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辺りに血腥いオイルの臭いが重く渦巻いている。
直接攻撃型の少年は、少量ではあるが全身に返り血を浴びた。
退魔の剣を振るう血塗れた使徒は、心配を掛けまいと汚れ一つ付かなかったもう一人の使徒に笑みを向ける。

無言で歩み寄って来ると、すっと彼女から伸びた手がそっと彼の頬を撫でた。
その手には赤黒く侵されてゆく白いハンカチ。

「あ、えっあの、だっ大丈夫ですッ」
『馬鹿、寄生型でもちゃんと皮膚に付いた血は早く落とすべきだ』

本当は洗い流した方がいいんだが、と愚痴を零す月精は必死に顔が赤くなるのを抑えるアレンには気付かず、彼の顔や髪に付着したオイルを拭った。

『終わったぞ』
「あ、ありがとうございます」
『別に』

その指先で血と共に、この羞恥を拭ってはくれませんか。

そうすれば僕は、この気持ちを君に伝えられるのに…。


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