小さい優しさ |
出勤すると制服に着替え 必要な道具と材料を並べる 慣れた作業とはいっても 段取りの確認は怠らない 「さ、始めますか」 身体に染み付いた作業でも 一つ一つ気を抜かないよう 自身で集中力を高めながら 幾種類もの商品を作り出す 予定通りの数を作り終え ひとつ小さく息を吐き出す 店のショーケースに並べ 後は従業員に販売を任せた 狭い休憩室に入ると 椅子にドカッと座り 帽子を脱いでテーブルに置き 纏めた髪を解いて頭を解放し 静かに目を閉じる 「お疲れさ〜ん」 ドアが開くと同時に聞こえる声 「昼まで休んでろ」 「大丈夫。少し休んだら戻る」 スッと手が伸びて目の下を撫でられた 「根詰めすぎ」 「あ…」 何かを渡される 「それ食って寝てろ」 手の中にはチョコ玉が数個 無意識に笑みが零れていた 前頁│次頁 |