薬研藤四郎の失敗 ※花丸ネタ

ある日、薬研から頼みごとをされた。

「大将が畑で栽培してる はぁぶ って草、少し分けちゃくれねぇか?鶴丸が騒いでたやつが良いんだが」

思えば彼から何かを頼まれるなんて殆どなく、すっかり嬉しくなってしまい二つ返事で了承したのだけれど…。

──────────────

平和な昼下がり。たまには…と思い立ってワンピース姿で薬研の部屋を訪ねていた。ここ最近の任務や、いま我が本丸で流行っていることは何だとか、そんな他愛もない話をしていたら薬研が唇を重ねてきた。

「ん、ん…はぁ」
「大将、確か日課任務はもう終いだったよな?」
「うん…今日はもう、ゆっくりできるよ」
「そうか。なら好都合だ」
「?」

優しく押し倒される。い草の香りを感じながら薬研のキスに応えていると、いきなりワンピースの裾を胸元までたくし上げられ、しかもブラまで力任せにずらされた。こんな性急な求められ方はされたことがない。

「や、薬研っ?」
「大将、悪いがちとじっとしててくれ」
「…いや、それは構わないけど…」
「もし暴れるようなら縛らせてもらうから、そのつもりで」
「!?」

突然の脅迫めいたお願いに困惑する。こんな薬研は初めてだ。取り敢えず丸出しにしておく訳にもいかない胸を両腕で隠す。薬研は私に馬乗りになったまま、近くの文机の引き出しから小瓶を取り出した。

「…何、それ」
「先日大将から頂戴した はぁぶ の精油だ」
「ハーブ…確か鶴丸が騒いでたやつだよね…てことは薄荷?なんでいま取り出すの?」
「いやなに、元は弟たちの虫除け用に作ったんだがな、違う使い方もできるらしくてな」

にやっとする彼を見て背筋が凍りつく。嫌な予感しかしない。瓶を光にかざしてみたり、手に取って品質を確かめている隙に少しずつ身体を動かして逃げようとしたのだけれど。大将は縛られたいのかと釘を刺されててしまってはどうしようもない。でも、だからと言って縛られるのも変なことされるのも、どっちも御免だ。不安でいっぱいな私をよそに、薬研は楽しそう手をこちらに向けた。オイルでヌラヌラとしているそれは、酷く卑猥に見える。

「…ま、まさか」
「そう硬くならず按摩とでも思ってくれ」
「按摩って言われても…」
「じゃ、その腕を退けてくれ」
「…」

下手に抵抗して変なことをされても困る。諦めて胸を覆っていた腕を解くと、両サイドから寄せる様に揉まれた。いつもとは違うオイルの感覚にゾワゾワする。

「ふ、…んっ」
「はは、良さそうだな」
「良く…ないっ」
「へぇ。俺の見当違いだったか」
「ひぁ!」

胸の突起を摘まれて身体が跳ねた。そこを弄ればグズグズになってしまうことを、彼は熟知している。縛るだなんて脅しがなければもう少し抵抗できるのに。

「ふむ。もう少し強くしても大丈夫そうだな」
「…!?」

痛くされるのかと一瞬身構えたが違っていたようで、薬研は至極楽しそうにオイルを指先に取り、あろうことかそれを突起にだけ塗りつけてきた。馴染ませるように弄られて、その度に身体がビクビクする。

「ぁっ、ん、」
「…そろそろか?」
「…え?あ、や!なにこれっ」

塗られたところから、次第にひんやりとした不思議な感覚が広がっていく。

「んっ」
「効いてきたようだな」
「ぁっ ん!や、…つめたっ」
「どうだ、大将」
「や、薬研っ これヤだっ」

ふぅ、と胸元を吹かれるとまるで氷を押し付けられたような感覚になる。観察するように眺められているのが我慢ならない。こんなにも触って欲しいのに、息を吹きかけたり周囲をくるくると指でなぞるだけで、完全に焦らされている。

「は、ぁ…」
「こりゃ反応充分だな」
「や、やげん、舐めて…」
「残念だなぁ大将。こいつは肌には塗れても、あんまり口にしていいもんじゃねぇんだ」

恥をしのんで頼んだのに、しれっと断られて泣きそうになる。

「ひ、ひど…」
「あぁ、もうそんな顔しないでくれ。可愛がってやりたくなるだろうが」
「う…ぅ」

胸の突起をぎゅっと摘まれた瞬間、びりびりと身体中に電流が走り耐えていた涙が落ちた。

「ふ あっ…!」
「気持ちいいか?」
「んっ んっ、気持ち、いぃっ」
「はぁ…本当に大将は強請るのが上手いな」
「んんっ」

ぐにぐにと刺激され続けて、まだ触れられてもいないお腹の奥が締まるのを感じる。自身でもそんなつもりはないのに、薬研に良いようにされているのが少し悔しい。彼の下半身に手を伸ばして反撃したいが、手が震えてそれですらままならない。

