LONG NOVEL

もう一人の幼なじみ (19/46)

今日は峰ヶ山ヒルクライムレース。
選手用のジャージを着た純太、今泉、そして小野田坂道が出場する。

小野田坂道はスランプを脱せないまま、不安を抱えたままの出場になった。


「ねね幹、気の所為かもしれないけど、なんかうちの学校注目浴びてない?」
「気の所為じゃないよ、去年のIHで優勝したから」
「あ!そうか、それで」
「小野田君は個人優勝したから特にね」


優勝した事なんか嘘みたいにいつも通り腰の低い引きつり笑顔の小野田坂道だから、凄い人なんて事すっかり忘れてた。

去年のIHを見てない私にとってはただのアニオタ君でしか無いし。


昨日の夜、ずっと机の引き出しにしまっておいたステッカーをポケットに忍ばせてきた。

今泉との会話から小野田坂道はもの凄く姫野湖鳥が好きらしい。

ポケットに忍ばせてきたのはキャンペーンの抽選で当たった貴重な湖鳥のステッカー。
10人しか当たらなかった"湖鳥賞"の景品の中のひとつ。

"有丸くん賞"狙いではがきを出しまくって当たったのは"湖鳥賞"。
真っさらな状態で机の中に入れっぱなしになっていた。


『もし小野田とそういう話をする事があったら・・、いや、名前が打ち明ける気になったらって事な。小野田は絶対喜ぶと思うから、その時は同じ趣味を持つ仲間として応援してやってくれ』


純太に言われたけど、打ち明ける度胸はまだまだ無い;
でも総北を優勝に導いた走りを、本当の小野田坂道を見たい気持ちはもの凄くある。

ロードの事を何にも知らないド素人の私なんかが「頑張れ」なんて言ったって何の効果もないのは目に見えてる。

それなら湖鳥なら?
小野田坂道が大好きな湖鳥なら効果覿面なはず。

私だって有丸くんに応援なんてされたら、なんでも出来ちゃう気になるもん。

小野田坂道がロードを離れた隙に、湖鳥のステッカーをボトルの裏にぺたりと貼った。


一人任務完了とニヤニヤしてたら、純太がパンフレットを手にしたまま固まっている。


「純太どうしたの?」
「ん?うん・・」


青八木先輩も純太の様子に気が付いたらしく、側へと寄っていった。

純太が高校に入ってすぐ青八木先輩と一緒にいる所をよく見るようになったけど、二人の間には私が入れる隙が無いっていつも感じてた。

だから余計にもう一人の幼なじみがいなくなってしまった事が悲しかった。


「純ちゃ・・・あ、名前ちゃん!!」


ゆらりと近づいた人影に突然抱き締められた。
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