エリーはあんまりお酒に強くない。酔うとまるで別人みたいに素直になる。
明日は休みだったし、部屋で二人酒を飲んだ。酔うのは嫌だと言うエリーに、弱い酒だと言ってカクテルを飲ませた。飲みやすいお酒だから疑いもなく飲んでくれて、そして思惑通り酔ってくれた。レディーキラーと呼ばれる、味や見た目よりずっと強い酒。騙したことに罪悪感はあったけれど、酔った姿が見たかったのだ。
「ミヒャエルー」
「なあに、エリー」
甘えた声をあげながら、とろりと酩酊した瞳で抱きついてくるエリーを優しく撫でた。ただでさえ小さいし、いつもより表情が幼いから子供みたいだ。顔がほんのり赤くて頬がすっかり緩んでいる。すき、と甘ったるい声で言ってくれるのがかわいい。
「んー」
「わ、もう、エリーったら」
背に腕が回されて、僕の体にあちこちキスの雨が振る。触れるだけの可愛らしいものだけど、ちょっとくすぐったくて背中がぞわぞわした。ん、ん、と甘ったるい声が耳をくすぐる。
「エリー、僕のこと好き?」
「うん、だいすき」
へにゃへにゃ緩みきった顔がかわいい。いつもはきついことを言ったりもするのだけど、酔うとすごく素直だ。おまけにキス魔になって僕の体にあちこち口づけたがる。他の人相手にこんなことしたら許さないけど、僕にされる分には一向に構わない。だって可愛いし。
甘ったるい声が僕の名前を呼ぶ。猫みたいに体をすりつけて甘える仕草に頬が緩んだ。少し期待するみたいに瞳が妖しい光を放つ。
「ね、きもちいいことしよ」
「もー、しかたないなぁ」
ほんとは一も二もなく頷きたいくらいだったけど、あくまでお願い事を聞いてあげる体裁を取り繕って了承する。エリーから誘ってくれるなんて滅多にないことだから。
僕に寄りかかってくる細い体を優しく撫でた。そうしている間にも首や頬に柔らかい唇が落ちてきてくすぐったい。濃厚な酒の匂いとエリー自身の仄かに甘い香りが鼻腔を刺激した。服の間に手を差し込んで滑らかな素肌に直に触れる。酔っているせいか、いつもより熱い。
濡れた唇がふんわりと緩んで、僕の唇に重なる。上気した頬を両手で包んでそれに応えた。半開きの口内に侵入して激しくかき混ぜる。
「ん、ちゅ、」
エリーの口の中はお酒の味がして、僕まで酔ってしまいそうになる。ピンク色の舌がちらちら覗くのがすごく扇情的だ。もっと、と甘ったるい声にねだられると何度でもしてあげたくなる。口づけながら服を脱がせると、まだ幼さが色濃く残る体が露わになった。未成熟な頼りない華奢な体。
僕に抱きついてふわふわ笑う彼の頭を撫でながら考えを巡らせる。このまま普通にしてもいいのだけど、折角だから変わったことをしてみたい。
「…そうだ。今日は、エリーに動いてほしいな。してくれる?」
そう言うとエリーはぱちくりと瞬いて、やがてほわんと笑った。わかった、と子供みたいな返事が返ってくる。酔ったエリーは危なっかしいくらい無防備で従順だ。白い太ももを開いたかと思うと、いきなり僕の上に乗ろうとしたから慌ててしまった。
「駄目だよ、ちゃんと慣らさなきゃ痛いよ」
「…ん、そうだね」
ぺたりと座り直す姿に胸を撫で下ろす。いつものようにやってあげようと伸ばしかけた手が空中で止まった。思わず目を見開く。
だって、エリーが後ろに手を伸ばして自分で慣らそうとしていたのだから。酔っていてまともじゃないわけだし、止めた方がいいだろうか。だけど誘惑には勝てない。素面じゃ死んでもしてくれないだろうから。
気づいたときには、細い足を思い切り掴んで開かせていた。こんなチャンスは二度とないかもしれないし、どうせならしっかり見たい。エリーは青緑色の瞳を不思議そうに瞬かせただけで、文句も何も言わなかった。僕の目の前で、エリーの指が秘所に触れた。
「ん、ああっ、んんぅ…っ」
