いち。



別に誰でもいいんだと思う。
元々俺から誰かを好きになったことなんて過去一回二回とかそんなもんだった。
別に誰かと共感したいわけでもなく、今居るポジションが幸せなだけ。


ただそれだけ。


「先輩、好きです」


なのに、まさかこうなるとは思わなかった。
目の前に居るのは同じ部活の同じポジションの後輩で。
LINEで呼び出されて来てみれば所謂告白ってやつで。
まさか割りと可愛がってた後輩に告白されるとは思わなかった。
しかも相手は俺と同じ男だし。
ずっとこのままの関係だと勝手に思っていたから軽くショックだ。


「返事は要らないよ、聞いてほしかっただけだから」
「…お前はそれでいいのかよ」
「先輩びっくりでしょ。まさか俺が先輩のこと好きだなんて思っても見なかったって顔してる」
「まんまそれだけど」
「うん、その顔だけで脈なしなのわかったし、言わないで後悔するより言って後悔した方がいいし」


意外でしょ、ずっと先輩のこと見てたんだよ。
そう笑って言うお前にどうしていいかわからない。
いつもだったら「あ、そう」で済ませれるのに、何故かこいつ相手に戸惑ってしまう。
ちゃんと返事を返せればいいのに何も言えない。


「じゃあね先輩、また部活んときね」
「ん、あとで」
「早く来てよ!おやつ手伝ってもらわなきゃいけないからね!」


多分それはあいつの顔がいつもの笑顔とは違う、切ない顔をしていたからだと思う。
真っ赤な顔なのに眉間寄せてる切ない顔に、何故か胸あたりがドキリと鳴った。
いつもの俺と違って気持ち悪い。そして追おうとしている俺が居るのも気持ち悪い。
初めての感覚にどうしていいかわからなくてあいつを目で追った。

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