知らぬは本人ばかりなり



最近同級生の綾部喜八郎くんが気になります。


彼はとっても綺麗な顔をしているのにその表情はいつも同じ。
勿体ないなぁと思い悩んでいたところ、それを丁度通りかかったタカ丸さんに声をかけられ相談してみたら「うーん、そうだなぁ…じゃあくんが笑わせたらいいんじゃない?」と、とても素晴らしいアドバイスを頂いた!さすが年上!経験豊富って素晴らしい!

そんなわけで私頑張ろうとおもいます!




○月○日
作戦その1!まずは綾部の掘った穴に毎日落ちてみる。
綾部は穴にハマっている私をジッと見てくるだけで特に反応なし。
見てくるってことは何か思う所があるってことか!と続けること3日間。
あまりにも装束が汚れてしまって洗うのが大変なのに気づいて別の手にしようと思った。
でも綾部こっち見てくれた!これは良い収穫のはず!


○月○日
作戦その2!勇気を出して綾部に話しかけてちょっとした駄洒落を言ってみる。
休み時間になるたびに綾部の所に行っては駄洒落を言ってみる。やっぱり何を言っても無表情だ。
これがくーるびゅーてぃーってやつなんだな!…ネタは尽きてきたし、
ミキティに聞いてるこっちが恥ずかしくなるから止めろ!と止められてしまったので別の方法にしよう。


○月△日
作戦その3!ご飯の時には綾部が好きそうなおかずをあげてみる…ほぼ食べられまくって
私はあまり食べられなかった。 その日一日お腹がなって授業は散々。これは駄目だ!私食べないと生きていけない!1日も持たなかったし大失敗!別の手だ!…お腹すいたなあ。


○月□日
作戦その4!出された課題にわからないところがあるなら教えてあげる!と意気込んで部屋に誘ってみたら逆に綾部に教わってしまった…綾部頭いいんだな。
相変わらず綾部は無表情…ちょっとしょんぼりしてしまった。



○月×日、と続く報告というか日記にも特に変化はなくむしろ私日々好感度下げていってるんじゃないか?
思えば色々とちょっかいをかける私に綾部はいつもの無表情だ。
あんなに綺麗なのに笑わないよな…勿体無い。
あ、もしかしたら笑わないんじゃなくて、笑えないのか?
今までの私って綾部にしてみたら迷惑かけすぎてすごくうざかったんじゃ…。ああああ撃沈してしまった。


こうなったら我が親友ミキティこと田村三木ヱ門に相談しよう!


ミキティーーーーー!!!


あ、タカ丸さんに滝夜叉丸もいる。丁度いい!


みんなー!
これからわ、わたしはど、どうしたら…いいんだ…っ!
な、泣いてなんかないぞ!ちょっと感極まっただけだ!
そういえばこんな風に皆と一緒にいるの久しぶりだ…ミキティ久しぶり。
垂れた私の鼻水拭ってくれる優しいミキティ、なんだか私たちしんべヱとおシゲちゃんみたいだね。
あ、冗談!ごめんなさい冗談だから鼻塞がないで!息できない苦しい…!


ふぅ、ちょっと落ち着いた…はい、大丈夫ですタカ丸さん。
って慰めるように頭撫でるふりして髪さわらないでくださいよー。相変わらず髪には厳しいですね。
ちゃんと毎日シャンプー&リンスしてますから大丈夫!ホラ、サラサラでしょー?サラサラ!


そんなことより?何があったって?あ、タッキーそうなんだよ!

聞いてください皆!ここで緊急青空教室を開きます!
ミキティとタッキーの優秀なる知能と年上で経験豊富なタカ丸さんの意見を貸してください!


実は…わ、わたし!綾部に嫌われてしまったかもしれないんだ…っ!


…。


……。


…な、なんでみんな無言なの?


え、なんでそうなる?って…だってわたし、今まで綾部にあれこれ構いすぎてなんか思い返すとう、ウザかったんじゃないかって思って…綾部全然笑ってくれないし。笑わないってことは怒ってるのかなって…ど、どどどうしよう。
あ、また涙が出てきちゃっ…うわーん!

どうしようどうしたらいいんですかミキティーーーーー!!!


「名前」


…え?あ、綾部?
どうしたんだ?え、お饅頭一緒に食べようって…わ、わたしでいいの?
うん、…うん!食べる!綾部の部屋?うん、行く!



わーい!綾部に誘われた!

ミキティタッキータカ丸さんまた後でな!

「お饅頭お饅頭ーふんふんふーん♪」






「…何、泣かせてるの? タアコちゃん4号に埋めるよ?」





「綾部ー?どうしたんだー?お饅頭はー?」


「うん、今行くから。 …次はないからね?」



どす黒いオーラを放ちながら立ち去る綾部に、
残ったのは怯えるミキティ&タッキーとおやおやと苦笑いのタカ丸さん。





つまりはまあ、そういう事。




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