LONG NOVEL

そんなんじゃない(今泉視点) (16/46)

「まるでカップル」
「はい;?」


隣でそうぼそりと呟いた青八木さんを思わず凝視した。


「じゃ」
「あ、はい・・」


そう言って青八木さんも手嶋さんと苗字が行った方向へロードを走らせていった。


"まるでカップル"

実際俺もそう思った、手嶋さんと苗字の後ろ姿を見ながら。

幼なじみとはいえ、長い間ずっと側にいて、近くにいて、親も公認で、趣味も一緒で、そして男と女。
何の感情も持た無いなんて事あるはずがない。とは普通は思うが、手嶋さんはともかく相手が問題だ。


「名前、明日ロードで登校するなんて行ってたけど大丈夫かな?」
「行くって言ったんだし平気だろ」
「けど今だってやっと漕いで行った感じだし」


寒咲さんのメンテを終えて、手嶋さんや青八木さんに乗り方、操作を教わってはいたが、ド素人がロードバイクを乗りこなせるようになるには暫く時間が掛かるだろう。

天性の素質でも持っていれば別だが。


「心配?」
「は?」
「さっきからずっとしかめっ面してる」
「この顔は元々だ」
「そうだっけぇ?」


一瞬寒咲にニヤ〜っと笑い飛ばされた気がしたが自分の為に見て見ぬふりをしといた方が良さそうだ。
寒咲さんと会話をしながらもずっと明日の朝練開始時間がぐるぐると頭の中を渦巻く。


「えっと明日は6時半開始だから表門に着くのは6時位?」
「・・・」
「あ、でもロードで来るとは限らないし」
「あいつ意地でも来るだろ」
「そうかなぁ?やっぱりいつもの自転車にしちゃったってならないかな?」
「あれだけ啖呵切ったんだ、絶対ロードで」
「名前の事よくわかってるね、普段から仲良いんだ?」
「そんなんじゃねーよ」


寒咲の言葉に動揺して思わず叫んじゃったじゃねーか。
何を動揺してんだよ、俺;

寒咲は俺の方を見ながらクスクス笑っている。


「明日楽しみだねー」
「あ?」


何が楽しみなんだか。
寒咲さんに頭を下げロードに跨りペダルに足を乗せた瞬間、寒咲が呟くように言った。


「あ、でも手嶋先輩がいるから心配ないか」


そう言いながらチラッと俺の方を寒咲が見たけど、気付かない振りして無言でペダルを踏んだ。
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