「は、はぁ…はぁ…」
「じゃ、次はこっちだな」
「え…まだ、何か、するの?」
「あぁ本当にしたかったのはこっちでな」

まだ疼きが治らない胸から手を引き、再度オイルを馴染ませた手をやったのは内腿だった。

「!」
「腰抜かすなよ、大将」

にぃ、といやらしく微笑んだかと思うと素早く下着の隙間から指が入り、茂みの奥の陰核をぐりぐりと弄られた。

「ひゃ!」
「はは、相変わらず敏感だな」
「薬研、なにを……あっ!」
「ふむ。効いてきたな」
「っ!!」

初めての経験に頭が混乱してしまう。こんなにもそこが疼くのは初めての経験だ。

「たーいしょ、そんなにいいか?」
「やぁっ」

耳元で囁かれた声がダイレクトに下半身へ響いてくるような強烈な感覚。オイルのせいなのか、それとも自分の体液なのか。どちらとも検討がつかない滑りで火照らされていく。

「いい顔だなぁ」
「はっ…ぁ、いじわるっ」
「褒め言葉だな。さて、次はどうして欲しい?」
「…ぃゃ…言、えな」
「そうか、言えねぇか。ま、このままひたすら弄り倒すってのも…いいな」
「!?」

ゾッとする提案に絶句したときだった。

「やげーん。主こっちに来てなぁい?」

障子戸の向こうから、清光の声がした。

「!?」

薬研が素早く私から離れる。パニック状態のまま取り敢えず私も慌てて身を起こした。

「加州か。大将ならいるぜ。ちょっと待っててくれ」
(や、薬研!)
(ほら。早く行ってやらねぇと不審がられるぞ)
(っ!!)

こんな状態で放り出すなんて信じられない。恨めしい気持ちを押し殺して着衣を整えていると、心底楽しそうな彼と目が合う。これほどの仕打ちがあるだろうかと睨み返して、障子戸を開けた。

「清光、どうしたの?」
「あーやっぱりここにいた。ちょっと玄関まで来てくれない?政府の人が、さーばーえらー とか何とかでお詫びの品を持って来てて。主の受け取り印が欲しいみたいなんだけど声紋認証だからって」
「…分かった、いま行く」

薬研の部屋から離れる寸前、もう一度彼を見やったが、相変わらずの楽しそうな顔に腹が立った。

────────────────

「主、でぇと中にごめんね」
「ううん、清光こそ。もう今日の任務は終わったのに呼びに来てくれてありがとうね」
「別に、このくらいなんてことないって!荷物、部屋に運んでおくね」
「ありがとう」

玄関先で無事に受け取り作業を済ませ、清光の後を追って立ち上がったときだった。ひゅっと足元に風が吹き込んだ。

「…ひゃあ!」
「主!?」

膝から崩れ落ちて動けなくなってしまった。足元が酷く熱い。特に先ほど薬研に散々嬲られた箇所が。オイルを塗りたくられた事を思い出し、はっとする。

「どうしたの?具合悪い?怪我した?薬研呼ぶ?」

心配した清光が荷物を置いて駆け寄ってきてくれたが、こんなこと言えない。具合が悪い訳でもないし、ましてや怪我でもない。だからといって薬研に頼るのは、今は絶対に嫌だ。

「大丈夫…ちょっと目眩がしただけだから」
「でも…なんか顔も赤いし…」
「本当に大丈夫だから、荷物お願い」
「…」
「清光」
「…わかった。先に主を薬研の所まで運んでからね」
「え、…ちょっ、きゃ!」

ムリやり抱えられた。いわゆるお姫様抱っこというやつ。

「きっと薬研に診てもらったら良くなるからさ。それまではちょっと我慢しててよ」

純粋に心配してくれているのが本当に申し訳ない。清光はそのまま、薬研の部屋へと足を早めた。

「…っ」
「主、辛い?あと少しだからね」

違う。辛いのは辛いけれど、そんなんじゃない。オイルが塗り込まれたそこに風が当たって、ずっと氷を押し付けられているような、むしろ焼け付くような感覚に耐えかねているだけだ。心配してくれている清光に、心の中で何度もごめんと繰り返した。

「薬研!主の様子が変なんだ、診てくんない!?」

清光が障子戸の向こうにいるであろう薬研に呼びかける。少し間があって、薬研が顔を出した。

「どうした?取り敢えず中へ」
「うん!」

焦っている清光とは対照的に薬研いつも通りだ。原因が彼の行いであるが故に余裕があるのかもしれない。座布団を折っただけの枕のもとへ、清光が優しく下ろしてくれた。

「主、さっき急に倒れたみたいで、顔も赤いし呼吸も浅いんだ」

清光の説明を聞いて、薬研はなるほど、とだけ返し白々しく診察してきた。私の怒りが少しでも伝わるように、薬研と視線を合わせないようにする。

「ふむ。こりゃ一過性のものだろう。じきに治る」
「本当?主、大丈夫?」
「あぁ。きっと疲れが出たんだろう。ここで休んで行くといい」
「良かった〜!」
「!?」

冗談じゃないと反論しようとしたけれど、清光が心底安堵した表情を寄越したから思わず飲み込んでしまった。

「良かったね、主。治るまで薬研が診ててくれるって」
「や、私、自分の部屋で休みたい…」
「ワガママ言わない!大人しく彼氏に看病されてなって!」
「…ぅ…」
「つーことだ、大将。ゆっくり休んでいけよ」
「……」
「じゃあ薬研、あとよろしく」
「あぁ、任せてくれ」

