愛し君へ

膝に乗せて抱きしめた小さな体は暖かくて、確かに生きているのだと実感できた。
何度も転生を繰り返して、やっと見つけ出した愛しい少年。記憶を頼りに彼を探し続け、やっと彼を見つけた頃にはミヒャエルはすっかり大人になっていた。生憎彼は前世の記憶を失っていたけれど、ミヒャエルはそれで構わないと思う。彼や彼女がかつて受けてきたあまりに惨い仕打ちなど、もう二度と思い出さない方がいいだろうから。
とはいえ、何も覚えていない上に幼い彼とこうして共に暮らすまでは苦労した。力や金に物を言わせて束縛するのは簡単だったけれど、極力彼の心にも体にも傷をつけたくない。あくまで彼の意思で側にいたいと思わせるのがミヒャエルの目標だ。
「エリー、好きだよ」
愛を込めて囁き、軽い体を優しく撫でる。出会った頃に着ていた服は捨てた。そして前世着ていたのと似た服を作らせて着せると、記憶の中の彼がそのまま小さくなったようだった。
綺麗な服も、彼の好きだった本や紅茶も用意した。この家の中で彼が不自由を感じることのないように。幸福だけを与えられるように。
それでも、彼はまだ外に未練があるらしい。青緑色の大きな瞳が不安げに揺らめきながらミヒャエルを見上げた。
「ミヒャエル…ぼく、もうおうちに帰りたいよ」
「駄目だよ」
間髪入れず告げる。彼の頼みは何でも聞いてあげたいけれど、それだけは駄目だ。外に行かせたらきっと酷いことが起きる。誰が彼を傷つけるか分からない。彼の両親ですら信用できない。ほんの少し目を離した隙に、彼は酷い目にあわされてきたのだ。今度こそ、どんなことをしてでも彼を守ってみせる。目下の敵はミヒャエラだが、幸いなことに今生ではまだ出会ってすらいなかった。かつて血を分けた兄弟だったとはいえ、決して彼に近づける訳にはいかない。
記憶がないせいか、彼は何度もミヒャエルから逃げようとした。だから彼の細い足に足枷を填めて、何処へも行けないようにした。エリアスにはミヒャエルさえいればいい。そのうち、彼もミヒャエルの純粋な愛に気づいてくれるだろう。
とりあえず今は、ミヒャエルの愛を伝えることが大事だ。
「エリー、気持ちいいのしようか」
優しく告げると、びくんと膝の上の体が震える。逃げようとする細い腰を抱き留めた。さらりとした灰白色の髪から匂う甘い香りが鼻腔を擽る。
「やぁ、やだ…っ」
優しく小さな体に触れると、彼はいやいやをするように身を捩った。エリー、と耳元で囁きながら服の間に手を差し入れた。彼の体はまだ幼いけれど滑らかで暖かくて、とても綺麗だ。
幼いものに触れるとひくんと体が震える。ちゅ、と音を立てて頬に口づけた。そのまま手で彼のものをしごいてやると、少しずつ硬度が増してくる。
「エリー、気持ちいい?」
「あっ、や、やぁ…っ、ぼく、へん、へんなの、」
「変じゃなくて、気持ちいいっていうんだよ」
空いた手で胸や足を優しく愛撫してやると甘い声が漏れた。彼はどうにか逃れようと抵抗していたが、非力な力ではかわいらしいものだった。敏感な部位に手を這わせては、滑らかな肌に唇を落とした。肌に触れた舌に汗の味を感じた。ひくひくと瘧のように体が震える。
「あっ、ら、らめ、ふぁ、ああああ…っ!」
一際高い声で鳴いたかと思うと、エリアスは小さな体を大きく痙攣させてミヒャエルの手の中に吐精した。すっかり力の抜けた腕の中の少年に何度も口づける。ほろりと伝った涙はどこか甘い気がした。
「エリー、愛してるよ。二人で気持ちよくなろう」
「やだ、お願い、ミヒャエルやめて、」
