脅迫 (43/46)
「苗字〜部活行くで」
HRが終わる早々鳴子が教室に飛び込んでくる。
「!!!ちょ早くない?;」
「HRが終わる前に席を立つ、大阪人の常識や」
「それ大阪人じゃなくお前だけのだろ」
「スカシは呼んでませーん、小野田くんも早う準備してや」
鳴子に急かされるまま、鞄を抱え部室へと急ぐ。
「今日から新入生が来るはずや。なんぼ来る・・ってより最終的に何人残るかやな」
「そうか、新入生って今日から体験入部なんだね」
「耳にしたんは、中坊ん時大人に混ざってチーム入っとった奴が2人総北に来たらしいわ」
「ええ!?大人と一緒に?」
「そんなの可能なの?」
「付いていけるなら問題無いだろうな」
「「へぇ〜」」
小野田坂道と二人で想像上での凄いその2人に馬鹿みたいに只々感心してしまった。
「「よ、宜しくお願いします!」」
中からそんな挨拶が聞こえ、興味津々で部室に入る。
「来たか。仮入部一日目から練習に参加する鏑木一差と段竹竜包だ」
「え・・」
「あ、どろぼー!」
「「「え?」」」
見覚えのある2人に聞き覚えのある腹立たしいワード。
「泥棒ってなんだ;鏑木」
「あのですね、実はあの人が」
「一差!「カブ!!」」
私が鏑木の口を押えるのと同時に段竹も鏑木の頭を抱え込む。
『(小声)私を泥棒呼ばわりしたのは許す!けどストラップの事を口にしたら一生、この先ずっとず〜っと毎日あんたの自転車のタイヤの空気抜くから!』
「・・・え、やだ;」
「ほんとにやるから!オタクの執念深さって物凄いんだから」
「い、言わない・・です;」
「よし、いい子だねぇ」
段竹は頭良さそうだし口止めはいらないだろう。
「ちょっちょっ、苗字何してんねん、何くっついてんねん!」
「どうしたんだ名前、知り合いなのか?大丈夫か?」
「うん大丈夫、昼間にちょっとね」
「ちょっとって何?」
「なんでもな〜い、あは♪」
部室にいる全員が???な顔をしてたけど、今を乗り切れば大丈夫。
今のこの状況下ではまだ小野田坂道に秘密を知られたくない。
みんなに必死に苦笑いを向けながら部活の準備に取り掛かろうとした。
「あの、先輩?」
声を掛けてきたのは鏑木だ。
「何?」
まだ何か言おうとしてるのか?!という威圧を与える。
「あのストラップ」
「!!!ああん?」
「あれってワンピースの、ですよね?」
「知ってるの?」
「あったり前じゃないですか!ウソッ」
「声デカイ!;」
慌てて再度鏑木の口を塞ぐ。
「もういいから忘れて;」
「先輩ワンピース好きなんすね」
「忘れて」
「女の人って普通ゾロとかサンジとかじゃないんですか?」
「そういうの耳にタコ」
「え、耳にたこってなんです?タコは海ですよね?それにカブって何なんすか」
話急に飛んだし;
何なのこの子;
思った通りの面倒臭さ;
「だって鏑木でしょ?カブじゃん」
「呼ぶならちゃんと呼んでくださいよ」
「・・・」
そのまま部室を出て鏑木の目の前でドアを閉める。
部屋の中から騒がしい鳴子と鏑木の雄叫びだけが良く聞こえた。