02 [ 3/17 ]

男性に声をかけられたときは助かった、と思ったが、正直私を挟んで喧嘩なんて怖いし迷惑だしで、絶対にやめてほしいところである。

この人はなんのために声をかけたのだろう、ただ気になっただけの興味本位なのだろうか。しかし、先ほどは恐怖心と嫌悪感が脳内を支配していたが、男性のおかげで少し頭を動かす余裕が出来た。


このままでは埒があかず、私もいい加減この場から立ち去りたかったため、咄嗟に浮かんだアイデアなので演技経験もない私にできるか心配だったが、男性に兄のふりをしてもらい、この場から逃げ出そうと考えた。

そうと決まれば決行だ。いまだにらみ合いを続けている両者の間に勇気を振り絞り割って入る。


「お兄ちゃん!来てくれたのね」


そう男性に言うと、一瞬怪訝そうな顔をされたがどうやら瞬時に私の意図を察してくれたようで、あぁ、帰るぞ。と告げられた。


「そういうことだから、お前の相手をしている時間はない」

男性はそう冷たく言い放ち、男をひと睨みして私の腕を取り歩き出そうとした。


「はぁ?待てよ。お前には関係ねーだろ、妹と遊ぶぐらいいいだろうが」


男はまだ諦めていなかったようで、対応に困っていると男性の雰囲気が少し異なったものになったのを感じた。


「さっきからガタガタうるせぇな、ちょっとは黙ってろ。二度と俺の前に現れるんじゃねぇ」
先ほどよりもはるかにドスの利いた声で、男を睨みつけながら鋭い声で言い放つ。


それに怖気付いたのか、男は私の腕を掴むのをやめ、恐怖を浮かべた声を出す。

「だ、誰がこんなやつと。誰もこんな女興味ねーよ」
そう言いながら男はそそくさと路地裏を去っていった。



[] []
top