「一人で唸ってなさい」
頬の筋肉をひくつかせながら言うリンクに慌ててラビが訂正をいれていると、俄に宿の外や廊下が騒がしくなってきた。廊下に顔を出すと、丁度一人の警官がドタバタと息をきらしながら此方に走って来た。
胸がざわつく。
「サ、サイモン警部からの、言付け、で…!」
「ちょい待って。二人寝てるから起こすまでに息を整えとくさ。またすぐに走るから」
両膝に手をあてて屈み、必死に呼吸をしようとする警官の肩を軽く叩き、アレンと神田をたたき起こしにいく。シャワーを浴びていたシーも異変に気付いて着替えを始めていたようだが、扉越しに後から来るように伝えて警官と共に四人は宿を飛び出した。
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墮天の黒翼