硝子細工みたいな細い指が抜き差しされるのをじっと見つめる。指が動くと厭らしい水音がした。あ、あ、と零れ落ちる声はひどく甘ったるい。快楽に酔った顔は色っぽいのにどこか幼くて、思い切り抱き締めたくなった。ごくりと唾を飲む。一人でするときはいつもこんな風なんだろうか。想像しただけで身体に熱が集まる。
「っあ、ふぁ…ん、も、いい…?」
「うん、おいで」
涙に濡れた瞳を見つめて、にっこりと笑ってみせる。僕の方もいつでもできる状態だった。ベッドに横たわる僕にゆっくりとエリーが跨がる。触れた場所が燃えるように熱い。ゆっくりと白い体が降りてくる。
「ん、ふぁ、んん…!っはぁ、ミヒャエルの、ぜんぶ、はいっ…た?」
「はぁ…うん、頑張ったね」
優しく声を掛けると綺麗な顔がふわりと微笑んだ。折れそうなくらい細い腰が僕のものを飲み込んで、きゅうと締め付けている。蕩けた顔や紅い尖った胸が下から全部見える。すごく良い眺めだ。
エリーはすごく照れ屋だから、普段はこんなことしてくれない。いつもはツンとしていて普通にするのも恥ずかしがるくらいなのだ。素直じゃないいつもの彼も可愛いけど、たまにはこんな風に甘えてくれるのもいいと思う。本当なら、素面の時に甘えてほしいのだけど、それは贅沢なのかもしれない。
「ふ、あ、んん、っは、」
両手を僕の腹について、細い腰がはじめはゆっくりと、そして少しずつ激しく動き出す。激しい水音が聞こえた。僕は腰を動かす代わりに薄い胸を揉んだり腰を撫で上げたりした。甘い甘い声が部屋に響く。
「エリー、きもちいい?」
「ああっ!あ、ふぁ、ん、ん、きもちい、きもちいい…っ」
「そっ、か、良かった」
細い腰が自分のいいところを探して緩やかにくねった。なんだかすごくいやらしくて頬が緩む。普段はそんなこと知りませんって顔してるくせに、結構気持ちいいことが好きなんだから。
僕はエリーが好きだから、どうせならたくさん気持ち良くしてあげたい。素直に悦んでる姿を見ているだけで幸せになれる。まあ、いつもと違う姿を楽しんでるってのもあるけど。それに僕も普段と違った風に締め付けられて気持ちいい。
「…んっ、いくよ、」
「ひ、あ、あああああ…!あ、なか、なかがあつ、熱いのっ、ん、ああっ!」
「っ、だめだよ、ちゃんと全部飲んで」
「あっ、は、あつ、い…!やあ、きちゃ、あああっ、あ、なか、いっぱい…っ」
逃げようとする腰を掴んで思い切り上下させた。欲望を吐き出すたび、粘膜がびくびく震えながらきゅんと締め付けてくる。痙攣する体に唇を寄せて吸い付いた。ほんのりと甘い気がする。
「っあ、あ、はぁ…」
一度達したせいか、エリーの体からはくったりと力が抜けていた。口元はだらしなく緩んでいて、ぼんやりと焦点の合わない瞳が空中を見つめている。ここまで頑張ってくれたし、自失している彼の代わりに次は僕が動いてあげよう。
「ひ、あっ!?」
力の抜けた体を突き上げるとびくんと体が跳ねた。素直な反応に口角が上がる。宙を捉えていた瞳の焦点が合ってきた。
「今度は、僕が動いてあげるからね」
「ふぁ、え、え…!?あ、あんっ!や、やぁ、ぼくが、するのにっ、ん、あ、だめ…っ!」
「いいからいいから。ちゃんと気持ちよくしてあげるから安心してて」
「ひ、ひゃうっ、ふああああっ!っあ、だ、だめ、なのに、ミヒャエルのばかぁっ…!」
上に乗っていたエリーを抱き上げて、繋がったまま立ち上がる。小さな体は見た目通りとても軽い。エリー自身の体重で奥深くまで入り込んだせいか、大きく体がのけぞった。 
「やああ…!深いの、おくっ、奥まできちゃっ…あ、やだぁ、おっ、落ちちゃうっ…」
「エリー、ちゃんと僕につかまっててね」
「ひぅ…!あ、だ、だめ、ぼく、またいっちゃ…ん、んぅぅ…!」
