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中編


「−−!」

生々しい声が纏わり付く。

「………」

私は目の前で繰り広げられている行為に動けずにいた。

「何見てんだ。お前も加わるか?」

まさに真っ最中な人がニヤリと笑いながらこちらを見た。

「………っ!」

あまりの光景に私はくらりと目眩を起こし、ふらりと倒れた。

「おい……って遅かったか!」

「お前がちゃんと確認しなかったのがいけなかったな」

「暢気な事言ってる場合かよ!この子早く医務室連れて行くぞ!少将も少将ですよ、また女海兵たぶらかして!」

完全に気を失う前に、さっき会ったキャスケット帽子を被った人ともう一人が私を見ているのを感じながら意識が沈んでいくのを感じた。





「たく、あの人はなんであーゆー事を執務室でするかなぁ」

「仕方ないだろ、あの人は誰彼(だれかれ)構わずなんだから」

「ペンギンはいいよな。俺なんてロー少将に惚れた女が押しかけるのを毎回阻止しなくちゃならねェんだぞ」

「まァ女癖は治してほしいがな」

意識が浮上するのと同時にそんな会話が聞こえ、私は目をうっすらと開けた。

「目が覚めたか?」

「……ここは?」

ペンギンと英語でロゴのついた帽子を深く被った人が私の顔を覗き込んできた。

「さっきは悪かったな。ここは医務室だぜ。お前倒れたんだよ」

キャスケット帽子を被った人が、バツが悪そうに説明してくれた。
その言葉に気を失う前の記憶と光景が蘇る。

「……嫌なもの見た」

「まァいいものではないな」

「本当ごめんな!」

キャスケット帽子の人が謝るのを見てこの人は悪い人ではなさそうだと感じ、クスリと笑いながら「大丈夫です」と答えた。

「それより面接がこれから始まるが、起きれるか?」

ペンギン帽子の人が気遣うように聞いてくるので私は頷いた。
面接は大切な任務の一つだから受けなければならない。

「そういえばまだ自己紹介してなかったな、俺はシャチ!少将の部下だ」

「同じく少将の部下のペンギンだ、よろしく」

「あ、よろしく……?」

まだ面接に受かった訳でもないのに、自己紹介をしてくる二人に疑問を抱きながら握手をした。







これは一体どういうことだ。

「えー、これからトラファルガー・ロー少将の秘書面接を始めたいと思います」

ずらりと広い部屋に並んだ椅子に腰をかける女性達。
化粧に気合いが入っているのは気のせいじゃないよね?

「進行兼審査官を務めるのはこの俺、ロー少将の部下のシャチだ」

「同じく、ペンギンだ。厳しく審査させてもらう。そして中央に座っているのが−−」

「トラファルガー・ローだ。精々頑張ってくれ」

かっちーん。
私今イラッと来ましたよ。
自分と同じ人が一人くらいいるはずだと横を向いたら、そこには二十人はいる女性達がもれなく全員頬を染めて、中心人物にメロメロだった。
おいぃ!!目を覚ませぇ!!
騙されてるよ!
私は一番端っこに座りながら密かに地だんだを踏んだ。
席に座ろうとしたら皆がすちゃりと背筋を伸ばして化粧を相手に勝負していて、残りの椅子に座るしかなかったんだもん。

「では最初の方からどうぞ」

「えっと、東の海からきた……」

あの人が最初なら私は最後なんだ。
そんな事を思っていると、机の上に行儀悪く足を乗せてお腹の上で手を組んでいる少将が口を開いた。

「俺の相手は出来るか?」

「……ぇ」

ありえない発言に私は聞こえないような声を上げた。

は、なに、何この人。

「……少将」

「なんだよ。大切な事だろ」

イケナイ言葉にペンギンさんが咎(とが)める。
大切じゃないし!
あんたの事情とかどうでもいいわ!

「で、どうなんだ」

「え、え……出来ます!」

答えるな女秘書希望Aー!!


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