2.0

家に送ってもらう時は、電気が付いていない、つまり誰もいないであろう時は中まで上がって誰もいないか確認してもらっていた。
「物騒だから」とブライアンは言っていたが、本音でそう言っていたのか今ではわからない。
ブライアンが罠を仕掛けたつもりなのかもしれないし、ちゃんが大人しく罠にハマっているフリをしていたのかもしれない。


2人分、コーヒーをいれる。
ブライアンのはブラックで、ちゃんのはミルクたっぷりのもの。
ブライアンの手に渡る頃には家の中がコーヒーの香りでいっぱいになっていた。
コーヒーの香りの中、ブライアンの隣でソファにかけているのが何より安心した。
1杯飲んだら帰るのが、ブライアンのルールだった。


玄関先で「じゃあまたな、ちゃん」と言うブライアンにはじめてキスをした。
関係の口火を切ったのはちゃんの方だった。
唇が離れて「おやすみなさい」と笑顔で言うと大きな身体に包まれて「いい夢を」と返ってきた。
耳に響くあの声が忘れられない。

だから、5回目は心臓が飛び出そうだった。




8回目は、やはり誰もいないであろう家に送ってもらった。
いつものようにコーヒーを飲んでいるとブライアンはちゃんにキスをした。
ちゃんが持っていたコーヒーはキスしながらそっとテーブルに置いた。
器用な人だ。
「この前のお返しだ」とニッと笑った。

次のキスは舌がはいってきた。
ちゃんが飲んでいるコーヒーよりも苦い味がした。
ちゅっちゅと言う音に耳が耐えれず「ん…」と声が漏れる。
刺激が強すぎてどうにかなりそうだ、とブライアンの肩を押しながら思っていたら唇が離れる。
「ちゃんはじめてだったかー」
と笑うブライアンにただただ首を振るしかなかった。
あんな大人なのははじめてだった。
髪を撫でられながら「いい女にしてやるよ」と言われたのはなんだか身体のどっかが痺れてしまって、その肩にもたれてしまうほどだった。
また私は耳まで赤いのだろう。
そう思った。

だから、8回目は、ブラックコーヒーの味だ。




15回目はラブホテルだった。
「50過ぎのおっさんが20の子とするってあり得えねー」
ブライアンは笑っていた。
「18の子にmake loveとか言ってる方がありえないよ」と笑ってるうちにキスされた。
どこかスイッチを押してしまったようでそこから止まらなかった。
首にキスされ耳元で「誕生日おめでとう」と言われる。
「ありがとう」と言ってるうちに胸への愛撫が始まる。
この部屋は小さく吐く喘ぎ声も響く。
ブライアンの指は触れるところ触れるところ、当然のように女性を知っていた。
余裕があるのが、
表情や、仕草や、行為に出ていた。
余裕がある目で自分自身の「全部」を見られるのがたまらなかった。


愛撫の時ですら手で顔を隠そうとするちゃんに「手ぇ繋いだら気持ちいいの半分だぜ?」そう言うと顔を隠さないようになった。
代わりに甘い顔で喘ぎながら、自分の指を噛む仕草は官能的でますますブライアンを燃えさせた。

「最後の一線、だな」
「はじめてじゃないのが残念」と言いながら挿れてくる。
「はじめてのような、もんだよ」
「おれはちゃんがハタチまで待ったのにな」と笑う。
ズルい。


1番近い距離で、1番深いとこで彼と20分くらい抱き合っていた。
そのあと動かされた時には、はじめてした同い年の子や、「こっち」の子と比べ物にならないくらい良かった。
実際、絶頂に達してしまった。


「もっとその声聞かせて」
これまでのソファでのキスとか愛撫で、彼は日本人の喘ぎ方とか、声が、つまり恥じらいの文化というものがすっかり気に入っていたようだ。

リクエスト通り切ない声のままブライアン、と名前を呼んだ。
返ってきた自分の名前を、こんなに愛しく思ったことはこれから先あるのだろうか。

だから15回目は、心臓がベットに飛び出していたと思う。


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