に。



「へえあのなっきーがねえ」
「…ずっと前から知ってたみたいな顔してますけど」
「まあ知ってたからね、俺となっきーズッ友だし」


くだらね。
まあ事実由之助は夏貴の傍にずっと居たし、先輩後輩関係なしに仲が良かった。
確かに俺も由之助程ではないが仲は良かったと思う。
俺は仲がいいと思っていたし、何だかんだ二人で何かすることは多かったし良く泊まってるし。
でもまあ恋愛対象として見られていたとは思わなかったけど、それでも一緒にバスケをしたり、
あいつのおやつ作りを手伝ったり。
何だかんだあいつと一緒に居るのは楽しいし、俺も隣に居て心地いいと思っている。
まさか告白一つでこんなに悩まされるとは…。


「はじめは糞だから言うけど、なっきーは本気だしずっと告白していいものか悩んでたんだよ」


ましてやなっきーもはじめも男だしね。
そういう由之助の目は真面目で。こんな目を見たのはいつ以来だったか。
確か俺らが一年の時に千尋先輩を始めとするバスケ部に無茶な喧嘩売った先輩以来か。
まああれ完全に千尋先輩が悪いんだけどな。何だよロッカーでポテチ盗まれたからそれっぽい人襲ったって。しかも本当に千尋先輩盗んだし。いい加減にしてほしいけど何故か由之助はキレてた。
そんな珍事件思い出しながら全然その事件とは関係ない目をしながら真面目に語る由之助は
やっぱり由之助なんだと、耳を貸すのが嫌になる。
まあ言ってることは至極真面目なんだけど、あの珍事件は絶対忘れることが出来ないから
脳裏を過るんだよ。星見頭おかしい。


「はじめのちゃんと別れてから付き合うところは褒めてもいいけどそれ以外は糞だからなあ」
「お前の元カノお前にヤングドーナツ貰えなかったってキレられてから別れ切り出されたの根に持ってるぞ」
「あ…あれは…別れるきっかけが欲しかっただけやねん…」
「俺も見てたけどあれはマジギレだったな。お前のヤングドーナツへの執着心キモいからな」
「ヤングドーナツ先輩愛おしい」


まあ言われなくてもわかってる。
自分はクソだし。それはちゃんと自覚ある。
ちゃんとそういう気持ちを持って付き合ってやれれば今までの子らだって幸せにしてやれたのかもとは思うけど、自分の心が面倒臭がるんだ。
それに告白してくる奴らなんて大体決まってる。バスケ部で生徒会で顔がまあまあ良い奴。
別に自分がイケメンだとは思ってねえけどそんなもんで丁度いいのは俺だろう。
ましてや玄兎なんて真面目なやつ狙うやつなんて本当に玄兎を想ってくれてる子ぐらいだ。
遊べて丁度いいブランド持てるのは俺くらいだと思う。ましてや来るもの拒ます、飽きたら捨てればいいだけ。去っても追わねえし?
だからこそあんな本気な告白に戸惑っているのだ。
ホモだ何だと思ってるけど、別に同性愛が悪いわけじゃなくて相手が夏貴だからなだけ。
自分がいざ同性を好きになっても俺は自分の個性だと思い受け止めると思うし。


「まあ真剣に考えてくれるのは俺も嬉しいことだよ。でも、なっきーはだめだよ」
「由之助、」
「なっきーは絶対ダメ。傷つけたら俺も、玲志もちのちゃんも二年も一年も。特に玄兎が許さない」


あの子の泣き顔なんて見た日にはお前を殺すから。
随分愛されてるな。自分でも戸惑うけど、俺もあいつの泣き顔見たらどう思うんだろうな。
自分がわからないから悩むし、俺はあいつにどうしてやればいいか何をしたらいいかがわからない。
これがどっちの意味の好きかもまだわかってないのに、急にずっと前から好きだった。
でも返事は要らない、だって脈なしなのわかったからって言われてよ。
あの後結局あいつと二人きりでおやつ用意してても告白する前のあいつと変わらなくて、
戸惑ってるのは俺の方だった。
わかんない、あいつはどうしたいのか。本心もどれが本当のあいつかもわからない。


「思った以上に青春してるかも」
「それなー。ぶっちゃけなっきーが俺を選んでくれれば俺が幸せにしてやるのにって思ったよ」
「お前はねえだろ、別れる理由がヤングドーナツになるぞ」
「蒸し返すお前が大嫌い」
「ヤングドーナツお別れ事件のこと夏貴たちに言ったら大爆笑取れたぞやったな」
「何故あいつらに言うの????」


面白いことあったら報告しろって言われてるからに決まってるだろう。
まあでもお前を好きになってしまったもんはしょうがない。俺はなっきーを応援するからそのまま振られて死ねって平気な顔して言う親友に戸惑う。
知恵熱出そうなくらいに悩んでる。人の心とはどこまでわからないもんなんだ。
でもあの時のあいつの顔は本心で。何処か不安の混じった目と苦しそうに噛み締めた唇は、
あのモルタルみの強い心を持ったあいつしか知らない俺からしたら、新しい顔を見れたわけで。
どういう形だとしても少し嬉しかった。
ちゃんとこの件の返事は答えてやりたいとは思ってる。それがどちらに転がるかはわかんねえけど、
あんな顔のあいつを見たらあいつが嫌がっても答えてやりたいなとはずっと考えてた。


「まあなっきーもわかってるしゆっくり考え給え、あの子はお前が思ってる以上に大人だよ」
「そうかい」
「心はコンクリみ強いけど」
「モルタルだろ」
「まあどっちも壊れたときが危ないからね」


目を離さないように俺が見張っとくよ。あわよくば俺が貰っちゃうかもね。
何ていう由之助の目はマジだった。


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