少女・善法寺のお話
「名前、結婚するんだよね?」
「…今度は善法寺か」
先ほどの立花との会話について考えながら歩いていると同じく忍たま所属の女子、善法寺に遭遇した。
しかもまた嫌なネタ出してくるし。
という事は、他にもこの話を知ってる奴いるんだろうなぁ。
もう、学園中に広がらない事を祈るしかない。
「名前は、好きな人は、相手はいるの?」
「え、いや。いないけ「じ、じゃあ!僕が、名前のお嫁さんになってもいい?」
あれ、遮られた。
というか、え、何言ったこの子!?
「ええええ!いや、ちょっとまっ「大丈夫だよ!僕、安産型だから!色だって、苦手だけど名前の為なら何でもするよ!」
結婚どころか出産の話ししだしちゃったよ!いきなり話ブッ飛びすぎじゃねえ!?
というか立花に続いて善法寺!どういう事これ!
じりじりとにじり寄られて近くの室内に入り込む。
って、なんでこんなとこに入ったんだ俺!馬鹿!
戸を塞ぐように立った善法寺は音を立てずに後ろ手で戸を閉めた。
え、何これ、え、マジですか。
ちょっとヤバい。いやだ怖い!
薄暗い室内で再びにじり寄られて一瞬の隙を付いた善法寺が抱きついてくる。
真正面から受け止めた俺は勢いで壁に背を打って倒れてしまい、そのまま善法寺に押し倒された。
「痛!……うわ!ちょっ、ちょっと善法寺!待って!落ち着いて!」
「大丈夫だよ、名前。優しくするから…!」
俺の腹の上を跨る様にして座る善法寺を見上げる。目が真剣すぎる。
ちょっとなんなの、なんでこんなに積極的なのこの子!
あ!待って!俺の装束脱がさないで!
うわあああああああああああああああああ!!!!!
ガラリ、
「おい、中で何騒いで……って、ちょ、お前ら!なななな何やって…!」
希望の光が差し込んだ。
戸が開いたそこには同じく六年忍たまの女子、食満の姿が!
「食満っ!ナイスタイミング!!!!」
予想外の出来事に一瞬気を緩めた善法寺を押しのけて素早く食満の所へ逃げる。
チッと小さく舌打ちする音が背後から聞こえた。
ちょ、善法寺ちょー怖い!こんな子だったっけ!?
「ありがとな!食満!この恩はいつか返す!!」
「え、あ、…うん」
走る勢いが付きすぎて顔が近づいたせいか食満が顔を真っ赤にしているのが見えたが、後ろの善法寺が怖いのでそのまま全速力で外に逃げ出した。
(留さんひどいよ!)
(ええええ!ごめっ、…つーか何してんだお前は!)
(もー!一気に既成事実作ろうと思ったのに!)
(き、既成事実!?)
乾坤一擲(けんこんいってき):運命をかけての大勝負、大仕事をすること。(作ってしまえばこっちのものだもの!)
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