3.0

16回目、ソファで「最初はからかうつもりだったのにな」笑われながらキスされた。
「今は逆だもんね」と笑うと
「からかう女はこんな一途じゃねぇよ」と言われた。

愛されていると感じた16回目。





18回目はブライアンの家に呼ばれた。
相変わらず奥さんと仲がいいみたいで、キッチンに立つ奥さんに耳元で愛を囁いていた。
家を出て行く回数が多いのだから、本当は奥さんも薄々ブライアンに別の誰か、がいるとわかっているだろう。
それを微塵も感じさせない器用な人だとちゃんは感心した。
不思議と嫌な気持ちにならなかった。
なったところで彼に見透かされてしまうのが嫌だった。
実際、「大人になりたくてもタバコは禁止な」と17回目の時に言われていた。
喫煙をはじめたばかりの頃だった。
動機まで見透かされて「ごめんなさい」と正直に言うと抱きしめながら「背伸びしなくていいから…いい女にしてやるって言っただろう」優しく言いながら髪を撫でてくれた。
この人にはかなわないなあと心から、安堵してしまうちゃんがいた。



ベルが鳴る。
来客のようだ。

髪がツンツンの日本人の男の子を紹介された。
日々人という名前みたいだ。
体格がよく、背が高い。
どこか可愛いらしさが残る顔は同じ年くらいに見えたので
「日々人は学生さん?」
というと
「おれ25だよ、なったばかりだけど、ブライアンと同じ宇宙飛行士」
と返ってきた。
「こっちはちゃん。おれの隠し子だ」ブライアンが紹介してくれる。
「隠し子」がよほど面白かったのか日々人とブライアンはケラケラ笑う。

ちゃんはカバンからデッコデコな電子辞書を取り出して和英辞典の「愛人」のところを日々人の目の前に出す。
日々人は目の前の辞書を持ってブライアンを見て怪訝な顔をしたあと、奥さんに聞こえないよう小さな声で
「日本じゃそういうのロリコンって言うんだぜ」
と言った。
私とブライアンは最初に会った時のことを思い出して笑った。

だから18回目ははじめての気持ちに戻った。





25回目の時、ちゃんの家だった。
1人で暮らす家になっていた。
だから、ブライアンは訓練終わりに来たりしてここらへんで会う回数はぐんと増えた。
宇宙飛行士というのは訓練中は監視されたもとにあるので、性欲の処理が大変だと彼は言う。
50過ぎてそんなこと言えるのはブライアンくらいじゃないか、なんて思っていた。

「今日で会うのが最後だ」
唐突に言われた。
月に行くことが決まっていた。
胸が騒ぐ。
それを感じとったのか「月から帰ったら、スーパーブライアンだからな」彼は笑う。
だからブライアンとするのは今日で最後だ、と言われ、よくわからない気持ちのまま抱かれた。
不安が消えずに泣いていた。
「おいおい泣かれると加減がきかなくなるじゃないか」ブライアンは言う。
「じゃあ、めちゃくちゃにしてほしい」と目を見て言うと激しく愛された。
本当はじゃあのあとに(最後に)と付けてしまいそうだった。
最後と口にするのが怖くなって止めた。

「いい女だよ、お前は」
耳元で言われる。
「っ…ブライアンのおかげだよ」

いつもちゃんは指を噛むので、ブライアンの指を口に突っ込まれた。
口の中をうねうね動かされる。
違うところも指をいれられいいようにされているので、声が出ながらフェラをしているように音を出して舐めていると、「噛んで」と言われる。
痛くないかな、と顔を見ながら優しくしていると「甘噛みもいいねー」とニヤニヤされた。
「エロい」
耳で言われ思わずキツく噛んでしまった。



胸あたりにキスマークを付けながら、
「一生お前はおれのものな」
と言われる。


結婚している、奥さんを愛している、ブライアンのワガママだというのはわかった。
1度だけ他の人とした時も全然怒らなかった。
いい経験をしたな、と笑うだけだった。
ブライアンは一途に思われる関係を望んでいたわけではなかったのかもしれない。
彼が今まで独占欲を微塵も出さなかったのが、本質だろう。
ここにきてはじめて見せた一面が嬉しかった。
一生ブライアンのものは本望だった。
また、見透かされたのかもしれない。
喜んで、と口にした。



果てる時にはじめて真剣に「愛してる」と言われた。
この上ない言葉の重みだった。

それが、25回目だった。





月への打ち上げの時、私は管制室後ろにいた。
奥さんも一緒に見送ってよ、と言ってくれていたのに、今でもどうしてそこにいたのかと思っている。


26回目はモニタの向こう、27回目は彼の葬儀だった。


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