未公開長編作品の書けるとこだけ書いてみる。(赤黄)
※病んでます。閲覧注意。




誰かに呼ばれた気がして目が覚める。ずっと眠っていた身体は、泥でも溜まっているかのように重い。
黄瀬はのろのろとベッドから降りると、リビングへと向かった。テーブルの上にはたくさんの小鉢に彩られた豪勢な食事があるが、一瞥だけで素通りして、キッチンへと行く。
空腹なんて久しく感じていない。食事を摂らないことを咎める人も、いない。水だけ飲んでまた寝てしまおうと水道水をグラスに注いでいると、静かな部屋に小さな振動音が響いた。
辺りを見回して、テーブルの上に置かれたままだったスマホを見つける。画面は黒子からの着信を伝える。黄瀬はなにも考えずにそれを耳に当てた。
「黄瀬くん!よかった、やっと繋がった…」
感情を顕にした声を珍しいな、と思う。
黒子っち。名前を呼ぼうとした声は上手く喉に引っかかってくれなかった。声の出し方を忘れそうなくらいには会話をしてなかったな、と気付く。
「あの、大丈夫ですか?」
「…なに、が?」
今度はちゃんと音になった。なのに黒子は言葉を無くす。小さな機械越しに黒子の緊張が伝染して、どろどろに融けていた夢と現実の境目がはっきりしてくる。行き当たった結論に、内臓がヒヤリと温度を下げた気がした。
「…今日、は、なんにち?」
問いに黒子が息を呑む音がする。答えはなかなか返ってこない。どくんどくんと鼓動は加速していって、もういっそ逃げてしまいたくなる。
黄瀬が取り下げようとした半瞬前に、黒子は答えた。
「…16日です」
するりとスマホが手から落ちる。黒子が自分を呼ぶ声は耳に届いていたけれど、聞こえてはいなかった。
ふらついてテーブルに着いた手に、小さな小箱が当たる。上手く寝付くことのできない自分のために処方された、睡眠導入剤だ。
ーーー寝なきゃ。
震える指で取り出した錠剤を口に含むが、飲み下せなくて咳き込んでしまう。早く早くと焦る気持ちが指をもつれさせる。泣きそうになりながらなんとか一つ薬を飲み込む。だが、睡魔は訪れてはくれない。
「なんで…っ」
早く眠ってしまわないといけないのに。これ以上、なにか知ってしまう前に。
1錠で足りないならと、2錠3錠と薬を足していく。4錠目を飲んだところで、ふつりと糸が切れたみたいに身体から力が抜けた。
無意識に弾いたグラスが床に落ちて、耳障りな音を立てる。後を追うようにずるりと倒れ込めば、割れたガラスが腕に刺さる。でも、痛みを感じることはなかった。
霞む意識に身を任せようとした時、またスマホが着信を告げた。黒子が呼んでいる。でももう指1本動かない。
やがて鳴動は止まり、画面は静かに日時だけを教える。16日。瞼を下ろす寸前で、黄瀬はただその日にちだけを見た。今日、名前も知らない誰かと
ーーー赤司は結婚する。




2019/2/15

タイトル:『ワールドエンド』
ヤンデレ赤司と京都で暮らすうちに精神を病んでいく黄瀬の話。ここから更に2ランク病みます。←ランク?
私にしては珍しくタイトルも展開も全部決まっていたにも関わらず、あまりにも支障が多すぎてお蔵入りになった作品。
私の悪い部分(←泥沼好き)が詰まりすぎて公開するには忍びないので書くなら一次創作にしておきます…。


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