「安心して、酷いことなんてしないから」
穏やかに笑いかけて、怯える彼の頬を撫でる。ミヒャエルは決して彼を傷つけたりしない。
ゆっくりと彼のズボンと下着を下ろして、膝の上で足を開かせた。小さな蕾を優しく撫でて、彼のもので湿らせた指で中をかき回す。既に何度か体を重ねたそこは柔らかくて熱い。ミヒャエル、と声変わりもしていない幼い声に呼ばれると心臓が高鳴った。とろりと蕩けた唇から唾液が伝う。
「っあ、あん、これ、へんだよ、こわい、こわい、…っあああ!」
喘ぎながらもむずがる彼の顔をじっと見つめる。体はすっかり快楽の虜になっているのに彼の心は頑なだ。或いは幼くてよく分かっていないのかもしれない。安心していいのだとどうにかして伝えたい。
「エリー、これは怖いんじゃないよ。気持ちいいことなんだよ。だから、大丈夫」
耳元で優しく言い聞かせながら、ぐちゃぐちゃと後ろをかき混ぜた。ミヒャエルの服を掴んで甘い声をあげる彼が愛しい。ずっとすれ違ってきたのだ。今度こそ、この愛を伝えなくては。
「あ、あっ、」
「力を抜いて、エリー」
軽い体を抱え上げて、屹立したものに座らせるようにする。先端がほんの少し彼の中に入った。やめて、と抵抗する声は小さい。にっこりと笑んで額に唇を落とした。細い腰をミヒャエルのものの上に降ろして、柔らかなそこにゆっくりと進入する。
「あ、あああああ…!や、だめ、ミヒャエルの入れちゃだめ、っあん、ん…!」
「どうして?僕のこときらい?」
彼があまりに嫌がるので、半ばまで入ったところで止める。涙に濡れた瞳がじっとミヒャエルを見上げた。林檎のように赤く染まった頬が暖かい。ミヒャエルは穏やかな表情を崩さないまま、ぐすぐすとしゃくりあげる彼が言葉を続けるのを待った。
「…ぼく、ミヒャエルのこと好きだけど、これはこわいの。なんか、変になっちゃうから」
「そっか、話してくれてありがとう、僕もエリーのこと大好きだよ」
「…ん、」
ほろほろと涙を流す白い頬を舐める。潤んだ瞳で見上げてくる彼に優しく笑いかけると、安心したのか抵抗する力が失せた。稚い仕草を見つめながら優しく頭を撫でた。口づけたり撫でてやりながら彼をあやす。
そうしているうちに、すっかりおとなしくなったエリアスを満足げに見つめながら、細い腰を掴んだ。え、と大きな瞳が丸くなる。
「エリー、僕は君を愛してるんだ。君は忘れてるから怖いだけなんだよ。僕たちは愛し合ってるんだから」
「え…?あ、うそ、ミヒャエル、ま、まって、ふぁ、ああああああ…!」
ずん、と力を込めてエリアスの体を引き下ろす。急に奥深くまで入り込んだせいか、白い顔が天を仰いでがくがくと震えた。優しく揺さぶってやると幼いものが蜜を零す。
「は、はぅぅう…!や、だめ、だめなの、も、ぼく、おかしくなっちゃ、」
「大丈夫だよ、絶対に僕が守ってあげるから」
細い身体を突き上げてやると、小さな手がすがりつくようにミヒャエルの服を掴んだ。開かせた細く白い足がひくひくと痙攣する。
「あ、っあん、や、やだ、あ、また、あ、あっあっあああ…!」
「ん…、好きだよ、愛してる」
何度も達してしまう小さな体をうっとりと見つめた。素直に快楽を感じるようになった彼が愛しい。
膝の上の体は軽くて熱くて、絶対に守らなくてはならないと思う。何度も酷い目に遭ってきたのに、いつもいつも助けることができなかった。ミヒャエルが覚えていれば彼を助けることができただろうことが何度もあったというのに。もう二度と傷つけたくない。
「気持ちいいでしょ、エリー」
