本部と旧本部を往復する毎日。
それは書類運びだったり、実験のためであったり、目的は様々。
リヴァイ班の面々にも関わることが増え、それなりに仲良くなった頃。
「…………」
「…………」
まただ。
このごろ、たまに後をつけられている。……いや、つけられているというよりは、見られているのだろうか。
大体本部に居る時で、食堂や廊下、外の訓練場。様々な場所で視線を感じる。
多少気配が消えているが、呼吸や僅かな服の擦れる音まで消せきれてはいない。呼吸の感じから、女性だろうか。
ある時。廊下で再び見られていることに気づいた俺は、タイミングを見計らって気配がする方に振り向いた。
……すると、マフラーに黒髪の少女と目があった。
見覚えのある顔だ。誰だったか……確か、104期の主席で入った子だ。イェーガーと仲がいい……。
「…………アッカーマン、か」
「はい」
あまりにもピッタリと目が合ってしまったので、アッカーマンも逃げることはしなかった様だ。
僅かな動揺が表情から読み取れる。
「…………個人的に、人をじろじろ見ていていいとは思わない」
「……はっ」
「何か用が有るのなら、声をかければいいだろう?」
「!」
はっとなって顔を上げたアッカーマンは、驚いている様な表情だった。
声をかければいい、という部分にだろうか。
イェーガーから少し聞いた彼女の感じだと、きっと隔離されている彼を心配しての事だろう。
リヴァイ班はもちろん、イェーガーもリヴァイも本部に来ることは滅多にない。
ハンジは結構な確率で篭っている。
消去法でイェーガーの状態を聞ける人間を選んだ結果がこれだろう。
「……そうだな……確かもう一人居たな。金髪の」
「アルミン・アルレルトの事ですか」
「あぁ。この後訓練など予定は」
「ありません。終わりました」
「なら呼んできて、兵舎の前で少し待ってろ」
百聞は一見に如かずと言うからな。
一応エルヴィンに話だけ通しておこう。
レイ分隊長に声をかけるかどうしようかと迷っていたら、気づかれてしまった。
目が合った時は、少し、恐怖を感じた。感情を映さない青い目が、私をまっすぐ見ていたのだ。
逃げられない。
名前を呼ばれ、彼の前に立てば、やんわりと尾行は止めろと言われた。
そして、次にはアルミンを呼べと。
意図がわからない。
でも、そう言われたから、レイ分隊長と別れてアルミンを探した。
「……ジャン」
「うお、み、ミカサか。どうした」
「アルミンを見なかった?」
「あー、確か……部屋の方に行ったな。
探すの手伝おうか」
「……アルミンを見かけたら、兵舎の前に来てほしいと」
「わかった、伝えとく。しかしミカサ、どうして兵舎の前なんだ」
「レイ分隊長に呼び出された」
「…………はあっ!?お前ら、何かしたのか!?」
「していない……と、思う、ので、問題ない」
何かあったなら言えよ、と言い残してジャンは部屋の方へ去っていった。
もう少し探してみよう。
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