試食会 |
作業台の上には幾つもの試作品が並べられている。 目を輝かせてながら説明を聞く従業員。 「以上、秋限定の10種です」 全員フォーク片手に構える。 「それじゃあ…」 「いただきまーす!」 一斉に試作品めがけてフォークを突き刺す。 「おいしいー!」 歓声が響き、一口含む毎にキャーキャーと騒がしい。 呆れ顔で皆を見る。 「ちゃんと評価してよー」 「はーい!」 良い返事をしながらも、手と口は止まらない。 「もぉ…」 「いーんじゃねーの」 もう一人のパティシエが、無花果のタルトをパクリと食べる。 「試作品って言っても、お前がコレだ!って作ったんだろ?」 ショコラマロンをフォークに刺して目の前に差し出す。 「全部作りゃいーじゃん」 ニヤリと笑う。 「ちゃんと手伝ってやるよ」 この笑顔と言葉に、いつも私は助けられ、救われていた。 前頁│次頁 |