05

豊かな黒髪を後ろに結わえていて服装は普通に普段着みたいな感じ。どう見ても旅人じゃないよね。……何でこんな所に倒れてるんだろ?

「仕方ないわね。ちょっと、あんた起きなさいよ!」

リーナが乱暴に女性の肩を揺さぶる。

「おいリーナ!やめろ!」

「だぁってこんな所で伸びてても仕方ないじゃない」

「リーナ〜!ザスの言う通りだよ〜!やめて〜!」

うん。俺もザスやセマと同感。
ってゆーかリーナ白魔道士なんだからそんな事しちゃダメでしょ。

「……あっ!リーナちゃん!こ……この人……今動いたよ……!」

遠巻きに見ていたモヤシが悲鳴に近い声で叫んだ。その一声で一同、謎の女性に注目した。

「……う……ん……」

「あんた!大丈夫?」

女性はリーナの顔を見ながら二、三回瞬きをするといきなり、がばぁっと起き上り辺りを見回し始めた。
意外と元気だなぁ。

「お姉さん何でこんな所に倒れてたの?」

俺は女の人のそばにしゃがんで聞いてみる。絶対何かあったと思うもん。

「えっと……う〜ん……え〜……何でだったんだっけ……?」

ひとしきり頭を抱えて悩んだ後、逆に聞き返して来た。
……いや、俺に聞かれてもわかんないし……。

「っていうかあんたコーネリアから来たんでしょ?名前はなんて言うのよ?」

横からリーナが俺を押しのけて来たから俺は仕方なく立ち上がった。あ〜あ、早く洞窟行こうよ〜。

「自己紹介がまだでしたね!私の名前は……」

一瞬の沈黙。

「えっと……なんでしたっけ……?」

あはは……と女の人の乾いた笑いだけがこの森の中を響き渡る。
次の瞬間にはリーナのやかましい声が森にこだましていた。

「あんたそれって……記憶喪失!?これまでの事、全っ然思いだせないの!?」

リーナの気迫に女性は明らかにビビっている。まあ、あんな勢いで迫ってこられたら誰でもビビるけど。

「本当にわからないの〜?」

「え……ええ……」

皆の異様な興奮の中、女の人は困惑しながらも何とか声を絞り出した。
その声はか細かったが、ここにいる皆を更に興奮させるには十分だった。


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