夏の五感 |
陽が高く紫外線も鋭い昼時 畳の上にごろごろと転がる 全開に開け放たれた障子と 縁側の奥は手入れされた庭 煩い蝉の声が耳の奥を突く 偶に吹く風に揺られる風鈴 チリンチリンと涼しげな音 少しだけ中和されるような そんな錯覚をする真夏の熱 無意識に目を閉じて手繰る 纏わりつく湿気と僅かな風 拭われない汗が畳を濡らす 奥の部屋から沸騰する水音 美味しそうな香と共に漂い 部屋中を埋め尽くしていく 卓袱台の上に置かれる物音 畳の上を擦って近付く足音 「茹で上がったよ」との声 ゆっくり目を開き見上げる 愛しい人の呆れ顔に微笑む 玉蜀黍から立ち上る湯気が 風鈴の音と共に揺れていた 前頁│次頁 |