03
担任は結局答えてはくれずにもう教室に戻りなさいと言われて渋々二人で戻る。
担任が妙に冷静なのが気になる。
そもそも横恋慕しただけで軟禁するのもやり過ぎな気がした。
というか、悪いのはたった一人だけというのはやはり違和感がある。
彼は嫌悪を抱く人に無理矢理詰め寄るような人格者ではないと友人は語るが、自分にあれほどしつこく色々悪口を言ったりしているので説得力皆無であろう。
「あんたには特別に意地悪なだけだって」
「なお質が悪くない?」
他の人にはちゃんと距離を取って対応してるとは。
それなら己にも、それをやれ!
とむしゃくしゃした。
放課後、席を立ち帰ろうとすると担任に呼ばれる。
「ちょっと良いですか」
「はい」
なにかの連絡だろうかと軽い気持ちで、職員室の奥にある個室へ通された。
ここに来てまで言うこととはなんだろう。
「貴方に今回の事件の調査補佐を頼みたいの」
そう頼まれ、この学園はそういう進路も関係していたなと思い出した。
所謂捜査などする系統の仕事を選ぶ人も居ると聞く。
「私、進路調査でそういう関係を書いたことありませんよね?なぜ私に?」
「トラファルガーくんきってのお願いなの」
「容疑者の願いを叶えてるってことですか?」
眉間にシワが寄る。
ゼロシステムにおいてやらかした事件の加害者はかなり世間で肩身の狭い人生を送る。
そんなの常識だ。
だというのに担任の冷静な発言と願いを叶えるという異常な言動に信じられないと内心怒りが燃える。
「先生って平等のつもりなんでしょうけど、私は本件に関わり合いたくありませんのでお断りします」
「なにも貴方だけではないの。明日に同じように補佐を募るから、これはその前提」
「余計に意味が分かりません……え、隠蔽するつもりですか?」
心底軽蔑した目を今しているだろうリーシャに担任が苦笑して首を横に振る。
「取り合えず考えてくれるだけでも良いから」
と、それから直ぐに部屋を出た。
もう帰っても良いと言われたので。
もやもやが止まらない。
これもそれも、いきなり色んなことを背負わせてくる世の中が悪い。
(むかつく)
いんや、彼が悪い。
文句を言いたくてたまらない。
気になってしまうとそれを消えさせることなんて出来ないのだ。
全く、それを理解してきて仕組まれた気さえした。
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