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全力で走るバクの背中を追っていれば、確か封印の間とかいった場所に向かっていると分かった。
彼の怒りの唸りと走る音に別の音が混じる。柱の隙間から見えた人物に思わず目を丸くした。

鎌で襲い掛かる番人の片足を己のそれで捕らえて絡めた。だがそれで倒れることなく、バランスを崩した体勢から身を翻した相手が彼女の懐に蹴りを入れる。だがそれは空気を裂いただけ。彼女はくるりと器用に体を捻って跳び下がり、ザザッと鈍い音を立てて滑りながら体勢を立て直す。追撃する大鎌を笑うようにふわりと靡いた茶髪に見知らぬ赤が映えた。
団服のコートを翻し、舞うような戦いに俺たちの足音が割り込んだらしい。次の予備動作をみせた彼女がぴたっと動きを止めた。

「隙ありぃ!」
『っ!』

一瞬にも満たない隙で綻ぶ。
勝利の宣言が響いたときにはもう、彼女の驚きと悔しさを孕んだ瞳が現れていた。

『ちょっと、誰か来たら中止って言っただろ!』
「あー?知らねぇな、誰か来たのか?」
『ずるいぞ!』
「知らないもずるいもあるかーッ!お前ら何をしている!」
「お、バクじゃねぇか」
『あー、やっぱり怒った』
「あぁああッ!毎度毎度いい加減にしろっ俺様はデリケートなんだ!」

走って息を切らしながら怒りを爆発させるバク。それに対してしれっとする二人の態度が癪に障ったのかは知らないが、咆哮を上げながら全身を掻き毟り始めた。いつものジンマシンらしい。間もなく後方から「バク様ぁーッ!」と叫びながら必要過多の看病物品を抱えたウォンが飛んできた。それを尻目に二人は楽しそうにも見える。

「今回はあたしの勝ちだな」
『無しだろ、不正だ』
「何 故 か !動きを一瞬止めたからこれを頂いただけだぜ」
『そんなに勝ちたかったのか…』

やけに威張るフォーを呆れた目で見下ろしていた彼女と視線があったが、ほんの一瞬だけ。すぐに逸らされた。
心中で首を傾げていればバクがうなされながら「書類を貰って来てくれ」と言う。それに肩を竦めた新藤は俺の横を通って何処かへ行ってしまった。

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