清光が去った後、薬研と二人きりは非常に気まずい。いや、むしろ私は怒っているのだ。視線が合うように、ちらりと見やってからわざとそっぽを向いてやった。

「なんだ、大将。怒ってるのか?」
「…当たり前でしょ。あんなことされたんだから」
「いやいや、悪かった。まさか担ぎ込まれるほど効くとは思ってなくてな」
「知らないっ」
「んー。とは言ってもなぁ…」
「きゃ!」

ワンピースの上から陰核の辺りをぐっと押さえ込まれた。そのまま左右に指を動かされる。滑りも手伝って刺激が強く、身体がびくびくと震える。

「ゃ、あっ…や」
「この状態では部屋に返すこともできんな」
「だ、れの…せぃだ、と」
「だな。だから責任とって俺に看病させてくれ」
「や!」

はらりとワンピースの裾を捲りあげて薬研が覆いかぶさってきた。彼の綺麗な膝が私の陰核を刺激する。

「は、…ぁんっ」
「本当に凄いな」

舌舐めずりしながら薬研が私の身体を観察していると思うとゾクゾクした。ちっぽけな怒りなんてどっかへ吹き飛んでしまって、今はもう、ただひたすらに彼に満たされたい。

「腰をあげてくれるか」
「…ゃだ」
「大将」
「……ん…」

素直に従うとショーツが取り払われ、ワンピースとブラも胸の上までたくし上げられる。直後、薬研が噛みつくようにキスをしてきた。

「んっ…ふ、ぁ…ん」
「ん、…はぁ…大将、うまそうだな」
「ひゃ!あっ…ゃあ!あっ!あ!」

薬研の舌は耳孔を、手は胸の突起を、膝は陰核を。身体中に快感を与えられて遂には達してしまった。

「っは、はぁ…はぁ」
「…いつもより早いな?」
「う…る、さぃ、はぁ」

配慮のない言葉に反抗してはみたものの、この有様だ。なんと言われても仕方がない。力が入らない身体をどうしたもんかと思っていたら、カチャカチャと金属音が聞こえた。

「…薬研、」
「すまねぇなぁ大将。もっと可愛がってやりたかったんだが、俺も我慢の限界だ」
「や、まだ、待っ…!」

私の制止など無視して、自身のそれで一気に貫いてきた。達したばかりのそこで受け入れるには余裕がなく、身体が痙攣する。

「ひっ…ぁ!」
「っ、く…」
「あ、あ、ダメ…」
「たいしょ、力、抜いてくれっ」
「ぃ、ゃあ…ムリっ」
「…っくそ」

お互いに強く抱き締めあって落ち着くのを待ってはみたものの、どうにも拉致があかない。薬研が動き易いように力を抜こうと試みてみたけれど、オイルのせいか、相変わらずそこがジンジンとして刺激を求めてしまう。

「や、やげん…」
「はぁ…こりゃあ自業自得、だな。動くぞ」
「へっ?…あ!んぁっ」

痺れを切らした薬研が腰を振り始める。いつもより荒々しいのに、それですら感じてしまう。余裕のなさそうな彼の表情もたまらない。

「ちっ、ダメだっ」
「んあっ…あ!やげん」
「たいしょ、…っく…出るっ」
「ひ…ぁああ!」

薬研のそれがどくどくと脈打つのを感じながら、彼を抱き締めた。

──────────────

情事の後、お互いに着衣を直したら、薬研は必ず私の太ももにすり寄ってくる。膝枕だなんて、最中の猛った彼からは想像もできないのだけれど。

「あぁ…失敗した」
「どうしたの?」
「……」
「薬研?」

むくれた彼がちらりと私を見る。

「俺以外に姫さん抱っこされてる大将を見るのは胸糞悪ぃし」
「…それは」
「いや、俺が原因なのはわかってる」
「…うん」
「大将は思った以上に乱れやがるし」
「…!」
「極め付きはあの清涼感だ。大将の中に挿れてから俺にも付着して、すーすーして敵わん」
「…!!」
「大将がいつもより早かったのも納得だな」
「!!!」

羞恥に耐えかねて立ち上がる。鈍い音と共に薬研の頭が畳に打ち付けられたが、知ったこっちゃない。

「…ってぇ…急にどうした、大将」

オイルが入った小瓶を手に宣言する。手が震えているのは復活した怒りのせいだ。

「これは!一期一振に預けるから!」
「は!?」
「虫よけならその都度、必要な分だけ配るように言うし!」
「おい、大将」
「ハーブの世話をしている長谷部には、採取の希望があったら私まで報告するように命じるし!」
「!!」
「もう変なことには使わないように!」
「あ、おい待て大将!」

薬研の機動力に負けまいと、私は一目散に一期一振の部屋へとダッシュした。


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