02

振り返って見てみれば短髪の金髪碧眼ひょろひょろのモヤシ男が手にショートケーキの乗ったお皿を持ち、緊張しきった顔でリーナをじーっと見つめていた。若干気持ち悪い。

「ああ、ウィルじゃない」

リーナの知り合い?

「り……リーナちゃん!すっごい良い話知ってるんだけど聞きたくない……!?」

リーナを見つめたまま、またもや裏返った声で話し始めた。
……完璧にリーナしかみえてないな。よ〜し♪
俺は、ウィル……と言うらしいモヤシ男の横に立ってフォークでショートケーキの上の苺を刺し、奪った。
ん〜、やっぱすっぱいね♪

「ルノス〜。人の苺食べちゃだめだよ〜」

「いーのいーの」

隙だらけだから。
と、最後の言葉は心の中だけに留めておいた。

「あ……あれ!?僕の苺は……!?なんで無くなってるの!?」

あ。今頃気づいた。
まあ、もう遅いけどね。

「せっかく最後に食べようと残しておいたのに……うう……」

うわ、この人苺無くなったくらいで泣いてるし……引くわ〜……

「そんなことより良い話って何よ、聞きたいわ」

「き……聞きたいんだったら今夜僕のお家で……」

「良いから今ここで話しなさい」

「は……話すから放して……」

リーナに襟首を掴まれて半泣き状態だし。ダメダメだね、この男。

「早く話しなさい」

「あ……あのね……最近、埋蔵金のある洞窟の話しを聞いたんだ……それで……」

埋蔵金、という言葉にリーナの目の色が変わったのは誰が見ても一目瞭然。すごい勢いでウィルに詰め寄り、聞きこみ開始。

「どこよ!どこなのよそれ!」

リーナの気迫に驚き一瞬たじろいだウィルだったが、震える手で懐から一枚の紙を出し、リーナに渡した。

「あ、これって地図じゃん」

リーナの横から俺は紙を見た。
雑だが何とか地図とわかるシロモノだった。

「……これってここからそんなに遠くない所じゃない……!早速明日から行くわよ!」

やっぱりそう来たか!ま、俺も行く気満々だけど。

「楽しみだね!」

「お宝とか、い〜っぱいあるのかな〜?」

セマも行く気満々の返事。……だけど若干一名あまり乗り気じゃない顔をしながらこっちを見ている。

「そんなもの本当にあるわけないだろ」

「そんなの行ってみなきゃわかんないじゃない!あんたは行動しないからいけないのよ!」

「は……はあ……」

リーナの一喝であっけなく折れるザス。……やっぱ弱いね。
……そういえばウィルとかって人も……

「リーナちゃん!僕も一緒に行くよ!」

やっぱり。
ウィルの提案にリーナは疎ましそーにウィルを見やる。

「あんたがいたってハッキリ言って邪魔よ」

「僕だって城の傭兵だよ……!戦える……!」

うそ!?これでもこの人、城の傭兵!?
……この国も長くないかもね……。
そう思わずにはいられなかった。
リーナは今もまだテーブルの横に突っ立ったままのウィルをじーっと見つめている。……というか睨んでる。

「まあ、自己責任でついて来るならいいわよ。あたしたちは一切あんたの事なんて面倒みないから。怪我しても何してもあんたのせいよ」

その言葉を聞いて、ウィルは真っ直ぐリーナの瞳を見据えて一つ大きくうなずいた。

「うん!僕がんばる!」

「じゃ、明日の朝に噴水の前よ。よろしく」

「わかった!じゃあ僕はこれから気を落ちつけに中庭に行ってくるよ!」

手を軽く振って足取り軽く人の間をすり抜けて行った。
……ってかホントに付いて来る気なの?あのモヤシ。絶対無理だって。だって俺に苺食べられたの気付かないくらいの奴だよ?
そうだ!面白そうだからちょっとからかって来ようかな。

「俺ちょっとあのウィルって人と話して来るね!」

「ん、ど〜ぞ。そこそこで帰って来るのよ」

「はーい!じゃ!」

返事をしながらもう俺は大きな扉に向かって深紅の絨毯の上を走り出した。……まあ走りだしたって言ってもテーブルはいっぱいあるし人は沢山だしそんな速くないけど。
って言うか俺、中庭の場所知らないんだけど。
ま、何とかなるか。


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