「いいよ、たくさん気持ちよくなってね」
軽い体を上下させながら全身に唇を落とす。脆弱な白い肌には簡単に紅い痕がついた。ほろほろ流れる涙や体を伝う汗が人工の光に反射してきらきらしていた。
体が浮くのが怖いのだろう、必死に僕の首に腕を回して抱きついてくる。落としたりしないよ、と笑いながら囁いた。だって僕の大事な大事な恋人なんだから。
「んあっ、あ、あああっ!」
「よいしょ、っと」
「ひぅ、あ、また、はいっ、て、は、はうぅぅ…っ」
細かく痙攣しながらとろとろと精を吐き出した彼をベッドに優しく押し倒して、もう一度深く入り込む。細い足を抱えるように抱きかかえると、結合部がよく見えた。
激しく抜き差しするたびに僕のものが溢れた。中はもうとろとろのぐちゃぐちゃだ。恍惚としながら汗の伝う太ももに唇を這わせた。内股に紅い痕が散らばる。
「はぁ…っ、君の中、あったかくて気持ちいいよ…」
「ひゃう、あっ、あんっ!ミヒャエルも、きもちい、の…?」
「うん…好きだよ、エリー」
「す、すき…っ、ひああああああっ…!あっ、ぼく、ぼくもすきっ、すきなの、だいすき…!」
好き、と繰り返す唇をうっとりと舐めた。僕の好きな子が僕を好きだと言ってくれるのが嬉しくて、幸せだ。素直に甘えてくれるのがかわいい。いつものエリーも勿論大好きだけど、たまにはこんなのもいいだろう。
明日正気を取り戻した時が怖いな、と頭の隅で思いながらエリーの体を夢中で貪った。エリーも僕に縋りついてあられもなく喘いだ。脳内麻薬が頭を巡って多幸感に包まれる。愛し合っているんだと思えた。
明日のことは明日考えればいいだろう。今は、なるべく長い間愛し合っていたい。




昨晩少し頑張りすぎて、ちょっと体が怠い。お酒を飲んだ次の日はだいたいそうなのだけど。
エリーの方はというと、朝から布団を被ってうーうー呻いている。記憶が残るタイプは大変だ。僕は恋人なのだし素直に鳴く姿を見せるくらいしてくれて良いと思うのだけど、プライドが高いエリーには耐えられないらしい。僕にだけは素直に甘えてくれていいって何度も言ってるのに。
「エリー、出ておいでよ。昨日はすっごくかわいかったよ」
「〜〜っ!」
慰めるつもりで言うと、ばふ、と枕が投げつけられた。非力な上に枕だから全然痛くない。ほんのちょっと覗いた赤く染まった顔が可愛いと思う。口にしたら怒るだろうから絶対言わないけど。
「もう絶対、君の前でお酒飲まないから…っ」
昨日散々鳴きすぎて掠れた声が小さく叫ぶ。さっと顔が青くなった。僕の前で飲まない、まではギリギリ許せるけど、それは他の人の前でなら飲むという意味にも取れる。僕以外に抱きついてふにゃふにゃになるエリーなんて、想像しただけで耐えられない。あんな無防備な姿を晒したら襲われかねないし。
「僕以外の前であんな風になったら絶対駄目だからね!」
「っこの、馬鹿ミヒャエル!」
「痛い!ありがとう!」
今度はリモコンが投げつけられてお腹にヒットした。好きな人に与えられる痛みは僕にとっては快楽になるって知ってるくせに、まだ冷静じゃないらしい。そんなに恥ずかしかったのか、と騙したことに少しだけ罪悪感を抱いた。
エリーはまた布団に潜って貝になってしまった。恥ずかしいのもあるだろうけど、体が疲れてるってのもあるかもしれない。たくさん鳴いていたし自分で動いたりもしていたから仕方ないだろう。
罪滅ぼしのためにも、今日はちゃんとお世話してあげよう。多少のわがままなら聞いてあげるつもりだ。そのかわり、また忘れた頃にお酒を飲ませよう。たまには思い切り甘やかしたい。だって彼は、僕のたった一人の恋人なのだから。



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