04 [ 5/17 ]

あれから二週間、天鵞絨駅の近くを通るたびに、偶然会えるはずなんてない、と頭では分かっていても古市左京さんを探してしまう。


それでも私は、もう一度あの人に会いたい。会ってどうしたいんだ、と聞かれると困ってしまうがなんとしてでも会いたかった。もう一度話がしたかった。

一瞬ふわりと笑ったあの表情を見たとき、既に私は恋に落ちていたのだろう。
あの人のことをもっと知りたい。私のことも知ってほしい。あの笑顔がどれだけかっこよかったのかを、本人に伝えたい。



二週間前の出来事が、遥か昔のことのように思えてくる。それぐらい、会えないことに自分の想像よりもはるかにショックを受けていたようだ。


「春組旗揚げ公演!ロミオとジュリアスです!」
「よろしくおねがいしまーす」


公園の近くから、明るい声と少し間延びした声が聞こえてきた。
なんだろう、公演ということは何かのステージだろうか、そう思い声の聞こえた方に視線を走らせると、目に入ったのはイケメンだった。

正確に伝えるならイケメンと赤っぽいピンク髪の可愛らしい男の子である。
どうやらフライヤーを配っているようだ。そこでここが劇団が多い街で有名なことを思い出す。


なら彼らも劇団員なのだろうか、あんなイケメンが出演するなら少し見たいと思ってしまったのは、イケメンに弱い私には仕方のないことである。もちろん性格も大切だけど一番に目に付くのが顔だからね


あまり細かく見ることはできなかったが、古市さんもかっこよかったなぁ


また思考を飛ばしかけていると、イケメンさんと目が合う。
それと同時に、ニコっとまるで周囲に花が咲きそうなぐらい綺麗な笑みで微笑まれてしまった。
こういうのを営業スマイルということぐらいわかっているが、まるで王子様のようだ。


気づくと私は彼らの方に向かっていた。




[] []
top