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「チケットってまだ余っていますか?1枚頂きたいです」
「もちろんです!ありがとうございます!」
可愛らしい男の子が元気よく答えてくれる。何日目にされますか?という問いに、舞台に詳しくなくどこがいいともわからなかったので、思わず答えにつまってしまう。
すると、初日と千秋楽がオススメですよ、とイケメンさんの声が上から降ってくる。
近くで見ると本当に端正な顔立ちだ。色素の薄い柔らかそうな髪、ルビーのような瞳、誰がなんと言おうと王子様である。
イケメンさんが言うなら間違いないだろうと思い、名前も知ない会ったばかりのイケメンさんを信じて、私は初日と千秋楽のチケットをそれぞれ購入した。
なにも知らずに購入してしまったが、せめてどこの劇団か聞いておこうと思い尋ねると、MANKAIカンパニーです!という元気な声が返ってきた。
聞いたことのない名前だったが、説明を聞いてると、やはり彼らは役者で今回の旗揚げ公演に出演するらしい。
ロミオとジュリアスという名前から連想されるのは、ロミオとジュリエットしかなく、かの有名なシェイクスピアの悲劇をどうアレンジしたのか楽しみだ。
チケットを売ってくれた二人に軽くお礼を言い、帰路につく。
会いたかった古市さんには会えなかったけど、素敵なイケメンさんに出会え、面白そうな劇も知れたので、今日はとても良い日である。
会えないことのショックが少し緩和され、私の憂鬱とした気持ちは、彼らに出会う前より軽くなっていた。
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