○ まっぷたつは粘着テープで

 オカルトな話をしている時に『今後ろで!』というイタズラでした。鉄板です。皆さんノリがよくていらっしゃる。

 特にジェノス先輩なんか、せっかくのカルメ焼きを丸焦げできそこないベッコウ飴にしてしまうというリアクションを取られました。
 お玉をガンと置き、アルコールランプを消すことさえせず立ち上がります。ケイちゃんに近づくと皮膚側も筋肉側も分け隔てなくべたべた触り、


「糸のたぐいはついていません」


 ひょいと小脇に抱えたケイちゃんを実験室へ連れ出しました。続くサイタマ先輩とゾンビマン先輩の後を追って私も立ち上がります。ネタの引っ張りが長すぎやしないでしょうか。
 椅子を下ろした実験机にケイちゃんを置きます。
 全く躊躇はありませんでした。
 えいやとばかりのチョップ一発。
 ジェノス先輩は人体模型を縦まっぷたつにぶち割りました。


「うえええええ!?」


 当然の顔でサイタマ先輩やゾンビマン先輩も人体模型の中を覗き込みます。誰か! 誰か良識をお持ちの方はいらっしゃいませんか!? 無免ライダー先輩助けて下さい!


「仕掛けはないみてえだ」
「へー中は空洞なんだな」
「なんてことを! どうするんですか人体模型ハーフサイズにしちゃって!」
「大丈夫だコガラシ! 部室にボンドがある」
「木工用です!」


 大騒ぎは廊下まで響いていたことでしょう。
 入ってきたまま開けっ放しの理科実験室の扉、


「……おい!」


 青筋を立てた鬼が!
 制服の裾からいつも白いふんどしをちらつかせている重戦車フンドシ先輩に、冷静なフリをして実は一番キレるナイフのブルーファイア先輩、異能力及びヒーロー活動愛好会の心のライバル手品部部長テジナーマン先輩の御三家、風紀委員です!


「お前達なにをしている! なんだそれは……本当になんだそれ!? 壊したのか! 誰がやった!?」


 す、少なくとも私ではありません!





 人体模型が踊っていたとかたくなに主張する三人の見立てではこうでした。


「煙草吸ってる時はいつもイヤホンでしかも音量最大だからな。人体模型が動く音は今まで聞こえなかった」
「んじゃあコーヒーの粉は人体模型がどっこいしょって動いたときにでもにぶつかってこぼしたんじゃねえの」
「体の動かしづらい準備室を出て、広いスペースを求めて実験室へ。タバコの煙に巻かれた肌が灰色がかり、人体模型がまるでゾンビのごとき様相だったのだろう。なるほど……人体模型は踊るのか」

「……」


 しかし人体模型が動き出すところをついに私は見れませんでした。透明テープでぐるぐるまきにして再度動き出すのを一時間待ったのですが……。

 結論。
 あのお三方が私を担ごうとしていたのです。

 ……そのためだけに空手チョップで学内の備品をまっぷたつにしたのは、ちょっと恐いですね。

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