違う人 4.0

いろんな気持ちがあって我ながら面倒くさいから日々人に溶けてしまいたかった。


「さみしいな」
「なにが?」
「ひとつになれないのが」
「そうかな?」
「そうだよ。こんなに近くにいるのに」
「溶けていいの?」
「むしろ溶けたい」



赤いソファで日々人に跨って行為が行われている。
手を絡めながら、日々人の上で揺れながら、乳首を良くされて、背中が反っている。

2人でするこれは何度目だろう。
このソファでするのは初めてだ。


「日々人のそういう顔好き」
ちゃんの手が日々人の頬を撫でる。
「顔だけ?中身は?」
日々人の手もちゃんの頬を撫でる。

「身体は?って聞かないの?」
「なんで」
「好きって言っていいの?」
「言ってよ」
「好き」
「俺も」
「ずるい…」

日々人の首に腕を回す。
ちゃんの細い腕に力がはいる。


「安く聞こえなかった?」
「…少し」
「やっぱり?」



最初は代わりだと思っていたけれど、全てのことに優しくて愛しさを感じた。
他にそういった人がいるようではなかった。


言葉にこそされたことはないが、そういった気持ちを向けられて、好きだと思うのにそう時間はかからなかった。
ひび割れたところにすっと入ってきてくれたようなそんな感覚だった。


罪悪感や背徳感がないかと言うと嘘になる。
その証拠に誰にも話していなかった。
写真も伏せたままだ。

日々人も誰にも話していないようだった。
そのうち六太には話すかもしれないが。




少なくとも宇宙飛行士で私にしか見せない顔は堪らなく色っぽい。
指の骨をポキポキ鳴らす癖も発見した。

完璧だと思っていた人は、まるで違う人みたいだ。
今日々人は壁に当たってもがいている。
どんな事かは話してくれないが。
周りは知っているのだろうか。


私の気持ちに好き以外に名前があるとするなら独占欲。

身体も声も感情も。
今だけ向けられているのは私だけ。


「日々人」
「ん」
「好きです。だーい好き」
「…それずるい」
「でしょ」



いきすぎた独占欲が言葉になる。

「…私の傍にずっといてよ」
返事が返ってこなかったのを気付かないふりをした。


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