02 現実逃避


倒れた黄瀬を保健室まで運んだ青峰は、どこか顔色の悪い寝顔を見下ろした。
「いきなりなんだってんだ、こいつは…」
「黄瀬くんは青峰くんを神のように崇めていましたからね。現実を受け入れることが出来なかったのでしょう」
同じように黄瀬を見ていた黒子は、視線を動かして青峰を見上げた。
「僕は相棒がテリヤキバーガーみたいな体型になりやがっても気にしませんが」
「気にしてんじゃねぇか」
「彼は、そうもいかないんでしょうね…」
黒子は目を戻すと黄瀬の頭を撫でる。すると長い睫毛が震え、黄瀬はゆっくりと目を開けた。
「…黒子っち…」
彼は上体を起こすと、目を擦って小さく笑う。
「なんか嫌な夢みたっス。青峰っちが醜く肥え太るとか、あり得ない夢」
「おい、黄瀬」
青峰はたまらずに声をかけるが、黄瀬は気にも留めずに時計を見上げた。
「あ、もう授業始まるっスね。急がないと」
「黄瀬!」
強く呼んでみても、黄瀬はこちらに一瞥すら寄越さない。そのまま振り返ることもなく、彼は部屋から出て行った。
「どういうことだ…?」
まるで、青峰が見えていないかのようだ。
「一人ミスディレクションですね」
黒子は今の現象を、そんな訳の分からない名前で呼んだ。
「君は痩せない限り、黄瀬くんの目に映りませんよ」
「っ!」
衝撃的すぎる事実に、今度は青峰の方が気絶してしまいそうだった。

2014/5/27




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