味噌ラーメンドロップ(紫黄)
カランカラン。軽やかな音を立てて落ちたものに気付いて、黄瀬は着替えの手を止めた。
「紫っち、なんか落ち…」
手のひらサイズの缶を拾った黄瀬は、隣で同じように着替えている紫原に缶を返そうとして、固まった。
缶の大きさや音は、間違いなくドロップのそれだ。けれどパッケージに描かれているのはコーンともやしが美味しそうな味噌ラーメンで、写真の上には大きく『味噌ラーメンドロップ』と書かれている。
「わお、なんスかこれ!」
「ドロップ。食べる?」
「良いんスか!」
嬉々として手を差し出せば、コロンとドロップが置かれる。薄茶色のそれを、黄瀬は躊躇いなく口に放った。
「どー?」
「うーん…」
もぐもぐと口を動かす毎に、黄瀬の表情は険しさを増していく。
「…味はコーヒーっぽいんスけど、これが味噌ラーメンと思うとなんか…」
口元を押さえて顔色を悪くする黄瀬の頬に、紫原が手を沿える。
「仕方ないなぁ。じゃ、返して」
「ん」
両手に促されて黄瀬は上を向き、紫原は身を屈める。二人の唇は重なり合い、離れた時には飴は紫原の口の中に移動していた。
「…なぁ」
地を這うような声に、二人はそちらを向く。
「お前らには恥じらいってもんがないのかよ」
仏頂面の青峰に黄瀬は目を丸くして、首を傾げた。
「青峰っち、なに怒って…」
言いながら自分のロッカーに戻ろうとした黄瀬は、紫原のロッカーの中に目を留めて、歓声をあげた。
「明太子ドロップって、なんスかこれ!」
「食べるー?」
「いい加減にしろ!!」


fin 2014/8/27


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