「ひ、あ、ぁう、わかんない、わかんないよ、」
「エリー、これは気持ちいいっていうんだよ。僕たちは今愛し合ってるんだ」
「ん、んぅ、ふぁああああああ!あ、き、きもちいい…?んっ、ああ…っ!」
「そう、それでいいんだよ」
ミヒャエルは優しく笑む。訳もわからず喘ぎ泣くエリアスが愛しくて、少し乱暴に小さな唇を奪う。どこか幼い、甘い味がした。ん、ん、と快楽にとろけた声が脳を浸食する。
「あ、あん、ミヒャエル、ミヒャエル、きもちい、きもちいいよ…!」
「っは、エリー、大好きだよ、愛してる、生まれる前からずっと…!」
夢中で腰を打ち付けると結合部からぐちゅぐちゅと水音が聞こえた。彼に名前を呼ばれるたびに多幸感に包まれる。もっとこの声に名前を呼ばれたいと思う。
何度手を伸ばしてもいつだって手遅れで、ずっと後悔していた。助けてくれと言われたことさえあるのに、これまでのミヒャエルはあまりに無力だった。今度こそは間違えない。エリアスを幸せにできるのはミヒャエルしかいないのだ。何があっても手放すものか。
愛してる、と何度も耳元で囁きながら体を交わらせた。ずっと触れられなかった時間を埋めるように、ミヒャエルは彼を愛した。




外にはしばらく出ていないから、このところミヒャエルの顔しか見ていない。
ミヒャエルの家は大きいし遊び道具もたくさんあるけれど、たまにはお父様やお母様や、他の友達にも会いたい。けれどミヒャエルは外に出ては駄目だと言う。彼は優しいけれど、外へ行きたいという頼みだけは聞いてくれなかった。ミヒャエルのいないうちに何度かこっそり出てみようとしたけれど、お仕置きをされてしまった。
ミヒャエルのお仕置きは痛くはないけれどとてもつらい。気持ちよくておかしくなりそうな状態のまま放置されて、もうしませんと言うまで許してくれないのだ。そのたびに家にいると約束するのだけど、しばらくしたら外に行きたくなって何度か脱走を繰り返した。その結果、エリアスの両足に足枷が填められることになったのだった。
これでは遊べないし動けないと泣きながら訴えたのにミヒャエルは聞いてくれなくて、微笑みさえ浮かべながら君のためなんだと言うばかりだ。運動が出来なくなって眠れないのではないかと思ったけれど、毎日ミヒャエルはエリアスに気持ちよくてすごく疲れることをする。初めは怖かったけれど、最近では少し好きになってきた気もする。最初の頃感じていた痛みも今では感じなくなってきた。それに、お仕置きでさえなければミヒャエルは無理矢理したりはしなかったし。
夜になると、ミヒャエルはエリアスを抱きしめて眠った。家に帰りたくて泣きじゃくっている時でも、優しく抱きしめられて愛していると言われた。怖くてむずがっても構わずに大きな手で背や頭を撫でてきた。寝付けないときは絵本を読んでくれたり、子守歌を歌ってくれることもあった。たまに怖いけれど、いつものミヒャエルはやさしい。
毎日そうされるうちに、抱きしめられながら眠るのに慣れてきた。ミヒャエルの体は暖かくてエリアスよりずっとずっと大きい。抱きしめられていると心臓の音がとくとく聞こえて、いつの間にかうとうとする。
「愛してるよ、エリー。ずっと側にいるからね」
「…ん、」
子守歌のように聞かされる言葉をぼんやりと聞く。甘い言葉を聞きながらそっと目を閉じた。ミヒャエルの腕の中にいると、なんだかひどく安心できる気がした。



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