LONG NOVEL

今日は敵だから (20/46)

「Σぎゃ!なに?え、拓斗?!」
「名前ちゃん久しぶり!!」


がば〜っと被さる様に抱きついてきた拓斗の身長が昔の面影も無いほどでっかくなっていた。


「やだ拓斗、いつのまにこんなに大きくなっちゃったの?;」
「あれからスクスクとね。名前ちゃんはあの頃と変わらずちっちゃいね」
「うるさいー!」


会いたかった懐かしい笑顔にホゥっと気持ちが和らぐ。


「シキバ久しぶり」
「純ちゃん・・」


側に寄ってきた純太は私達とは違う何とも言えない笑顔を拓斗に向けていた。
暫く二人で何か話をして別れ、拓斗がもう一度私の側へと近寄ってきた。


「名前ちゃん、純ちゃんの応援にわざわざきたの?」
「わざわざ来たっていうか私マネージャーだからさ」
「Σえ!?総北の?自転車部の?」
「うん、最近なったばっかだけど」
「そうなんだ・・」
「拓斗も純太と同じでずっと自転車続けてたんだね、ピアノは?」
「時々」
「そっか、偉い偉い」


拓斗の前に手を伸ばして少し背伸びすると、あの頃の様に私の方に頭を差し出した。

1歳年上なのに弟みたいに懐いてきて私の趣味にも付き合ってくれて、いつも可愛い笑顔を向けてくれてた拓斗。
離れてしまったけど、全然あの頃と変わってない拓斗の癒されるこの空気がとても嬉しかった。


「名前ちゃん、そろそろ行くね」
「またね、拓斗」


振り返り際ちらっと純太を見てとぼとぼと歩いていった。


「純太」


青八木先輩が純太の側に寄る。


「同級生なんだ、中学時代の」
「・・・」
「やさしいヤツでさ、人のこといつもほめてくれんだ。昔よく一緒に走ったんだよ。この話お前には初めて話すな」
「チームメイトか・・」
「2人で天下とろうって約束したんだ。けど残念ながら今日は敵だ」


幼なじみで親友で一緒に自転車に乗ってた友達さえも違うチームになったらそんなになっちゃうの?

私は所詮マネージャーだし昔と変わらない拓斗と会えて嬉しかったけど、純太はあんな親しかった拓斗と敵として接するしかないの?

だって純太あんなに拓斗の事・・


「っていっても俺は弱いから必死に漕いで登るだけだ」


青八木先輩にそう言って向けた純太の顔は、中学最後の大会でゴールした時と同じ辛そうな表情だった。
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