LONG NOVEL

貼られたステッカー (17/46)

次の日の朝、いつものママチャリを押して坂を登ってるとロードに跨りこっちを見てる今泉と鳴子に会った。


「ロードで来るんじゃなかったのか?」
「・・・」
「なんや苗字、もしかしてロード買ったん?」
「昨日あんな啖呵切ったくせに」
「だって、純太がやめとけって言うんだもん」
「いつ買ったんや、どんなん買ったん?今日早速乗ってくるつもりやったんか」


3人で部室へ歩きながら2人のロードを羨ましく眺める。


「乗り慣れてからにしろって。平気なのに」
「手嶋さんの言う通りや。ロード乗って初っぱな転んだらただの怪我やすまないで」
「うん・・・純太にもそう言われた」
「慣れてからにしとき。そん時はワイが付きおうたる、家まで迎えに行ったるわ」
「え、いいの?」
「ええに決まっとるやん、せやから携帯番号教えといて」
「わかった」


鳴子とID交換をしてるうちに今泉の姿はいなくなっていて、私達も慌てて部室へ飛び込んだ。



「もうすぐ峰ヶ山ヒルクライムだ。今回は小野田、今泉、そして俺が出場する。気合い入れて練習するからな。小野田、今泉頼むぞ」
「「はい」」


みんなが部室を出て行くのを見計らって幹に耳打ちする。


「ヒルクライムって何?」
「ヒルクライムっていうのは山を走るタイムレースの事だよ」
「峰ヶ山をロードで?」
「そう。去年は巻島先輩が優勝したんだよ」
「へぇ、ほんと巻島先輩って凄いんだね」
「うん、でも小野田君も凄いんだよ」


IHで個人優勝した程だもん、凄いんだろうね。
けど私は未だに小野田坂道の本当の速さを見てないし、スランプだって聞いてる。
それなのに大会になんか出て大丈夫なの?

純太の事だから色々と考えてるんだろうけど。


次々と裏門坂をロードで登ってくる。

相変わらず小野田坂道は一番最後で、表情はもの凄く辛そうだ。


「幹、大会なんて本当に大丈夫なの?」


小野田坂道をじっと見詰めながら幹は答える。


「小野田君は大丈夫だよ、心配ない」
「でもいつも一番最後だよ?」
「うん、今はそれでも必ずまた速く登れるようになる、ちゃんとみんなの期待に応えてくれるよ」
「みんな?」


辛そうに登ってくる小野田坂道を純太や今泉、鳴子達が坂の上で辿り着くのを待っている。


「小野田君、もうちょっとやで!」
「小野田、その調子だ!」


漸くゴールした小野田坂道の側にみんなが集まる。

そんな中、私の目に小野田坂道のロードに貼られたステッカーが飛び込んだ。
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