LONG NOVEL

ちょっと寄り道 (29/46)

「ちょっと寄りたいとこあるんだ、いいか?」
「うん、何処?」


純太はふふんとだけ私に微笑んで爽快に坂を下る。


「ここ」
「え?たどころぱんって田所先輩のお店?!」
「そ。美味いんだぜ、田所さん家の焼き立てのパン」


ロードを店前に止める純太に続いてMERIDAを止めながらお店の外装を隅々眺めた。


「おはようございます」
「らっしゃいって手嶋じゃねぇか、こんな早くからどうした」
「おはようございます、田所先輩」
「苗字も一緒か」
「田所さんのパンが食べたくてツーリングの途中に寄りました」
「そうかそうか、沢山食べて行け。折角の部活休みの日にこんな所来るなんて、お前ら考える事同じだな」


がはははと豪快に笑う田所さんの後ろに見覚えある青いロードとど派手な赤いロードが見える。


「朝ごはん食べて来たのにな。急にお腹空いてきちゃった〜」
「・・・」
「純太?」


じっとテラス席を見つめてる純太の視線を追う。


「あ〜!手嶋さんやないですか!朝っぱらからどないしはったんです?青八木さんも一緒ですか?」
「あ; 」
「もしかして苗字と2人きりですか?」


朝から一緒にパンを食べる程仲良いんだ?ふーん・・なんて思いながらお店の中へ入る。


「苗字は来るの初めてだったか?」
「はい」
「うちのパンはどれも美味いぜ。遠慮しねぇでどんどん食え」
「ほんと、全部美味しそう」


沢山ある中から色々吟味してトレーをレジへと持って行く。


「なんだ苗字、こんだけでいいのか?」
「え?」
「これもこれもこれも食っとけ!これから走りに行くんだろ?エネルギーチャージしとけ、遠慮すんな」
「あ、ありがとうございます; 」


トレーにパンを山盛りに積まれ、もう片方にドリンクを持たされ、扉の前でわたわたと純太の背中に訴え掛ける。


「手嶋さん、呼んでますよ」
「ん?ああ」


漸く気付いてドアを開け、両方のトレーをひょいと取り上げてくれた。


「早く気付いてよ純太; 」
「悪ぃ悪ぃ」
「そこ座るの?」
「なんか問題あんのか?さっきから鳴子が待ち侘びてんだけど」
「なんやワイらと座るの嫌なんか?」
「そうじゃないけどさ・・」


戸惑った原因は鳴子じゃなくて、隣に仏頂面して私と目を合わそうとしない今泉なんだけど;
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