02
卒業まであと3ヶ月といった日、事件は起こった。
担任の教師から聞いた話では今、トラファルガー・ローという生徒が地下の部屋にある容疑がかかり軟禁されているらしい。
この学園に入学した時から首席の生徒のスキャンダルに学園は震撼した。
リーシャの反応はにやにやしたものだ。
しかし、その容疑の事件を学生の間に飛ぶ内容に真顔となる。
「恋人の居る女性に横恋慕したって」
「うぇ、まじ!?」
つい叫んでしまった。
ついでに女らしからぬ顔で。
なんという失態なのだ、落ち着けマイフェイス。
「うわ、顔ぶっさ。今のあんたぶっさグランプリ優勝並みよ」
友人の定評価に煩いと言ってちくしょうと歯噛みする。
ローが下手を打ったのなら喜んで軟禁場所へ行き盛大に笑ってやったのに。
よりにもよってゼロ距離システム絡み。
一番関わり合いたくない組み合わせ。
しかし、と友人が眉を下げる。
「あんたに脈ありな気がしてたんだけど、変なことになったよね」
友人の言っている内容が意味不明なのだが。
パンをむしゃりながら流し聞いた。
「よりにもよってゼロ距離システムに認められた二人に近付くなんて倫理観を外してるよね」
「ふーん」
リーシャはそう思わなかったがそんな意見など誰も聞きたくはないだろうと黙る。
「でも、やっぱり変なの」
「なにが」
「だって、あんたよりも多く接触しないとシステムは反応しないと思うんだ」
「私はあいつとそんなに会ってない」
「いやいや、会ってるの!」
会いまくりだと主張されてそんなに合ってないと否定するを繰り返す。
「兎に角、なにか可笑しい!」
「ふうん」
「もっとトラファルガーくんに興味もってあげなよ」
呆れた口調で説得されたが、そんな気は持たない。
持つわけがない。
「まーまあ。取り敢えずお見舞いにくらいは行こう」
「なんで私が」
「い、く、の!」
友人に圧されて渋々頷く。
彼女は押しが強いのでNOと言えない。
「はぁ、しんど」
ぐちぐち言うが勿論友人は全く気にしてない。
そんな気遣いはしないぞと暗に言っているのだろう。
放課後になり皆が教室に残ってローのことをあれこれと噂している。
それを聞きながら担任に聞きに行く。
教室を出て階段を降りる。
「失礼します」
担任のデスクへ行くと担任はいつもと変わりなく電子プリントを採点している。
「先生ちょっと良いですか」
友人が声をかけると顔をあげた先生はおや、という顔をしていた。
普通、こういう時は電話対応に追われると思うのだが。
落ち着いた空気に友人と目配せで共感しながら担任は困ったようにこちらを見てくる。
「彼に面会をしたいんですけど」
「ごめんなさいね。そういうのは無理よ」
そう言われるのは分かっていたがあっさりと言われて脱力する。
どうしてのダメなのかと聞くとやはり情報規制とやら。
まあそれも個人を守る為なのだから仕方ないとして。
事件を大雑把に言っておいて今さら守るもなにもないと思うのは嫌な気持ちになる。
「先生はどう思ってるんですか」
口をするりと出た。
担任は目を剥いて聞かれると思わなかったのか、困惑している。
「先生、中途半端な情報だけだされて卒業間近なのにあまりにも」
それ以上言葉が言えない。
相手は大人とは言え言えないことがあるのだろう。
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